Bob
Dylan Paper Sleeves
ボブ・ディラン 紙ジャケシリーズついに実現!
特集 紙ディラン
=================================================================================================================== 2004/8/14 「ディランがようやくOKしてくれました〜!」 この喜びいっぱいの言葉は、ソニーの通販HP、HIGHHOPESのコピーです。そうか、やったぞ!OKが でたんだ〜、って踊らされて思わず全部予約しちゃったりして・・・。 だけど、じゃあ今までの紙ジャケはOKしてなかったのか?なんてヒネくれた疑問もよぎったりしま すが、追求するのはヤメといてですね、単純にディランの紙ジャケシリーズが実現したことをよろこ びたいと思います。 今までにでたのは日本から2タイトル、英国から2タイトルの計4タイトル(プロモやブートは除外です)。 上が日本盤、下が英盤。英盤にも帯がついてたんですけど、写すの忘れました・・・ 日本 SONY 95/12/21 "SBM マスターサウンドシリーズ POPS&ROCK VOL.1"(各\1942) SRCS7904 ボブ・ディラン/追憶のハイウェイ'61 SRCS7905 ボブ・ディラン/ブロンド・オン・ブロンド UK COLUMBIA 99/11 "COLUMBIA MILLENNIUM COLLECTION" MILLEN15 BOB DYLAN/BLONDE ON BLONDE ボブ・ディラン/ブロンド・オン・ブロンド MILLEN16 BOB DYLAN/BLOOD ON THE TRACKS ボブ・ディラン/血の轍 んで今回のボブ・ディラン 紙ジャケット・シリーズ。以下、略して「紙ディラン」(って略しすぎか)。 日本 SME 各¥1800(税抜) 2004/8/18 MHCP 369 フリーホイーリン・ボブ・ディラン The Freewheelin' Bob Dylan MHCP 370 アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン Anoter Side of Bob Dylan MHCP 371 ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム Bringing It All Back Home MHCP 372 追憶のハイウェイ61 Highway 61 Revisited MHCP 373 ブロンド・オン・ブロンド Blonde on Blonde MHCP 374 ジョン・ウェズリー・ハーディング John Wesley Harding MHCP 375 ナッシュヴィル・スカイライン Nashville Skyline 2004/9/23 MHCP 376 プラネット・ウェイヴス Planet Waves MHCP 377 血の轍 Blood On The Tracks MHCP 378 欲望 Desire MHCP 379 ストリート・リーガル Street Legal MHCP 380 スロー・トレイン・カミング Slow Train Coming MHCP 381 インフィデル Infidels MHCP 382 オー・マーシー Oh Marcy ということで14タイトル。?なんでファーストとサードがないんじゃ!「地下室」はどうした?って気 もしますが、今回の紙ディランは2003年にSACD化されたタイトル(厳密にいうとそこから最新盤 の「ラヴ&セフト」をのぞいたもの)。そのラインナップなので、今後SACD化がすすめばリリース される可能性もあります。新リマスター欲しかったけどSACDプレイヤー持ってないしなぁ、高い金 だしてハイブリッド盤買うのも・・と悩んでいた方(オレか)、には良心的な価格になっています。 もちろん今回は通常のCDで、ハイブリッドではありません。 なお上記HIGHHOPESには下記のように記されています。 「2004年6月1日にUSで発売されたデジタル・リマスターCD14タイトルのマスターテープを使用しております。 2003年SACD/HYBRID盤が発売になったとき初めてデジタル・リマスターされたものです!」 イチオー、新リマスター”CD”という位置づけでいいのかな?最近このへんの事情が複雑なのでなんとも いえませんが・・・。ハイブリッド盤買っちゃった人は躊躇してしまいますよね。 =================================================================================================================== BOB DYLAN 1st Album
