KINKS
キンクス紙ジャケ 比較検証



紙ジャケ全12枚とディスクユニオン特典のBOX
たいへんお待たせいたしました。キンクスの比較検証です。
4月の発売前からやるやる、といっておきながら早4ヶ月。なんでこんなに時間がっかっちゃったかとい
うと、
1.そもそもよく知らなかった
 キンクスをなんだかんだいってこんなにまとめて聴いたのは初めて。ヒット曲や有名なアルバム何枚か
は聴いたことがあるが、とても比較できるほどの知識はありませんでした。探検隊にもキンキーはおらず、
はっきりいって手探り状態。
その上、「ザ・キンキー・ファイル」という素晴らしい本や、beetleg誌上での鬼のように凄いキンクスの
連載があって、もはや別にいうことなしって感じではありました。
2.ブツがなかった
 よくわからないのでブツを当たろうとしても、キンクスのオリジナルってホントになかなかなくて.....、
当時ヒットチャートに入っていなかったもので、後に名盤になっちゃったヤツってほんとにないんですよ
ね。特にPYE中期のMONO盤とか....。キンクスってそうしたものの最たる代表のような感じでした。

悩んでいたところにねこねこ様が、「ヴィレッジ・グリーン〜」のオリジナルをはじめキンクスを何枚か
お持ちとのことで、試聴会を開くことになったんですが....。
探検隊は急に身内に不幸が出たヤツとか出張でこれないヤツとかで、結局隊員は一人。夏休み前に無理矢
理開催しようとしたため連絡も行き渡らず、結局参加者もねこねこ様一人、ということで、

<二人だけのキンクス試聴会>

という企画倒れな、とってもキンクス的な状況になってしまいました。 ねこねこ様、ごめんなさ〜い。 なお、試聴会においてはいつもながら西新宿ダーナ・ジャパン様の寺垣式試聴室をお借りしました。 いつもいつもお世話になります。 さぁ、それではいってしまいましょう、まずはやっぱりこれでしょう!

<アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡>

LP左から UK PYE/NSPL18317 (1st,Laminated gatefold,Queen insert,Light blue label,stereo) US Reprise/RS6366(1st,gatefold,Queen insert,Two-tone label) US Reprise/RS6366(2nd,gatefold,brown label) 手前CD JP Victor/VICP61000(Digital K2 remaster,papersleeve) (色味は米再発以外はほぼ同じ。コーティングしてある英盤と紙ジャケはやはりひと味違う。 英盤のペナペナの薄い紙質も紙ジャケはうまく再現してある。) キンクス唯一のギミックジャケとして、非常に紙ジャケ化が期待されていたもの。まぁ、二つ折りのイン ナーの形が切り抜き上になってるだけなんで、ギミックというより、ローコストでアイデア一発の面白ジャ ケ、っていうキンクスらしいもの。でもインナーの端に「PULL」って書いて内ジャケのカンガルーのお腹 から女王を引き出させるこのアイデアは秀逸。 英オリジナル盤と紙ジャケの見開き内側。イギリス伝統の内側引き出し方式を再現。 カンガルーのお腹からのぞく「PULL」の文字。これは引っ張ってみたくなりますよね。 で、引っ張ってみると女王が....。あれ、何か違うぞ?紙ジャケは女王の後ろに歌詞が見えない。 という何か違和感があったのですが、これはbeetlegで福井氏が指摘しているように、米盤のインナーを紙 ジャケでは採用したせいのようです。 女王インナーの違い(表)。左から英オリジナル、中央紙ジャケ、米初版。見ての通り折り返しの部分が 米盤は短いのです(コスト削減のため?)。また冠の先っちょの切り抜き方も違います。 裏側。従って女王の顔の裏は英盤は空白になっているのですが、紙ジャケは米盤に準じているため、顔の 裏側まで歌詞がぎっしり詰まっています。