たしにもそんな風にして欲しいな。
 
 江ノ島水族館は新しくなったのでキレイだった。水族館でフラッシュのついていないポラロイドはどうなるのか、どうしても撮ってみたかった。水槽内は明るいと思ってもなかなかに魚達の動きは素早く、私はフィルムを無駄にした。

 コウイカ(甲烏賊)の水槽の前に来た。水槽の中は薄暗かったが、あまり動いていなさそうなその感じに期待しながら近づいてカメラを構えかけて私は止まった。

 二人のコウイカは重なっていた。下にいるヒトは手をきちんと揃えて、水の動きにゆらりゆらりと揺られながら、じっと、していた。上から、もう一人のヒトが覆い被さる様にして、いた。そのヒトの手は下のヒトを包む様に、ゆっくりと動いていた。沢山ある腕の全部を使って、ゆっくりと、包み込んでいた。して、その中でもさらに長い手が、下にいるヒトの脇腹というかなんかその辺りを、くすぐる様に撫でる様に、さらり、さらりと、ずっと、そうしていた。

 青く光るそのヒト達を、ずっと見ていた。その「手」のなめらかな触感を思いながら、ずっと見ていた。冷たい水の中なのに、水の中の世界にしか無い質感と温度でありながら、その暖かくてかわゆい二人が羨ましくて、撮った。

 でも、ボケた。