ラインナップされていないのに、いきなりデビューアルバムからいきましょう!(なんで?)。え〜、今回は 今まで探検隊がやってた比較検証とはちょっとちがいます。なぜかというと、探検隊全員、ディランはそんな に詳しくないからです(笑)。このまま読まれていかれても面白いブツとか出てきません。担当してるわたし にしてからが、初めて自分で買ったディランのLPがこれ。 なんと3枚組でした! 帯はあいかわらず捨てちゃってますね 78年に来日記念で出た「傑作」という編集物。オマケがいっぱいついてましたが、高かったです。どうして いきなりこんなもの買っちゃったのか?それまでわたしにとってディランというと”フォークの神様”とい うイメージ。小学生の頃、音楽の授業で演奏させられた「風に吹かれて」。中学に入って英語の授業できか された教材付属ソノシートの、これまた「風に吹かれて」。特にソノシートの方はディランの録音なんです が、すごい歌謡曲みたいなエコーがかかっていた記憶があります。そんなこんなで、四畳半フォークの親玉 みたいに思ってました。興味なし、ってことです(オイオイ)。それが来日する、っていうんで世の中盛り 上がってきて、ちょうどレコード屋の店員さんと「今度来日するんですよねー」って話をしていて、 「聴いたことないんですけど、なにからきいたらいいんですか?」 とたずねたのが運のツキ。「これだよ、これ、これきけばバッチリ」と出されたのが当時出たばかりの上記 3枚組だったわけです。ハッキリいって、財布はつらかった。でも聴いてみたら当時のイメージと違って面 白かったし、今考えると未発表テイクとか入っててそれなりにいい買い物だったのではないかと自分をなぐ さめられます(ちょっと後悔したこともありました)。で、当時一番心にひっかかったのが「ミクストアッ プ・コンフュージョン」でした。 その次の波が米モノ盤で「フリーホィーリン」を買った時。安かったんで試しに「風に吹かれて」をオ リジで聴いてみるか、と思ったんですが、これでブットビました。全然四畳半じゃないし。湿っぽさの対極 で、乾いて、空までつきぬけるような、カラっとしてヒリヒリするディランのヴォーカルにノックダウン。 それからチョコチョコと米盤をモノラルを中心にかっていって、で、最後に2001年の「ネバー・エンディ ング・ツァー」でトドメをさされた、と(これは探検隊全員やられました)。 話が長くなりましたが、そんな感じなんで、ごく最近ファンになった者です。紙ジャケと米盤LPしか基本 的に持ってません。今回の紙ディランでようやく本格的に突入かな、と思ってます。 だからファーストから聴いていきます(笑)。もはやコミックを1巻から読む感じですね(つうか意固地?)。 さて、では、記念すべきデビューアルバムです! 米Columbia CL-1779(MONO) 1962年3月発売 若い・・・ ボロボロです(笑)。この特集、どこまでいってもボロしか出てこないッス。だって、ディランのオリジは ですね、状態にさえこだわらなければ安いんですよ。ほとんどが今でも15ドル前後でかえちゃうと思います。 一部激高いのがありますが、持ってません(キッパリ)。このファーストも売れなかったせいかオリジナル の中ではちょっと高いものの1枚(ま、この状態なんで大したことないんですけどね)。 で、この写真、なんかヘンですよね。よく見えないと思いますが、ギターの弦が内側が細いんですよ。1弦。 このまま弾くと、ジミヘンになっちゃいます。そうか!だから「見張り塔からずっと」が!!っと、わけわ かんないボケはやめときまして、これ有名な裏焼きですね。 あ、なんかしっくりくるぞ(笑) ということで裏返してみました。これが本来の写真です。40年以上ずーーーーーっと裏返ったままなんですね。 なんででしょ?こっちの方が文字がいれやすかったとか。写真家のDon Hunsteinもさぞ不思議に思ってるのでは ないかと。 で、右下に貼ってあるのが、モノラル初回盤に貼られていたといわれるNEW STARステッカーです(ステレオは どうだったか知らないんですが)。 このステッカー、紙ジャケ化の際にはぜひ復刻を ”コロンビアの新星”。うーん、いいですねぇ。カッコイイ。実にディランを最初から聴き直す気にさせてくれ ます。もちろん、当時デビューしたコロンビアのアーティスト、例えばディランの友人で同じフォーク歌手の キャロリン・ヘスターのデビュー盤にも貼ってあったようなので、キャンペーンの一環なんでしょうが・・・。 今となってはディランを象徴してるような気にさせてくれます。 