見開きにした場合のこの尖塔のようなシェイプもデザイン上の 重要な要素だと思うんですが...何故紙ジャケがここだけ米盤仕様なのかは謎です。 好意的に解釈すれば、内側から引き出した時に、背中越しに歌詞が見えない方がスッキリしていると判断 したのでしょうか?うーん、まさかなぁ。今回の売りは広告でも”忠実に再現”ってことだったし。こん な恣意的な英米のいいとこどりはしないんでしょうが。 ところで米初版は英のように内側引き出し方式ではなく、普通の見開きです。 ということで女王はカンガルーのおしりの方から登場します。写真の左端は米再発のbrownレーベル。 米のジャケタイプには英のような内側引き出し方式がデフォルトでなかったからだと思います。 で、キンクスごときに特殊形式のジャケを作るわけにはいかない、ってとこだったのでは? もちろん再発からはこの女王インナーさえなくなってさらなるコスト削減がなされます。 初版と再発では色味も変わります。中古盤やで最もわかりやすい見分け方は表ジャケ右上のrepriseロゴの 色です。写真左が再発。右の初版はほとんど認識できません。再発から見やすいように黒くなりました。 それにともない、背景の色味も薄くなりました。オイオイ、会社のロゴよりデザインの方を優先しろよ、っ ていいたくなりますが、キンクスのアメリカでの扱われ方がわかって興味深いです(別にキンクスだけじゃ ないか)。日本盤の方は大丈夫です。何故かというと、日本初版(コロンビア版)は英国直輸入盤に帯と 解説をつけたものだったからです。ある意味割り切ってるというか....。ストーンズもこの時期そうだった から、いいのか。(たまに中古盤屋で間違えて、日本盤帯無し、ただしジャケは英版なんてものが2〜3千 円で売ってたりするようですが、見つけたら即買いです。これこそ英輸出仕様版です。) 裏ジャケも英盤と米盤では違います。米盤は英盤の解説2つのうち1つをカットして新たにJohn Mendelsohn 氏の解説をつけ加えてあります。私ちょっと気になっているんですが、メンデルスゾーンと読むならMedelssohn とsが2つだと思うんですが...ま、いいか。そう書いてあるんだから。 で、紙ジャケは英盤に準じてあります。 裏ジャケ右上の品番、英盤はMONO盤(NPL18317)の上からSTEREOのシールが貼ってあります。よほ ど売れる見込みがなかったのか、mono/stereo兼用になっています。ま、ストーンズもこの時期そうだっ たから、そういう風潮だったのでしょう。 紙ジャケは当然ステレオ表記になっています。 今回は残念ながらレーベルは復刻されていません。 また背表紙の復刻もタイトルによってはイマイチですが、読みにくい字体もあるためしょうがないのかも しれません(甘いかな)。 <音質> さてそれでは音の方はどうでしょう?今回のDigitalK2リマスターはどのタイトルも音圧の高い、現代的 な音質。CDの特性を生かした高/低音部のクリアーさが際だっています。分離もよく、これってキンクス ?全然情けなくないじゃん、って感じです(偏見か?)。ただレイのヴォーカルのキャラクターがちょっ と変わっており(へなへなじゃない!)、しかもヴォーカルのエコーが全体的に強調されているところは 好みのわかれる所でしょう。 試聴会ではねこねこ様に83年の英PRT版の日本版(Sound Marketting System 以下SMS版)SP20-5030 をご提供いただきました。ねこねこ様ご提供盤は以下(ね)を付けて表記します。 SMS版はジャケはシングルジャケです。80年代のリマスターですが、音はクリアーでけっこう自然な補 正がなされており、好感がもてます。 ね:わけわかんないメーカーの再発だから大したことないと思ってたんですが、予想よりいいんで、うれし いです。 S:聴きやすいですね。紙ジャケより自然です。米初版よりいいんじゃないですか? で、その米初版はボソボソの音。紙のような音質で、平面的。色彩感、立体感、彫りの深さはない。 英オリジナルは、ほんとにブリティッシュ臭い音。