いやまったく、ちょろいもんだぜ。

 死んだ父ちゃん(旧日本軍兵士)がよく言ってたよ。あの戦争はなんてバカだったんだって。戦争中はバカばっかりが威張ってたって。俺はそれを聞いて、お前はじゃあそのとき何をしてたんだよ、って胸のうちで思ったもんだよ。あんたみたいな賢い東大生も兵隊にとられて行って、そしてその軍隊は250万人も人殺したんだぜって。中国人が中華料理パクパク食べてるとこにズカズカ入ってって日本刀振り回して母ちゃん犯して姉ちゃん犯してさ、そんでもって血が飛んでマーボー豆腐の皿にべちょっとかかってさ。あんたそのとき、何やってたんだよ?

 いやまったく、ちょろいもんだぜ。そんでもって平和になって(誰が?)、平和憲法だ民主主義だ、高度経済成長だ高度資本主義だ高度消費社会だとかって言ってて、でもって、また同じことやるのかよ。飛行機がビルにつっこんで燃えあがってさ、まだ人が右往左往してるときに、なんで王様何とか螺鈿とかいう人が張本人だとかって分かるのさ。大本営発表かよ。ちょろいもんだぜ。2、3年もすればきっとJ文学とか言ってる奴らがみんなして「文学報国会」つくってて、このメルマガも「大日本雄弁会週刊電藝」になってるぜ。

   

text/大須賀護法童子

p r o f i l e
 

 

 タクシーに乗っても、運転手さんから「やっぱり戦争しないで平和を守ろうなんて、甘いんとちゃいますか」とか言われちゃう世の中だぜ。面白いねえ。パキスタンでさえ核兵器もってて、ちょっと誰かがボタン押してくれたら俺もあんたもこの世からおさらばって時代に、どんな戦争でもって平和守れるって言うんだよ。いやまったく、テロリストの手から国家を守るには人の上に爆弾も落とさなきゃいけないだろうし、首都の秩序を守るには第三国人も取り締まらなきゃいけないだろうし、家庭の平安を守るには女は子育てに専念しなきゃいけないんだろうさ。いやまったくごもっとも。

 ちょろいもんだね。俺たちいったい、これまで何をつくってきたんだよ

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