わたしも最近ようやく実感してきたんですけど、70年代にロックを聴いていたものとしては <フォークはロックより前のもの(だから古くさい)> という意識が強かったんですが、よくよく考えると <ロックンロール→フォーク・リバイバル→ロック> なわけで、ディランのフォークはフォークといってもそれこそNEW STAR。もう少し後にやってくるビートルズ なんかのブリティッシュ・インベイジョンと同じ時期に歩んでいくことになるんですよね。最近実感しました。 (これまた勘違いだったらごめんなさい) Columbia 6eyeレーベル 米オリジナル盤のレーベルです。六つ目とよばれる6eyeレーベルです。目の形に似たコロンビアのロゴが左右 に3つずつ、計6個ならんでいるのでこう呼ばれています。ディランのオリジナル盤ではこの1stだけがこの レーベルで、以降は目の数が2つになります(詳しくは2nd以降で)。ちなみに6eyeにもいくつか時期によって 違いがあります。この1stは6eye後期にあたるため、上部”COLUMBIA”の文字の下に”CBS”と小さな黒文 字が入っているのがわかると思います。6eye前期にはこの表記がありません。 また写真の盤はプロモ盤なのでレーベルに大きく”DEMONSTRATION RECORD NOT FOR SALE”と袋文字で印刷さ れています。コロンビアのプロモ盤はタイトルによっていくつか種類があるようなのですが、通常は白レーベル といわれるものです。 6eyeの白レーベル これはデューク・エリントンのモノ盤 ステレオはデザインがちょと違う こんなヤツです。ディランの1stモノに関してはこの白レーベルプロモは見たことがありません。ステレオはあい かわらずわかんないんですけど(無視してないか?)。もしかすると上記のDEMO印刷レーベルのみで、白プロモ は存在しないかも・・・。 裏ジャケにはデモ盤のスタンプが押されちゃってます MATRIXの末尾は両面とも1A。米コロンビアのマトは1Bとか1Cとか1Fとかいろいろありますが、とりあえず 前の数字が変わらなければ後はAだろうがGだろうがそんなに変わらない感じがします。これが2Aとかになっ て数字が増えるとけっこう違っちゃうことの方が多かったです。 音はなんつうか、迫真というか、若さあふれるディランの吐息まで聞こえてきます。ほぼギター1本の弾き語り なんで余計すごいんだと思いますけど、夾雑物一切なしのディランのドキュメント。なんか部屋に降臨してます (怖いからヴォリュームさげよっと)。 このファーストアルバム、どうもつまらない、とか聴いてもしょうがないという意見だけであまりちゃんと聴い たことがなかったんですけど(前に日本再発LP持ってました)、オリジナルで聴くとそこそこ音の迫真性で 聴けちゃいます。確かにディランの作曲は2曲だけですし、その2曲にしても面白くない、っつうか、この後 爆発するあの独特の曲の魅力は味わえません。でもディラン、というより当時のトーキンブルーズを主体にし たフォークの若者のアルバムとしては聴きごたえがあります(なんつってもヴォーカルはいいんですよ)。 のちにアニマルズに影響を与えた”朝日のあたる家”の名編曲ヴァージョンも入ってます。この編曲、友人の デイブ・ヴァン・ロンクのやり方でディランが先に録音しちゃったようで、当然友情にヒビが入った模様です。 プロデューサーは米コロンビアの大物、ジョン・ハモンド。カウント・ベイシーや後期のビリー・ホリディとの 仕事が有名ですが、伝説の「スピリチュアル・トゥ・スイング」コンサートを実行したのもこの人。このコンサ ートがあのBLUE NOTEレーベル誕生のきっかけになったわけですから、いいことしてくれたなぁ、と。 ブルー・ノートとディランがこんなとこでつながるなんて(ムリヤリつなげてますけど)、アメリカン・ミュ ージックの大河を感じさせてくれます。 日本盤は当時出なかったようです。1stに収録されている曲は1966年に日本コロンビアから「ボブ・ディランvol.3」 としてステレオ盤で出たのが最初だそうです(しかも1曲目が”朝日のあたる家”!)。ジャケもまったく違い ます。なんで3枚目? このわけのわからん日本のリリース状況に関しては後述しようかな、とも思ってます (でもさっぱりわからん)。 =================================================================================================================== フリーホイーリン・ボブ・ディラン The Freewheelin' Bob Dylan
