Steely Dan/aja
スティーリー・ダン/彩(エイジャ) 比較検証

世界でもっとも醜いバンドの紙ジャケが登場!
LPと紙ジャケ
70年代アメリカのビートルズといわれた4人組(フェイゲン、ベッカー、カッツ、不屈のニコルズ)、人
よんでアグリー・フォー。
コンサートをドロップアウトし、レコーディング・スタジオにこもりきり、そこから超絶的な作品を作り出
したのだが、フェイゲンなんか高踏的な解説や、ロマンチスト/ピューリタン的な潔癖主義、人嫌い、猫背、
でグレン・グールドにも近い(と思うのは私だけだろう(じゃあ、ほっとけ))。

で、そのSDの「サージェント・ペパー...」、「aja」を比較検証してみた。
今回試聴したLP/CD
上段左からLP
米ABC AA1006('77,Liquid Laminated Gatefold Cover,Yellow Label,with Thick Card Lylic Insert)
日本コロンビア YX-8114-AB('77,同上 及び日本語解説/対訳、(あいかわらず写真にはないが)帯)
米MCA/Mobile Fidelity 1-033 ('80,Gatefold Cover,Half Speed Master)
英MCA/SimplyVinyl SVLP0030('98,Thick single cover,180gVinyl,remaster?)
下段左からCD
米MCA 4-10981  "CITIZEN STEELY DAN 1972-1980"('93,remastered 4CD Box)
日ユニバーサル・ビクター MVCZ10077('2000,Gatefold Paper Sleeve,帯/英文ブックレット/日本語ブックレット)
米MCA/Mobile Fidelity UDCD515('88,24KT Gold Ultra Disk)
Eagle ROCK/日本コロンビア COBY-90092  Classic Albums"aja"('99,DVD)

どうでもいいけど黒くてよくみえませんね。闇夜のカラスとなっておりますが、とりあえずジャケからいっ
てみましょう。

ジャケの表。山口小夜子(撮影:フジイ・ヒデキ)が亡霊のように浮きあがるたいへん美しいジャケで、米
ABC版は「リキッド・ラム」といわれる、高価な印刷方式がとられています。コーティングの方式の中で
も高級な部類です。で、私のもっている版は背景の色が黒ではなく、飴色っていうか濃い藍色です。
米ABC版の中にも真っ黒なものもあるようです(たぶん印刷所の違い?)
紙ジャケはMCA版の流れを組む真っ黒な色合いで、残念ながらコーティングはほどこされていません。

左から時計回りに米ABC、上方日本コロンビア版(コーティングあり、真っ黒)、モービル版(コーティ
ングなし、藍色)、中央紙ジャケです。
シンプリー・ビニール版もじゃっかん藍色っぽいですが、今回比較した中ではこれだけシングルジャケです
(薄いコーティング?)。 80年にMCAから再発されてからは米日ともシングルジャケになりました。
またajaのロゴの色は米ABC版は真っ赤ですが、モービルはオレンジっぽくなっています(退色した?)。

内ジャケ。ABC版はここもコーティングされています。また赤で囲んだ部分が歌詞ののっているレコード
バッグで、厚い紙でできた、これも高級感のあるもの。
下の紙ジャケにはついていません。インサートに関しては「エクスタシー」、「幻想の摩天楼」とも再現さ
れていませんでした(まぁ歌詞カードだからブックレットにのってるんですけどね)。
ABCイエローレーベル。
「aja」の米ABC盤、及び日本コロムビア盤はイエローレーベル。これは73年くらいから使われ始めたデ
ザインでその前後(SDでいうと「プレッツェル〜」)までの初版は黒いレーベルでした。
ABCは79年にMCAの傘下になったため、80年に「ガウチョ」とともに再発されたMCA盤からは青い
空に虹がかかっているMCA再発レーベルが使われています。

「aja」の高音質盤。左がモービルのLP、右がシンプリー・ビニール、右下がモービルのCD。
モービルのLPはジャケ上部におなじみの"ORIGINAL MASTER RECORDING"の文字がロゴと同じ色で書かれて
おり、そのため写真が下によっています(写真下部は切れている)。レーベルはモービルのレーベルです。
シンプリー盤はMCA再発レーベルのデザインを使用しています。