ただし、「アーサー」くらいになるとアメリカンな嗜好 性がバンド自体にあるため、それ以前のアルバムほどではない。楽器のオーヴァーダブの多い曲はイマイチ だが、それ以外の曲はほんとに生々しい。彫りも深く、中低域の張り出し方は英盤ならでは。 ハイファイ的には全然よくないのだが、このしょぼさこそ、待ってました、キンクス!って感じはある。 キンクスにもジョージ・マーティンやジミー・ミラーみたいなプロデューサーや優秀なエンジニアがいた らなぁとも思ってしまうのでした(そしたらキンクスじゃなくなるか)。 ビートルズやストーンズなみの驚きというのはないのだが、この英国的なうらぶれた雰囲気/質感はくせ になりそうだ。もちろん「アーサー」より前のPYE中期の方がこの特性は顕著ではあるが...。

<PYE時代>

さてそのPYE時代。 それぞれUKオリジナル盤と紙ジャケである。 左から キンクス UK PYE/NPL18096 (1st,Laminated flipback,PInk side logo label,mono) US Mobile FIdelity/UDCD679(Ultra Disk II,Gold CD,"You really got me" and "Kinda Kinks") JP Victor/VICP60994(Digital K2 remaster,papersleeve) フェイス・トゥ・フェイス UK PYE/NPL18149 (1st,Laminated flipback,PInk top logo label,mono) JP Victor/VICP60997(Digital K2 remaster,papersleeve,mono) サムシン・エルス・バイ・ザ・キンクス UK PYE/NPL18193(1st,Laminated flipback,PInk top logo label,mono) JP Victor/VICP60998(Digital K2 remaster,papersleeve) (mono表記のないものはstereoです) (モービル盤は米盤の1st"You really got me" と"Kinda Kinks"のカップリング) 今回の紙ジャケ化で最も素晴らしかったのは初期のこれらのタイトルのコーティング・フリップバック (折り返し)カバーで裏ジャケの折り返し部分以外はコーティングなしという、英国ビート盤好きにはた まらないジャケが再現されている点だ。 裏ジャケ。折り返しの比率がじゃっかん違うが、これは強度のためでしょう。これ以上贅沢はいいません。 この感じ、やっぱりいいです。喝采したいと思います。 さてそれでは栄えある1stアルバムから。表、裏ともちゃんと再現されています。 音の方はやっぱり「ユー・リアリー・ガット・ミー」で聴き比べてみました。 この1stアルバムはキンクスの初期にしてはめずらしくStereo版が存在します(この後「フェイス〜」まで MONOのみ)。当初イギリスでは発売されず、輸出用のみでした。紙ジャケ、モービルともそのStreo版を 使用しています。ただし、「ユー・リアリー・ガット・ミー」のみはStereoといってもTrueではないよう です。なおPYEの品番はMONOがNPL、StereoがSがついてNSPLとなります。 紙ジャケは例によってエコーが凄く目立ちます。まるでフロ状態になっております。 モービルもエコーが目立ちますが、し、しかし、こ、これは.....。 ね:凄いですね、モービルって...。よくここまでもってこれるというか.... S:恐れいりました。キンクスでさえちゃんとモービルの音になってしまってます。 広大な音場、密度の高い低音部、分離の良さ。と、これが「ユー・リアリー・ガット・ミー」か?耳を疑っ てしまいます。なんかキンクスがヴァン・ヘイレンのスタジオでレコーディングしたようなアメリカン・ ハードな音に仕上がっております。あっぱれです。 またモービルでは「ミスフィッツ」のアナログが出ています。 ね:でもやっぱりギターの音はオリジナルが一番いいですね、カッコ良さという点で。 S:完全にぶっこわれてますよね。 