え〜、2枚目ですがまだ紙ジャケが発売されてないんで、発売後に続けていきたいと思います。 しかし、ファーストからこの2ndにかけて、ディラン、驚異的な飛躍をします!3段飛びどころか、一気にシーン のトップランナーへと才能を爆発させちゃうんですね!この原因は??? もちろん、第一は女に決まってるわけです。女、ですよ女。世の中そんなもんです。これは当然。 第二は英国修行。これはわりと有名ですね。で、もうひとつあげるとすれば、これです。 ここにあげたアルバムとフリーホイーリンの関係とは???答えは発売後〜(ホントにやるんだろうな?) <続く〜>2004/08/14 =================================================================================================================== 2004/08/27 そして、8月18日、何ごともなく無事に発売されました。私はソニー・ダイレクトから通販で買ったの ですが、注文した時期が遅かったためか、発送が発売当日、届いたのは19日でした。 一見して非常にていねいな仕上がりで、当時の米盤同様裏貼り形式のジャケを再現し、写真の鮮度もか なりオリジナルに近いクォリティになっています。今まで店頭でプラケを見てもその写真のひどさに買 う気がまったくおこらなかったのですが(たいてい写真の鮮度と音の鮮度は比例する)、これなら満足 できます。ディランのジャケ自体は面白いものはないのですが、それでも写真の再現度がいいと紙ジャ ケでもっていたくなります。もちろん、SMEが出しているからかつての目玉印のコロンビアロゴも使 えるわけで、当たり前のようですが、そうでない復刻版が多種あることを考えればこれはとてもうれし いことだと思います。帯はソニー初回帯を再現し、SX68サウンドのマーク入りです。マークは入っ てますが、もちろんSX68カッティングしたわけではないので、あの音は聞けません(わたしはあんま り好きじゃなかったのでその方がいいんですけど)。ソニー初回帯について補足すると、日本での米 コロンビアの販売がソニーにうつった後に再発された、”ソニーで初めてリリースした時の帯”という ことになります。第一期では「ナッシュビル・スカイライン」のみ日本初回帯の復刻となります。 「ジョン・ウェズレー〜」までは最初は日本コロンビアからの発売(リリース形態はかなり変則的でし たが)。音質的なことは後でまとめて書こうと思います。 ... 米Columbia CL-1986(MONO)/CS-8786(STEREO) 1963年5月発売 米ステレオ盤と紙ジャケの表紙 厳密にいえば2ndジャケ で、まず「フリーホイーリン」です。「風に吹かれて」を収録した名盤で、ジャケも超名ジャケ。 ニューヨーク、グリニッチ・ビレッジにあるグレート・ジョーンズ通りで撮影。なんというか、青春? (うわ〜)をこんなに感じさせてくれるジャケも珍しく、各国盤を集めてしまう人が多いのも納得がい きます。中でも"En Roue Libre..."というタイトルがお洒落なフォントで大書された1965年のフランス 盤(仏CBS 62 193 )、なんだかいろんな文字がとびかってる1966年の日本コロンビア初版(YS-585-C) は人気があります。フランス盤はただ単に仏語で書かれてるだけなんでしょうが、それだけで何故かす べてお洒落に見えてしまうのは日本人の悲しい性?日本盤は「ボブ・ディラン VOL.2」という邦題で、 まぁ2ndアルバムだからな、と思いきや、収録曲に「フリーホイーリン」からの曲は1曲も入ってなく て、ジャケだけ同じ、という恐ろしいアルバムだったそうです(しかしどーゆーリリース状況だったん でしょ)。 なお、このジャケのせいでフォルクス・ワーゲンのバンに憧れてしまったという、まったく違った方向 に突進した方もいます(実はけっこう多かったりして・・・)。 .... 同裏ジャケ。上部がかすれているのはスキャンしたブツがそうだっただけ、ということでしょうね で、この腕組んで歩いている幸福そうな女性、この女こそがディランの驚異的な飛躍の源泉、スーズ・ ロトロです。1stアルバムから2ndアルバムを続けて聴くと、ローマが一日にしてなっちゃったみたい なステップアップぶりなんですが、やはり女でしょう、原因は。ジャケでは幸せそうな顔してますけ ど、2ndアルバムの録音がはじまった62年4月の頃はビミョーな関係にあったようで、写真ほど幸せ いっぱいのおノロケ状態ではなかったようです。 「カレだけどんどんスターになっちゃって、わたしはおいてきぼり」な状況で、ディランとこのまま 関係を続けていくことに疑問を持った彼女(オイオイ、ホントにそんなメロドラマ進行だったのか?) なんと録音がはじまってる彼をおいて62年の夏にイタリア留学しちゃいます。もともとイタリア系移 民の子だったんで、両親が進めたということみたいですね。 「自分の気持ちを整理するために旅にでるわ・・」シンドロームですね(トホホ)。 