<音質>
「aja」の検証で、音質の問題は避けては通れないところ。
何しろプレス工場までチェックにいっていたSDのことですから(しかも抜き打ちでやっていたらしい)、
もともとのLPの音質からして大変すばらしいものです。
フェイゲンによると、50年代JAZZの音、プレスティッジのヴァン・ゲルダーやマイルスの音をめざし
たとのこと。
米ABC盤は一音一音にガッツがあり、存在感があります。まさに凝縮された音像で、これが楽器ごとに
分離して鳴ります。日本盤はこれにハイ/ローがイコライジングで持ち上げられ、今回のLPの中で最も
でかい音で鳴ります。しかしSDは録音からMIXまで極力イコライザーを使わない方針だったようなの
で、これには納得しないかもしれません。音のでかい分、シンバル類などは多少つぶれ気味に鳴ります。
(特にハイハットのハーフオープンなど)。
シンプリー・ビニール盤はリマスターとのことなのですが、ガッツはなくなっています。93年のリマスタ
ー(BOXなど)に近い音かな。聴きやすいですが、平面的です。盤が重いだけという気も....。
そのBOXは、他のバンドに比べれば、まぁ全然いいんですけど、やはり平面的で聴いていてつまらない感じ
がします。フュージョン/AOR風に聞こえます(しょうがないんだけど、凡百のフュージョンと一線を画
すのがSDの特徴ですから)。
問題のモービルですが、これは通常の半分のスピードでカッティングしたハーフ・スピード・マスター方式。
宅録でピンポンなどをやった経験のある方はわかると思いますが、確かにピンポンの時にテープスピードを
落とすと音質劣化を防げるといわれておりました。ただし、ただ速度を落としただけではいい音にはならな
いので、このへんの細かな秘術はモービルならでしょう。
「aja」に関しては音質や音色がやはり変質しており、粘着質な音になっています。リバーブ成分が強調さ
れ、長く残るため、コードチェンジの激しいSDの曲では気持ち悪く響いてしまいます(まぁ、これは個人
的な感想です)。もちろんレンジは広く、ハイハットの高音域やベースの低音は非常にクリアです。
全体的に音量は小さめ(適切?)にカッティングされ、繊細さや奥行き感ではABC盤にまさっています。
なんですが、やっぱり、モービル盤の後にABC盤を聴くと、あまりにも晴れやかなため、耳がスカッとし
ます。
モービルCDの方もモービルLP盤と同じ傾向で、粘着質で残響がけっこう残っています。ただしLPより
も平面的で何でもない音になっています(これではメロウAORじゃないか)。
これもモービルCDの後に紙ジャケを聴くとスカッとします。
今回の紙ジャケ/リマスターは、去年でた米リマスター盤の音を気に入らなかった本人達が再度やり直した
ものだそうです(現在は米でもこのリマスターに差し替えられているそう)。
米ABC盤と同じく、ガッツのある50年代ヴァン・ゲルダー、そのリマスターCDの音に見事になっています。
しかもLPよりシンバルは澄んできれいに鳴り、低音域はブーミーではありません。
存在感という意味ではアナログにかないませんが、これは聴く人の好みレベルではないかと思います。

なおメイキングのDVDの方は協力にSimplyVinylの名があることからして、同時期に制作されたのではないか
と思います。私はPS2で見ているので音はもの凄く悪いです。そのためちゃんとした評価ができませ〜ん。
いや申し訳ない。でも内容は楽しめますよ。
(ところで、例の没になったギター・ソロの人物、私はロベン・フォードがくさいと思っておりますが、皆
さんはいかがでしょう?)

