●『禁演落語』(小島貞二・編著、ちくま文庫・刊)に「とんちき」という落語が紹介されていて、初代柳家小さんの演じたものの速記によるものを紹介されている。「とんちき」とは、「頓ちき」のことで、擬人名語「とん吉」のきちを逆倒した語>のこと。とんま、まぬけ、馬鹿者という意味。
●色々と参考になる話が盛られていて、楽屋の符丁で一、二、三、四、五、が「ヘイ、ピキ、ヤマ、ササキ、カタコ」というそうだ。お寿司が「弥助」、お茶が「宇治」、やきもちが「甚助」など。
●嫉妬心を起こすことを甚助というのは、かつて性欲は腎臓で製造されるものと思われていて、強精な人のことを「甚助」と呼んでいたらしい。転じて嫉妬することを甚助を起こす、という風になったとか。
●昨年、C=W=ニコルさんと話す機会があり、ニコルさんの傑作捕鯨小説『勇魚』(文春)の主人公の名前が「甚助」だったので、落語の中に出てくる「甚助」のご説明をした。続編である『盟約』(文春)も購読の予定。
●初代小さんのマクラでは「お割(おわり)」の話があり、ギャラのことです。かつて落語家の給金というのは翌日の晩に呉れたという話。
●寄席があって、観客数が確定すれば、木戸銭に客数をかけたものの7割分を楽屋の真打に渡す。小屋の売上は30%ということが分かる。
●真打はそれを全部持って帰って、その日の出演落語家毎に割り振る。それを新聞紙を十六分割したものに包んで、表に名前、裏に観客数を書いて翌日渡す。これが「お割(おわり)」というもので、もちろん現代は違う。
●真打制度の無い大阪には以前「高井ギャラ」という芸人が居た。