恋人は遠い異国。独り残されたディランの方は、まだまだこの恋に疑問もなんも感じずに猪突猛進状態 だったもんで、もうこれは悶々としますね。モンモンモンモンと、独り部屋にこもり、行き場がなくな った恋愛エネルギーが渦まいちゃってるわけで、そこへ早く曲作れ、録音はじまってんだぞーというプ レッシャー。この状態は創造力爆発します。 ・・・腕組んで歩いてたらこんなアルバムできません。 で、ディランを公民権運動にひきずりこんだのも彼女ですから、「プロテスト・ソングのプリンス」に なっちゃったのも彼女のせい。ディランは別に公民権運動とかそんなに興味なかったけど、彼女に気に 入られようと必死でプロテスト・ソングを作ります。ま、作ってるうちにマイ・ブームになっちゃった ってことなんでしょうけど(このへん、ものすごく勝手にいいきってますが、もちろん一つの推測なん でご勘弁を)。 はい、これで希代の名曲「風に吹かれて」のイッチョあがりです!(ホントか?)・・女はこわいわ。 (実際は4月に着想、5月に発表、7月録音のような感じですが不確かです・・スイマセン)。 なお、「風に吹かれて」は大ヒットしたもんで盗作疑惑もおこりました。これがさらにディランを殻に 閉じこめ、ヘンクツな性格形成へと・・・(もちろん後年、疑惑は完全解消されましたけど、時すでに 遅し)。 .... 当時の米盤の作り方を再現。表紙の紙を折り返してその上から裏紙を貼ってある さてスーズとのベタな純愛ドラマは録音期間を通じてまだまだずーっと続きます。 3ヶ月したら帰ってくる、っていってイタリアにいったはずなのに、6ヶ月たっても帰ってきません。 「9月になったら彼女が帰ってくるから・・」とそれだけを心の支えにアルバム作りにいそしんでいた ディランだったのですが、もはや年末。ついに業を煮やしすぎて、なんとイタリアまで会いにいっちゃ います(実際は英国旅行の帰りにたちよったようです)。彼女の留学先は日本人にはNAKATAでおなじ みのペルージャ。で、ペルージャいったらスーズはすれ違いで、いまやN.Y.へ向かう船の上・・・。 はるばるイタリアまで行ったのにすれちがい・・・。 ああ、なんて不幸なんでしょ、ディラン。現代のわれわれからしたら「さきに電話しろよ、電話!」っ て感じですが、これがさらなる名曲をうんじゃうわけですから創作というのはわかりません。逆に考え れば当時はそうした通信手段や交通手段が発達していなかったため、悲恋が生まれる要素がいっぱい。 したがって名盤も生まれやすかったのかもしれません。いま、名盤がなかなか生まれてこないのは携帯 とネットのせいだったりして・・・。 まとめるとこんな感じでしょうか? 62年4月 録音開始 62年夏 スーズ、イタリア留学 62年7月 さらなる録音 62年9月 スーズ帰国予定だが音沙汰なし。さらに録音しつづける(「はげしい雨が降る」) 62年12月 英国旅行 63年1月 イタリアに行くがすれ違い(「北国の少女」) 63年4月 差し替えた曲を含む最終録音 さてこの名盤を作り上げた二つ目の要因が先にあげた62年末の英国旅行です。 BBCの劇に出演するためいったわけですが、そこでマーティン・カーシーからブリティッシュ・トラッ ドを教わるわけで、これは「フリーホイーリン」誕生の話としてはかなり有名です。 この結果、 「北国の少女」に「スカボロー・フェア」の歌詞 「ボブ・ディランの夢」に「ロード・フランクリン」のメロ が使われることになります。 しかし、当初この2曲は「フリーホイーリン」に入る予定はなかったのです。というか、この2曲なしで アルバムは完成しており、発売されることになっていました。 ...... 広げるとビヨヨヨーンとのびるライナーつき ではどうして急遽予定が変更されたのか? その前に、ま、たまには紙ジャケにも言及しとかんと・・・。今回のライナーはLP発売時の中村とうよう によるものと、裏ジャケの英文ライナーの対訳(これはとてもうれしい)。 歌詞対訳もちゃんとついていますが、歌詞は公式リリースのディランの詞のようで、実際に歌われ収録され ているものとはじゃっかん違っています。しかし復刻もののライナーとしてはこれだけやっていただければ 実に充実、といった出来で読み応えがあります。 ...... 紙ジャケのレーベルは基本的にオリジナルを復刻 ステレオ収録なので、レーベルも基本的にステレオ盤のレーベルを復刻しています。 ・コロンビアのeyeロゴが左右にある2eyeレーベルで ・下部の360SOUND STEREOは黒文字 ・なので当然品番の下にNONBREAKABLEの表記 と、ちゃんとオリジナルが再現されています。バンザーイ!しかし今回の第一期、全部このデザインになっち ゃってるんですね。