英モノオリジナルの音はぶっこわれブリティッシュ・ビートの頂点。ピート・タウンジェントが衝撃 を受けたのもうなずける、ディストーションというよりホントにギターがこわれてるような音である。 これよりいいのはきっと英オリジナルシングルだけだろう。 PYEのレーベル。この1stだけがサイドにロゴのあるピンクレーベル。 65年以降はトップにロゴを配したものになる。「サムシン・エルス」まではMONOがピンク、STEREOがラ イト・ブルーの色。その後はライト・ブルーに統一されたとのこと。で、統一以後では「ヴィレッジ・グ リーン」と「アーサー」のみMONO盤が存在するが、何色なのか見たことがない。 上記の説にのっとればMONOもライト・ブルーということになるのだが....。 なお70年中期以降の再発には紫のグラデーションレーベルが使用された。 カインダ・キンクスの英オリジナル盤(PYE/NPL18112,MONO)と日本再発のSMS版(SP20-5024)いずれ も(ね)。 赤で線が書いてある部分、よく見えませんが、トリミングが違っていて灰色のわくがSMS版にはありま せん。紙ジャケはオリジナル通りのトリミングです。 これも1stと同じ印象。オリジナル盤はスピード感、鮮度がとてもいいのだが、どうもビートルズやストー ンズに比べてひなびて、というかヘナチョコに聞こえるのは先入観のせいか?(一応ほめているつもり)。 そのへなちょこ感が爆発(ってどんな感じだ?)するのが「フェイス・トゥ・フェイス」の頃から。この英 オリジナル盤の「サニー・アフタヌーン」はキンクス好きなら一度は聴いておきたいもの。 ね:これ、凄くいいですね。これはいいです。 S:いいでしょ〜(自慢にしかなっていないリアクション)。 イギリス盤の音質とバンドの曲調が、高度な次元でヘナチョコ感とうらぶれ感を融合。もういってること がよくわからんが、とにかくそんな感じ。ゆるーい黒ビールすすりたくなります。 キンクスっていいなぁ〜、絶対嫌いになれないなぁ、と私も虜になりました。 私(S)が一番好きな「サムシン・エルス」。もちろんジャムで「デビッド・ワッツ」にはまった口ですが ...。とにかくその1曲目から最後の「ウォータールー・サンセット」まで、捨て曲なし、とはいわないが 捨て曲までもが愛くるしく思えてくる傑作だと思います。写真左はSMS版(SP20-5028(ね))。 紙ジャケの「ウォータールー〜」はやはりヴォーカルのエコーが強調されていてひなびた雰囲気はない。 ね:あれ、これステレオなんですか?ステレオだったらヴォーカルが右から入ってくるはずですが。 これは寺垣式の特性もあるだろう(今回のセッティングでは左右の音が混ざるようになっている)と思い、 後で家で聴いてみたところ、紙ジャケもちゃんと右からヴォーカルが入ってきていた。ただし紙ジャケの ステレオは確かにステレオ感にとぼしい、というか左右にそれほど広げていない感じ。これはこれで好ま しいマスタリングではないかと思います。RVGのブルーノートとかも左右にそんなに広げないリマスター だし、最近の傾向かもしれません。 S:で、ねこねこさん、そろそろヤマ場の「ヴィレッッジ・グリーン」なんですが... ね:もうちょっと人が集まって、盛り上がってきてからにしましょうよ。 S:そ、そうですね、最大のヤマですもんね〜(早くオリジナルを聴いてみたいという、はやる心を押さ えるS。しかし、この後人が増えることはなかった.....)。 <ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦> PYE時代の最後を飾る(のは「パーシー」なんですが、それは置いといて)紙ジャケ、ローラを見てみ ましょう。 写真左から英オリジナル盤( PYE/NSPL18359(ね))、米盤でジャケが初版、レーベルが2ndのbrown レーベル。右が紙ジャケ(Victor/VICP61000)です。 ただでさえビンボーくさい水色と黒の2色刷りのジャケなんですが、米初版はさらに青1色刷りにすると いうコストダウンをはかっています。