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何をそんなに不満そうな顔をしているのだ? お前が欲しがるものすべて、とまでは言わないが、生きていくのに必要なものはすべて与えたはずだ。何が不足なのだ? どこに問題があるのだ? なぜそんなに不機嫌な顔をしているのだ?

そうだ。そもそもの問題はどこにあったのだろう。

そもそもの問題は、眠れない夜に、ずっと私の頭の中で話しつづけて、私をますます眠らせてくれない〈声〉の耐え難さだった。

声からは逃れることができない。声を打ち切らせようとする言葉もまた、声になって頭の中に響くから。声は問いかけになり、問いかけは応えられなければならない。対話は永遠に続く。眠りたいのに、逃げることができない。耐え難いのは、あの声のもっともらしい芝居くささ。偽善的で、大層らしく、まるでこの頭の中の対話が(本当に頭の中か?)何か重要な意味でももっているように、説教臭くたしなめるように、声はいつまでも続く。あの声の耐え難さが、最初の問題だった。

でも、あの声はどこから来るのか、そもそもあれは〈誰の声〉なのか、考えたことがなかった。
(1999/7/12号掲載)

               
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