「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」まではそれでいいのですが、そっか ら先はオリジナルにあわせて変えて欲しかったところです。 この後60年代のステレオ盤は ・下部の360SOUND STEREOが白文字で、品番の下にNONBREAKABLEの表記 たぶん「ブロンド・オン・ブロンド」まで? ・下部の360SOUND STEREOが白文字だが、NONBREAKABLEの表記なし と変遷します。 ... 米国盤モノ(左)とステレオ 縦長の両用の紙を使って貼る位置を変えているので縦のトリミングが変わる それでは「フリーホイーリン」を名盤たらしめた最後の一撃、63年4月24日の夜遅いセッションとはなんだったのか? 米オリジナルを見ながら進めていきましょう。 写真左側が、わたしのディラン像(四畳半フォークの親玉)を粉々にした米オリジナルモノ盤(2ndプレス)です。 「SINGING HIS SENSATIONAL HIT "BLOWIN' IN THE WIND"」というステッカーが貼ってあるものもあったそうです。 ディランの復刻に関してはこのステッカーも大事な要素。 右はステレオ盤ですが、かなり後のものです。ステレオで聴くと、まず右からギター、真ん中からヴォーカル、左 からハーモニカと聞こえてきます。これ、一人でやってるわけですから、これだったらステレオである必要はない な、と以下ディランに関してはモノがあるアルバムは、基本的にモノを買うことにしました。 モノ盤はガッツがあり、奥行きを感じさせてくれます。 ..... 同裏ジャケ 英国から影響を受けた曲なしで完成していた「フリーホイーリン」ですが、ここでまた神のみわざというか、まだ まだだめじゃん、とミューズがいったかどうか、またしても事件がディランをおそいます。スーズとのギクシャク した関係(こっちは燃えてるのに向こうは冷めてる)、盗作問題でイラついてるところに、です。 5月12日、エド・サリバン・ショーに出演するためリハーサルをしていたディラン。歌っていたのはアルバムの中 の1曲、「ジョン・バーチ・ソサエティ・ブルーズ」。内容が、実際の協会(反共・右より)を揶揄するものだっ たため、検閲が入ってしまいました。問題をおそれたTV局側が違う曲にならないか、といってきたのです。 当然ディランは(イラついてたと思うし)、開演直前というのにブチ切れて会場を去ってしまいました。 でこのエド・サリヴァン・ショーがCBSネットワーク、ようするにディランがいたコロンビア・レコードの親方だ ったのがさらなる不幸。話をきいたレコード会社の方も、問題になりそうな内容の曲は発売しちゃダメ、っていっ てきました(問題がおこったわけではないので、今でいう自主規制ですね)。 ディランはどうせさしかえるなら、この際、この間4月24日に録音したヤツもいれて、もっとさしかえちゃえ!と 思ったかどうか知りませんが、たぶんディランの意識はすでに出来ていたアルバムよりもっと先にいっていた。だ からその時点では、直せるならこの機会にもっと直しちゃえ〜、っと思ったのではないかと。 てことで、問題のある「ジョン・バーチ・ソサエティ・ブルーズ」だけじゃなくて、出来上がっていたアルバムか ら計4曲も差し替えることになりました。 このTV出演キャンセルが5月12日。で、アルバムの発売予定が5月17日。一番貧乏クジを引いたのはプレス工場 でしょう。間に合うわけありません。数百枚が差し替える前の曲目でリリースされてしまい、ここにアメリカ1バ カ高い激レアレコードが誕生してしまいました〜。 したがってこの「フリーホイーリン」のオリジナル・ファースト・プレスはまず入手不可能。中でもステレオ盤の 方は米ゴールドマインのリストで、最も高いレコードとして3万ドル!!の価格が設定されています。もちろん米 国ポピュラー音楽のLPの中で、ですが、世界中あらゆるジャンルを通じても上位に位置してしまうほど高いんじ ゃないかと・・・。モノ盤の方はもう少し数があるようで、1.5万ドルの価格設定(でもどうしようもないほど高 いけど)。 ステレオ盤は発売から30年近くその存在が疑問視されていました。他のツチノコレコード同様、ない、って思われ ていたんですが、なんと1992年にNYの教会のバザーで発見されてしまったわけです。これをみつけた時のコレク ターさんの気持ちはいかばかりだったか、わたしもそんな経験はないので推し量りようがないんですけど単純にうら やましいなぁ、と。まさに「ボブ・ディランの夢」...(が、入ってない初回盤なんですけどね)。 当時発売されたカナダ盤のジャケにもこの削除された4曲のタイトルは残ったままだったようです(印刷が間に合 わなかったんでしょうか)。実際にどうかわってしまったのか、表にしてみました。 左側が初回盤の曲順です。 ....
