どりのマキバオー」のもうひとつの魅力は豊かなライバルの設定にある。
マキバオー、カスケードと三強の一角をなすアマゴワクチン(函館記念・神戸新聞杯・菊花賞を勝ち抜き、悲願の三冠を達成する)。
チュウ兵衛の良き理解者であり、マキバオーとも親しくなる牝馬アンカルジア。
経営難の牧場生まれであることから、あらゆる手段を用いて勝利しようとする浪速の超特急モーリアロー(アマゴワクチンも彼の罠にかかり骨折した)
は、マキバオーに抜かれ、牧場主と再会して改心する(アニメの声優は山田雅人だった。笑)。
強い馬をマークし、ギリギリで差す戦法から「ヒットマン」の異名を持つサトミアマゾンは、地方で10戦10勝した後に「俺たち公営は中央の2軍ではない」「中央で活躍して船橋に客を呼ぶ」という志を持っている。実際、船橋競馬場にはサトミアマゾンの登場場面が展示されている(というのだが、未確認)。
長距離に高い適性を持つ牡馬トゥーカッター。
イギリスダービー、キングジョージ、凱旋門賞を無敗で制し、ドバイでマキバオーを圧倒した海外の最強馬エルサレム。この馬は飛行機事故に遭って砂漠を漂流したが、伝説の競走馬ジェネシスの血を飲むことでその血を継いだという。
……後半、マキバオーたちの海外遠征が始まると荒唐無稽さにさらなる磨きがかかり、これくらいの挿話は全然気にならなくなる。荒唐無稽そのものとして圧倒的な存在感を放つのは、九州産のベアナックルという鹿毛馬である。ダービーでは出遅れてしんがりに位置するも根性で3着。京都新聞杯ではスタート直後に騎手を落馬、それを知らずに先頭でゴールイン。菊花賞では「外埒蹴り」に失敗して股間を埒に激突させ、競走中止。海外遠征に勝手に付いていくも、トランジットのシンガポールで置いてけぼりをくらい、ドバイまで泳いで渡った。途中、猫の大群に襲われたり、モリを背中に刺されたりしている。海外遠征後はWWF名誉会長となり、活躍の場を海外に移して親善大使的な活躍を見せ、行く先々で様々な動物たちを子分にしている。
まさにありえない馬なのだが(この馬は、完全にすべての?人間と意思疎通している)、こういったものと正統スポ根的感動が同居しているところが、この漫画の魅力なのである。後半の展開は、例によってのジャンプ編集部と作者との軋轢を意味するものなのかもしれないが……
(高梨・C・晶)
2006年12月04日号掲載
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