●香川・高松の「菊池寛記念館」へ行った。(10月19日)明治21年に高松で生まれた寛を、市制百周年を記念して顕彰し、1992年に開館した施設。菊池寛といえば『父帰る』、『恩讐の彼方に』そして『真珠夫人』の作家としてだけでなく、文藝春秋社の創設、芥川・直木賞、菊地寛賞の設定などの功績。
●記念館は市の図書館などと同じ施設内にあり、近代的な設備と展示で中々巧く展覧してあった。最初に5分程度の生涯を追った映像を見、彼の基礎的な情報を得ることができた。長男氏や文春会長等のインタビューなどを交え、簡潔に編集されたもの。寛が将棋を指している写真もあった。
●文学者らしく、原稿と出版物(雑誌、書籍)、書簡、等が年代順に並べられていた。雑司ケ谷時代の書斎を復元もしてあったが、存外に洋風であった。また、寛の愛用品の展示もあり、紋付き、背広、トレードマークの丸眼鏡、懐中日記、万年筆(オノト)、原稿用紙、ライター等の現物が菊地家より寄贈されて展示。
●芥川・直木両賞受賞者の全てが分かる様になっているのも楽しい。作家の肖像、略歴、受賞作品の原稿や単行本などを年代順に全て展示してある。毎年加えられている様で、既に2001年度まであった。現役作家のものは著作に署名入りのものが多かった。
●尾辻克彦の芥川賞作品『父が消えた』の単行本展示が無かったので、小拙の持っているのを寄贈しても良い。大きなお世話か。
●壁に壁画があって、『フクちゃん』の横山隆一氏等が描いた文士77人の肖像漫画が楽しい。帰りにB4判に印刷されたものを戴いたが、巧く描かれたものだ。文学に不案内な小拙では最終的に13人しか分からなかった。箸を持っているので、池波正太郎かと思ったら井伏鱒二だった。
●坂口安吾が棟方志功にしか見えなかったり、山本周五郎が小椋圭に見えたり、司馬さんが少年アシベに見えたり、上半身裸の三島が江頭何分か忘れたに似ていたりのご愛嬌もあって、こういう資料まで貰って入館料200円は市立のなせる技か。
●和歌山・白浜町には南方熊楠記念館があるが、せめてこの位の施設にならないものか。展示品そのものは菊地の記念館以上の内容であると思うのだが、箱の老朽化はイカンともしがたい。