●日本の民主党の古賀代議士が、アメリカのペパーダイン大学を卒業したかどうか、が三文メディアの専らのネタとして連日かしましい。追いかけている連中も小拙のような野次馬連中も彼がどこで学士をとったか、なんかに興味もないし卒業の事実なんてどちらでもいい。

●問題の第一は、その問題がそんなに多く報ずる価値のあるニュースであるかという点である。そりゃ他人が困っている姿は面白いから、三文ニュースなどには打って付けのネタとして御手盛りモノだ。問題は猫にも杓子にも彼の名前と顔が一致するほど報じられてしまい、半泣き顔などを見て「可哀相に」と思うこと。

●第二問題点は、その可哀相な彼がわざわざアメリカまで行って、自分の卒業を確認したこと。どこの大学でも卒業証明などはどこの遠隔地からでも可能だ。勘違いは誰にもあるが、そのフォローの方法として余りにも「お情け頂戴」なのではないか。莫迦なことにアメリカまで付いて行って報道する輩まで居た。

●第三問題点は、世間の「可哀相」派が卒業なんてどちらでも良いという空気を作ってしまうこと。そんなもの小拙もどっちでもいい、と思う。許されないのは彼がそれで選挙を行ったということである。彼にとってはどっちでも良くないから、掲出をした筈だ。

●一票でも欲しかった彼は、アメリカの大学出と書くか書かないか、の選択肢の中から書く方を選んだ。書かない場合よりも一票でも増える可能性があると考えたからだ。実際に有権者の側でも、県議でアメリカの大学出であればまあ良かろうという一票もあったかも知れぬ。今の投票意識というのは多分そんなところでもあろう。

●学歴詐称なら県会選挙時代に遡って調べればいい。なぜ党も国も本人の意思まかせにするのか。ほぼ完全に選挙法違反なのではないか。なぜそのまま代議士活動が継続できるのか。本人も卒業していないことが判明した時点で職を辞するべきなのではないか。続けたければ「ペパーダイン大学中退」で再出馬すれば良い。しかしこれで改めて当選させてしまうのが今の日本の莫迦な選挙であるから、辞めなくても良い、という考え方もある。山崎拓問題もある、し。

●この事態を受けて官房長官の「嘘つきは泥棒の始まり」云々発言があった。そんなことはない。今は「嘘つきは警官の始まり」である。というかそんなこと言う前に選挙法に違反して県議や代議士になって報酬を得ていたとしたら、立派な税金泥棒なのではないか。鷽(うそ)という鳥が居るそうだが、迷惑だろうなあ。

●官房長官は嘘は駄目だ、と考えているようであるが、文化庁長官の河合隼雄氏(臨床心理学)は流石にそんな浅いことは考えていない。ちゃんと『ウソツキクラブ短信』(大牟田雄三氏と共著、講談社)という本まで物している。

●短信に載っている国際ウソツキクラブ(ライアー会長)の条件は、「1・ウソのようなホント。2・ホントのようなウソ。3・ユーモアのセンスあるもの 歓迎」ということである。基準としては「ウソを言ったとき、七割以上の人が信じる。ホントのことを言ったとき七割以上がウソと思う、そして、七割以上の人が笑いだすこと」であるという。

●古賀議員の場合、嘘の様な本当をプレゼンした結果、九割以上の人が信じた。しかしそれが本当の様な嘘であったが、七割以上の人が呆れた。そして五割以上の人が怒りだした。少なくとも古賀議員はウソツキクラブ会員にはなれそうにもない。

●大河ドラマ「新撰組」に対して史実と違うという評が多いという。脚本家は自分の創作なのだから史実と違って当たり前という。どうして歴史家は自分が見てきたようなことを言うのであろうか。どこからどこまでが史実としてのホントウであるのか。

●大人になると感受性が弱くなって、面白いことやおかしいことに対して笑うことを忘れて、怒ったり正論をぶったりする。小拙自身、見栄を張って自己嫌悪に陥ることしばしである。

●落語には、虚言癖の人や「何でも知っている人」なども出る。「何でも知っている人」は「ウワバミ」の語源を聞かれた。「ああいうものは最初『ウワッ』と出てくる。それであれがまたようバミりよんねん」と云う。

●完全な間違いなのではあるが「知らん」という答えでは詰まらない。厳密に云うと嘘なのではあるが、そういう会話が起こらないと人生つまらない。これからもそうした意味からの嘘をどんどん使いたいし、聞いてゆきたい。

(2004年2月2日号掲載)


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