A side | Withdrawn 1st Press | 2nd press | 邦題 |
1 | Blowin' In The Wind | Blowin' In The Wind | 風に吹かれて |
2 | Rocks & Gravel (Solid Road)* | Girl From The North Country | 北国の少女 |
3 | Let Me Die In My Footsteps | Masters Of War | 戦争の親玉 |
4 | Down The Highway | Down The Highway | ダウン・ザ・ハイウェイ |
5 | Bob Dylan's Blues | Bob Dylan's Blues | ボブ・ディランのブルース |
6 | Hard Rain's A-Gonna Fall | Hard Rain's A-Gonna Fall | はげしい雨が降る |
B side | |||
7 | Don't Think Twice, It's All Right | Don't Think Twice, It's All Right | くよくよするなよ |
8 | Gamblin' Willie's DEAD-MAN'S HEAD (Gamblin' Willie)* | Bob Dylan's Dream | ボブ・ディランの夢 |
9 | Oxford Town | Oxford Town | オックスフォード・タウン |
10 | Corrina, Corrina | Talking World War III Blues | 第3次世界大戦を語るブルース |
11 | Talkin' John Birch (Society) Blues | Corrina, Corrina | コリーナ、コリーナ |
12 | Honey, Just Allow Me One More Chance | Honey, Just Allow Me One More Chance | ワン・モア・チャンス |
13 | I Shall Be Free | I Shall Be Free | アイ・シャル・ビー・フリー |
*レーベルに印刷されたタイトル。()内はジャケット上の表記。 | |||
これじゃ全然印象が違いますよね。なんてったって冒頭の、「風に吹かれて」「北国の少女」「戦争の 親玉」というこのアルバムを名盤たらしめている必殺の3連発がありません。内容的には2ndプレス以 降の方がいいのではないかと思います(聴き比べられないから断言できないけど)。 で、この激レア初回盤はやはりマト1A/1Aだそうで・・・。このバカ高い盤を買わないと「フリーホイ ーリン」のマト1は手に入らないというわけです(ああ・・)。 .... モノ盤のオリジナル・レーベル つうことで、このレーベル、モノのオリジナルなんですけど、1stレーベルで2ndプレス、ということに なります。トホホ。マトは3/2で始まっています。2/2ももしかするとあるかもしれません。 モノは2eyeレーベルで下部にGUARANTEED HIGH FIDELITYと入っています。これも「ブリンギング・イッ ト・オール・バック・ホーム」まで。その後はステレオ盤と同じデザインで変遷していきます。 ステレオ盤のレーベル そうすっと、この私が持ってるガタガタの米ステレオ盤はどう判定すればいいんでしょ? 1.2eyeが入ってるから60年代のプレスだが 2.下の360 STEREOが白いから60年代中盤以降で 3.NONBREAKABLEの表記がないからかなり後期。 ということで、3rdレーベルで4thプレスということになっちゃうんですよねー。 ま、市場価値数百円ってとこでしょう・・・(3万ドルから遙かに遠いなー)。 では英国からの影響を刻み込んだ最後の4/24日のセッションの話にもどりましょう。 これが名盤誕生の第3の原因になっているわけです。ディラン自体も変わってきているの でですが、他にもこのセッションからエポック・メイキングな変化があったのです。 それがこれ。もう1回どうぞ 上が左からセシル・テイラー(ジョン・コルトレーン)、サン・ラ&ブルーズ・プロジェクト 下段がヴェルベット・アンダーグラウンド、ザッパ、ソフト・マシーン 他にもアニマルズ、サイモン&ガーファンクルなんかもこの人がプロデュースしています。 そう、名盤誕生最後の要素はトム・ウィルソン。 ジャズのマイナー・レーベルやサン・ラ等の活動を経て、当時コロンビアの社員になっていた アフロ・アメリカ系の名プロデューサー、トム・ウィルソンが、ついにこのセッションから登 場したのです。アルバムのクレジットは前作同様ジョン・ハモンドのまま。しかしトムはディ ランに録音上のマイク・テクニックなどを教え、さらには上記アルバム群にかいま見えるアウ トサイダー的なサウンド感覚をとりいれていきます。この関係は「追憶のハイウェイ'61」ま で続くわけですが、一流のバック・ミュージシャンを使いながら、自然とゆうかラフというか ある種破綻した演奏をともなうディランのフォーク・ロックはこの人なしではありえなかった んじゃないかと・・・・。耳にやさしいメイン・ストリームのポピュラーミュージックへはい かなかったわけですね。ま、トムがいなくともディランはそうはならなかったと思いますけど ・・。 もちろんディランに対するトム・ウィルソン最大の功績は、アル・クーパーを録音につれてき たことだと思いますが。 はい以上、女、英国、トム・ウィルソンでこの名盤ができあがった説でした〜(お粗末)。 