「すみません!切符の自動販売機はどこにありますか」
 「え?何ですか」
 「いや切符を買いたいので、券売機の場所を教えて」
 「誰がケバいねん」
 「誰もケバい言うてへんがな!切符の販売機の場所を聞いてんねんがな!」
 「ああ、あんた電車に乗りはんのんかいな。毎度ようこそ」
 「駅員さん、頼むから切符売ってる場所教えて」
 「ここ」
 「え、ココてココにはなんも無いやん。駅員さんが居てるだけやがな」
 「そう、ここはワンマンステーションなので私が切符も売るんです」
 「なんや、アンタが売りはるんかいな。けったいな駅や
 で!」
(画板状のものを出すしぐさ) 「よっこらしょっと」
 「なんやなんや、その台は」
 「これでっか、これが寿司屋のつけ台に見えまっか。これは駅弁屋さんのを改良して作った板でんがな」
 「ああ、そうか。えらい大きいなぁ。切符売るだけでそんなに大きい台要らんやん」
 「切符売るだけやないですわ。ある時は売店の代わりにもなるし、ある時は駅弁屋の代わりにもなる。まあ言うたらスーパーマンみたいなもんですわ」
 「そうかなあ。全然違うと思うけどなあ。まあええわ。その横についてる袋は何?」
 「ああ、この中に新聞入れておくんです」

 「ああ、新聞か。売店やったら要るわな。その弁当置いとく穴の横のフックには何を掛けるのん?」
 「ああ、このフックには便所掃除の道具を引っかけときまんねん」
 「汚いなあ〜。大丈夫かそれ!」
 「死ねへん死ねへん。よういってコレラや」
 「あかんがなソレ!恐ろしい駅やなあ。はよ切符買うて、電車乗ろ。隣の駅まで一枚!」
 「はいはい。隣まで大人一枚ですか」
 「どっからどう見ても大人でんがな」
 「では大人の証明書をお願いします」
 「大人の証明書て、別にそんなもんないけど」
 「え!?無いですか。。こら困ったぞ」
 「何が」
 「大人の証明書がなかったら、大人料金で売る訳にはいきまへんがな」
 「何で、大人の料金払う言うてんねんからそれでええがな」
 「アンタはそれでもええかも知れんけど、駅ではそういうことはできまへんのや」
 「ほんなら子供料金で乗ってええのんか」
 「それは無理」
 「何で大人の証明したらよろしいの」
 「免許証とか保険証とかを見せてもろたら、それで決定的な証拠になりますわな」
 「ひと駅先のパチンコ屋に行くのにいちいちそんなもん持ち歩けへんやろ、普通」
 「それが無いんやったら違う形で証明してもらいまひょ」
 「違う形てどういう形やねん」
 「お客さんの家族に電話して、あんさんが大人かどうか証言してもらいます!」
 「何が嬉しいねん。けったいな駅やでホンマ!ヨメはんに電話したらええねんな。面倒くさい駅やで。あ〜もしもし俺や。」
(電話を横取りする) 「もしもし、こちら駅ですが、あんさんの旦那という人が、大人や大人やと言い張っておられるんですが。え?何?子供みたいなもんや?ガシャあ、切れた。お客さん、残念ながら証言は得られませんでした」
 「何でやねん!くそ!証明できひん時はどうやるの?」
 「この紙に『証明出来ません』と書いてくれはったらそれでよろしい」
 「最初からそう言うて!こっちは急いでんねんから!」
 「はいはい、それで結構です。ほなこれが切符です」
  「ああ、やっと電車に乗れるで!」
 「お客さん、旅のお供に駅弁はいかがですか」
 「俺は隣の駅まで行くだけやから、いらんねん。あれ?この電車誰も乗ってへんで。運転席にも誰もおらへんがな」
 「よっこらしょ」
 「ちょっと駅員さん、運転席に座って何してんの?」
 「え、最近人手不足で、運転も私がやるんです。えーっとブレーキはどれやったかな。。」
 「俺、歩いて行くわ!」

大阪シナリオ学校 第137期通信教育部演芸台本科
第一回課題 「駅」作品。原稿用紙5枚


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