●一週間に一度近所の風呂屋に行く、盆休みには滋賀県・長浜の温泉につかった。大阪では銭湯とは呼ばず、「(お)風呂屋」と云う。

●小拙は当然男湯の事情しか知らないのであるが、大の大人のエチケット、マナー、立ち居振る舞いの稚拙で礼儀をわきまえない姿は笑いを誘う。

●共同浴場の組合か何かで決まっているのか、大人は360円、中人(小学生) 130円である。長浜の温泉は全く別の料金体系であった。しかしもって「中人」とはこれ如何に。

●小拙が普段行くのは「太閤温泉」なのであるが、子供時分には「太鼓温泉」だと思っていた。もちろん名前だけの「温泉」であって、日本中の「銀座」みたいなもんであろうか。

●偶然であるが、長浜の温泉も「太閤の湯」というのであるが、こちらは効能書きもある本気の温泉である。豊臣秀吉が何か関係しているようなことを書いてあるが、これは少し眉唾物ぽい。

●風呂に入る時には衣服を脱ぐのであるが、裸になれば風呂場に行けば良い。しかし、50歳にも60歳にもなってタオル(小)で前を隠しながら入ってくる人がいる。(十人中四人)

●そういう人に限って、ロクにかけ湯もせずにタオルを腰付近のまま湯槽につかる。タオルは湯槽に入れちゃいけないのは脱衣場のポスターにも大書してあることだ。

●かけ湯も、申し訳程度に流す人はまだマシで、もう一目散で湯槽に向う人も多い。(十人中四人)かけ湯は、流すだけでなく、前後のバイ菌類をとりあえず湯でコソゲ流す式にやらないと意味がないのではないか。

●己の前を隠していた腰付近のタオルを湯につけながら、その隠しタオルで、顔をザブザブこすりながら洗う。だからこする場所とタイミングを間違っているって。

●ひとしきりザブザブした後、また湯の中でもそのタオルを腰付近に持ってゆき、局部付近をこすっている。だからタオルは湯につけるなよ。

●その後、そのタオルでまた顔を洗ったあと、軽くしぼって頭の上に乗せて「うあ"〜」とか何とか唸っている。そんなことをしているから禿げるのではないか。

●大体入ってくるときに前を隠すということ自体が間違いなのではないか。あれは誰に何を見られたくないのであろうか。少なくとも小拙はそのオヤジが隠しタオルをしていなくてもそんな珍宝は見ない。

●小さな風呂屋であるが、「サウナ」も「スチーム(ミスト)」もある。そこでは「スチーム」の方が温度が高いので、そこで汗を出して水風呂に入る。親父仲間の小拙も繰り返しそういうことをする。

●汗をかいた状態から水風呂に入る前には軽くオケで汗を流してからというものが常識ではないか。しかし汗ダクの状態でそのまま水風呂に入る人も多い。(十人中四人)

●小拙は週に一回であるが、そんなこんなが連日連夜繰り広げられているのであろう。おそらく毎日きている63歳の親父はこんな人だ。

●その人は番台に風呂の券を渡すと番台に預けてある小さな四角い缶をもらう。その中には、タバコが50本ほど裸で並んでいて、ステテコ姿になった後、テレビを見ながらタバコを飲む。

●その人の独り言はものすごく大きく「うわ〜今日はええピッチングやなあ」とか「あの弁護士とこの弁護士はいつも仲悪いなあ」とか「金本が来て選手のやる気が出たんやで」とか「コマーシャル長いなあ!」と云う風に誰でも知っていることを大声でわあわあいいながらモクモクとタバコを飲む。

●風呂に入るまで短い日でも30分はわあわあ云ってから、入る。風呂に入るまでは長いのであるが、風呂に入っているのは5分くらいである。5分もするともう出て来て、同じステテコ姿になっている。

●風呂から出て来てもタバコを飲みながらテレビに向って延々大きな独り言を云っている。「この人最近よう出るなあ」とか「この人こないだ離婚したやろ!」とか「この子えらい大きいなったなあ」とか「もう阪神戦はおもんないなあ!」とか誰でも分かっていることを30分以上かけて延々大声で云うのである。

●この人は毎日毎日、1時間以上かけてそのようなことをしている。その人はそれで幸福なのである。その人が何も云わず5分で風呂に入って帰っていったとしたら、この小拙でもちょっと心配になる。

●しかし、アメリカが停電になったように、風呂屋のテレビが故障か何かで映らなくなれば、その親父様はどのような行動に出るのであろうか。


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