名盤なだけに、このアルバムの曲からいろいろな人がカバーヴァージョンを作っていますが、 同じく1stプレスに問題があったものを1枚だけ。 .... レオン・ラッセルのファーストアルバム レオン・ラッセルのソロ・デビュー盤です。このファーストアルバムのB面3曲目に収録されている 「OLD MASTERS」という曲は、ディランの「MASTERS OF WAR(戦争の親玉)」の歌詞を「星条旗よ永 遠なれ」のメロに強引にのせたもの。ピアノ弾き語り。1番のみで終了。ものすごい強引なカバーです が、これが実にカッコイイ。かっこいいんですけどあまりにも問題が色々ありそうなトラック。その中 で何が一番問題だったのかわからないんですが、当然のようにセカンドプレスからオミットされてしま いました(CD化されてますけどね)。 しかしディランの曲は本人が歌ったバージョンを聴くと、普通にヒットしそうなメロなのかどうなのか わからないのが多いです(私だけかもしれませんが)。ディランで聴いてよくわからなくて、他の人が カバーしてるのを聴いてようやく、あれ?これわかりやすくていい曲なんだな、と思うことが多いです。 でもそうしたカバーにあきた頃、元のディラン版をあらためて聴くと、これが今度は実にあきがこない。 なんかスルメのように聴き続けられるようになっているのです。 =================================================================================================================== The Times They Are A-Changin'toppage database
今回の特集は1枚ずつ軽〜く書いていこうと思ってたのに、思わず長くなっちゃいました。 このサードアルバムは紙ジャケ化されてないので、あっさりと。 米Columbia CL-2105(MONO)/CS-8905(STEREO) 1964年1月発売 米国モノ・オリジナル・・・でも? 「時代は変わる」の米モノ盤です。このアルバムには珍しくインナーがついていて、裏ジャケから続いて めんめんと「11 OUTLINED EPITAPHS」という詞が掲載されています。 「怒りの葡萄」というか、けっこうプロテストした写真。プロテスト・ソングでいけー!というレコー ド会社の戦略でしょうか?でもこれもいいジャケですね。 日本で出た最初のボブ・ディラン名義のアルバム、「カレッジ・フォーク・シリーズ ボブ・ディラン」 (日本コロンビアYS-537-C 1965年12月)はこのジャケを使ったものでした。でも1曲目が「ライ ク・ア・ローリング・ストーン」だったそうで・・(ああもうわからん)。 ... 同裏ジャケ・・ここにポイントが さて私のもってるこの米モノ盤、セカンドジャケだそうです・・トホホ。どこで判断するかというと 裏ジャケ右上。 ... ステレオ/モノ、両方の品番がのっている2ndジャケ このアルバムの初回ジャケはステレオならステレオ、モノならモノと、どっちか片方しか掲載されて いなかったそうです(持ってないから確証はありませんが)。ああ、調べるんじゃなかった。 ... 米モノ盤のオリジナル・レーベル レーベルは1stレーベルでマトも1A/1Aなんで、盤はこれでいいと思うんですけど・・(ガックシ)。 でも音は素晴らしいです。もともとの録音も前作よりよくなった感じがします。 さて前回に引きつづきプロテスト色濃いアルバムですが、要するにディランはまだスーズにひかれて いたってことでしょうか?(そーゆー問題なのか?)。スーズとギクシャクしながらも、ジョーン・ バエズとの新しいロマンスもめばえてたりして。ま、どっちの彼女もちゃんとプロテスト・フォーク を歌うディランが好きだったんでしょうけど・・・。 <さらに続く〜>2004/08/28 =================================================================================================================== 2004/10/23 2回目が無事発売されたのに・・・
9/23に無事2回目が発売され、ボックスも届いたとゆーのに、この紙ディラン特集が遅々として 進んでいないのはどーゆうことなんだ!え、みんな!どーした? これじゃ「また探検隊、途中で放り出した」といわれるじゃないかーっっ!! つうことですが、ええ、この1ヶ月ちゃんと聞きまくっております。深いです、ディラン。やってみ るととんでもないですね(最初から考えて書けー)。 2回目も無事発売され、せいぞろいしたはいいが・・・ ずーっと聴いてるんですが、発売以来もっともよく聴いたのが「ジョン・ウェズリー・ハーディング」 と「スロウ・トレイン・カミング」。みなおしました、この2枚。まぁ「スロウ・トレイン..」は前か ら愛聴盤だったんですけどね。このへんの詳しいことはぜひ書きたいと思っております(じゃ、早く 書けよー)。 と、この探検隊の窮状を見かねたのか、はたまた強引に外注に出したか探検隊? refugeeさんにアサ イラム時代の特集をお願いしちゃいました。 refugeeさんの「プラネット・ウェイブス」特集 いやー、refugeeさん、スタイルまでここの省エネスタイルにあわせていただき、ありがとうござい ます〜。探検隊もあきらめずに鋭意制作中ですので、この大河のようになってしまうかもしれない ディラン特集、なにとぞ暖かい目でみまもって欲しい・・なんて・・スイマセン。。
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