さて、せっかくの「aja」の検証である。ちょっと寺垣式でも試聴して見ようということになった。
で、寺垣式に移動〜。

読みたいんだけど、見たら絶対読みたくなくなる本=スティーリー・ダン・レコーディング・セッション全巻セット本棚付き。

冗談はさておき、5月6日に西新宿ダーナ・ジャパンさんで寺垣式で試聴。はみるさん、舞さんに協力しても
らった。舞さんには前回リマスターのドイツ盤CD、米ABC盤、モービルCD盤をお借りした。

全体の印象はやはりかわらない。
舞さんはLPは米ABCよりモービルの方が好みである、との意見。
はみるさんは、両方あってもいいのではないか、どちらもいいとの意見であった。
モービルのCDは評価がかんばしくなく、
はみるさんは以前お持ちであったそうだが、BOXとあまり音質的に大差ないとのことで手放されたそうだ。
CDに関してはやはり紙ジャケの評価が高かった。

しかし、今回の検証のためにモービルのLP(24$)、CD(40$)をネットで購入した我々は、ふぇーん
状態(ネットでさがせばゴロゴロあるんだけどね)。
「モービルといってもいいものもあれば、イマイチのものもあります。全部いいわけじゃないすよ」(by はみるさん)
ガックシ。

その他

SDの特集ではお約束になった感のある78年の日本コロムビアからの編集盤ミニLP(YX-8140-AB)。
コーティングされた山口小夜子のジャケが素晴らしい(怖い?)。
右は裏側。大したことありません。もちろんシングル・ジャケです。
デビュー・シングルの"ダラス"と、"セイル・ザ・ウォーター・ウェイ"が収録されています。
"ダラス"は初代ドラマー、ジム・ホッダーがヴォーカルをとっています。
別に聴いても面白くはありません。


 
左は「キャント・バイ・ア・スリル」('72 ABCX758)と紙ジャケ。
赤で囲んであるのが当時のABC/Dunhillの汎用インナー。
右がオリジナルのABCブラック・レーベル。再発は上記「aja」と同じイエロー・レーベルです。

こちらはカナダのABC/DUNHILLから78年に出たGOLDWAX盤(9022-758)。
「GREATEST HITS」までのすべてが出ていたような覚えがあります。
このアルバムは見開きで内側からレコードを引き出す形式。

SDの特殊盤はこれ以外にも以下のようなものがあるようです。
4チャンネル盤、
QUADRAPONIC '74
COMMAND QD-40009 CAN'T BUY A THRILL
COMMAND QD-40010 COUNTDOWN TO ECSTASY
COMMAND QD-40015 PRETZEL LOGIC
ハーフ・スピード盤、
MCA HALFSPEED
81 MCA16009 GAUCHO
82 MCA16016 GOLD
MOBILEでは上記「aja」以外に
79 1-027 KATY LIED


データベースでもいっていた「プレッツェル・ロジック」('74 ABCD808)の見開き内側。
私のABCオリジナルは左にレコードを収納。紙ジャケは右。
(どっちが本当かはちょっと不明)
LPのジャケと盤の間にある緑のヤツは当時のABC内袋。


「幻想の摩天楼」のABC初版('76 ABCD931)はコーティングジャケで、これも厚紙のインナー(赤で囲ん
である部分)がついていた。紙ジャケではブックレットに掲載。
で、問題はジャケの色味。
フェイゲンが気に入ったという微妙な色合いの紫は、やはりこのABC版の方だと思うのだが...。
紙ジャケは再発と同じ濃い紫になっている。

それで、結局ケイティはどうなったのか?
「嘘つきケイティ」は、ミキシング時のDBXノイズ・リダクションのトラブルによって、
録音した音とはかけ離れたおぞましい音になってしまったとメンバーがいっていた。
裏ジャケにもスゲーハイファイ機材を使って,最新の注意のもとに作ったんだけど、BIZZARREな電気
mentationでだめんなっちゃった(というようなこと?かな)が書いてある。
今回の本人達の監修によるリマスターで、その点は解消されたのだろうか。

左に押しこまれたクラッシュとハイハットが、いまだにその問題が解決していないことを物語っている。
シンバルの位相はあいかわず変なままである。
ただ、私はずっとワザとだと思っていたのだが...それを知らなければ、いや知っていてもいい音ではあ
る(LP、紙ジャケとも)。
なお、謎のこのジャケの虫、"ケイティディドゥ"というアメリカのキリギリスだそうで、タイトルにひ
っかけて使ったようだ(日本人にはさっぱりわかりませんな、やっぱり)。
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