●大阪の言葉で「イラチ」というものがあって、「いらつく」あたりが語源だとは思うのであるが、「あいつはえらいイラチやで」ということは今でも良く使われている。『いらち俥』という上方落語もある。
●その代わり大阪人は待つのも嫌いで、大阪・ミナミの「リクローおじさんのチーズケーキ」の行列が不思議でならない。並んで買わなければいけないチーズケーキがあるということが小拙には信じられない。豚まんの「老祥記」は神戸だから判らない。
●かつては、東京と大阪の文化は比較的きれいに分かれていた様におもう。電車の乗り方にしても東京はちゃんと並んで行儀よく乗り込んでいた様におもう。今では東京もかなり大阪化していて、大阪的「早い者勝ち」といった空気がかなり充満している様に見える。文化が似通うと文明も似通う。おもしろくなくなる。
●花紀京(花桔梗)、笑福亭鶴光や明石屋さんま、ダウンタウンや島田紳介、井筒某らの少数だが東京で受け入れられ、頻繁に電波で大阪弁のようなものを使った者が出た結果、関東に於いては、大阪弁のようなものは完全に定着した。
●花紀京(花桔梗)、笑福亭鶴光や明石屋さんま、ダウンタウンや島田紳介、井筒某らの少数だが東京で受け入れられ、頻繁に電波で大阪弁のようなものを使った者が出た結果、関東に於いては、大阪弁のようなものは完全に定着した。
●逆もまた然りで、大阪の東京化、東京の大阪化が進んだ結果、名古屋のみが独自路線を孤高に歩んでいる。名古屋が変れば日本はそこで終わり(尾張)である。
●ロバート=レヴィーンという心理学者の『あなたはどれだけ待てますか』(忠 平美幸・訳、草思社・刊)という本を朝日新聞で清水克雄氏が評していた。この本の原題は「時間の地理学」といい、「世界の都市で人々の時間のペースを調」べ、「時間についての習慣や考え方の差がなぜ生まれる」かを比較研究したもの。
●著者によるとそうした時間軸の違いを無しにして人々と付き合うのは「文化の地雷原」に入り込むようなものだという。
●やはりというか、彼の調査によると、西欧と日本が「時間に厳密で生活ペースの速い国」(スイス、ドイツ、アイルランド、日本の順)で、下位には南米や中東の都市が来るそうだ。スイスには何があるのか。ドイツは何となく分かる。ドイツ人のおっさんは日本人のおっさんよりも質が悪い。関係ないか。
●著者がこの結果を得るために行ったのは、歩行者の速度や郵便局の応対時間などを計って計算されたらしい。頗るユニークだが果たしてそれだけで判るものなのか。著者は時間の「量」よりも「質」に関心を持つ文化に目を向けている様だ。
●同じドイツでも旧東ベルリンと西ベルリンでは速度が違っていそうだし、ビールの酒蔵付近では朝から酔っぱらいが走っていそうだ。
●著者は日本(人)の時間管理法を評価(居心地がよさそう)していて、「日本人は集団志向が強いので、個人の時間を必要とすることが少な」いのがその理由。心理学者ならではのアイロニーか。
●花輪和一の『刑務所の中』(青林工藝舎)では、淡々と時間が流れていた。著者は豚舎の様だと表現したが、カロリー消費量よりも摂取量の方が断然多いので、生活が悠々としている様に映る。崔監督が映画化したそうだが、あの漫画の迫力にどれだけ迫ることができたのか、楽しみである。