しかしなんて仕打ちだ。 一応再販から2色刷になったようなんで、間違いだったのかもしれないんですが....。 さらに見開きの内側。米盤は天地が逆です。一体米盤担当者は何を思ってこんなことをしたんでしょう? たぶんどーでもいいと思っていたんだろうが.....。 ただへんな所にこだわりは見せています。上から英/米/紙ジャケですが、バンド名の飾り文字がアメリカ 人には読みにくいと思ったのかシンプルにしてあります(赤線部分)。そこまでやるんだったら、ビンボー くさいことせずに2色刷にしろ!(あ、もしかして1色刷にしたからバンド名を読みやすくしなきゃなら なくなったのかな?)まぁいいやどっちでも。たいへんずさんな米盤であることに間違いありません。紙 ジャケはちゃんと英盤通りです。 ということで英盤から聴いてみます。 S:このアルバムっていいアルバムだったんですね〜。音も今までのよりいいし。 ね:そうですね、ちゃんと録れてますね、このアルバム。 S:このアルバムからPyeスタジオを離れて、モーガン・スタジオに移ったわけですが、なんかようやく   多重録音になれてきたっていうか。 ね:ああ、そういうことなんでしょうか....。確かに音がよくなってます。曲もいいし、このアルバム、   いいアルバムですよ。好きなんですよ。 S:なんか今まで印象になかったアルバムだったんですけどね〜。ローラが入ってるってだけで。 ね:アメ盤で聴いてたからじゃないんですか? (ということでアメ盤を聴いてみる) S:ホントだ.....印象が違〜う! 本来の英盤の音はリズムセクションがピシっとタイトにまとまり、バランスもいい。しかし、米盤の方は ジャケのひどさがそのまま音になってる感じ。まるで粗悪なコピー盤のような音(そこまでいわないか)。 重要な”ローラ”のイントロのギターなど、粒立ちがえらく違う。 みなさん安いからといってこの手のアメリカ盤に手を出すのは要注意です。 紙ジャケは他のタイトルといっしょ。米盤より数段いいことは確かだ。 <この世はすべてショー・ビジネス> 何かと問題が指摘されている「ショービズ」。 写真は英盤(RCA/DPS2035,gatefold with inner,orange label)と紙ジャケ(Victor/VICP61003)。前回 のプラケース盤がアメリカ仕様のジャケだったので紙ジャケはイギリス仕様。ビクターの粋な計らいだ (英米のジャケの違いは「ザ・キンキー・ファイル」(シンコー・ミュージック刊)に詳しいので、是非 そちらをどうぞ)。 このアルバムには悩まされた。まず、紙ジャケがコーティングであったのに、私の持っている英盤はそう じゃなかったこと。天下のビクターがわざわざコーティングを施したのだから(しかもけっこう美しい)、 きっと初版のジャケはコーティングで、私の持っているものは初版じゃないのだろう、と思っていた。 英盤てそういうことがけっこうあるし。 もう一つは内ジャケのクレジットに書いてある変な文字。 紙ジャケの方は”:asm”って変な手書き文字が入っている(赤線部分)。これも初版にはこんなキン クスらしい冗談が書いてあったのかなぁ...なんて思っていた。 この上記2点から私の所有してあるものは初版ではないと判断。コーティング/手書き記入ありの英初版 をけっこうさがしたのだ。 しかし探せど探せどコーティングジャケの「ショービズ」がない。そんでbeetlegを見ると、そこでもLP は光沢がないと書いてある。で、ねこねこさんが持っているのもコーティングなしだった。 しかもどれも手書き文字などない!!ま、まさか天下のビクターが? 紙ジャケを作るときは、もとの版下がない場合(普通ないよね)、現物(オリジナル盤)をスキャンし、 データの色味を調整したり、文字を小さくても読みやすいようにうちなおしたりして補正して作るのだ と思うが、たぶん補正の段階で抜け落ちたのだろう。ま、このくらいはご愛嬌、キンクスらしくていいの だが。これは? クレジット部分の"design"が"aesign"になってしまっている。おそらくスキャンの時にかすれてしまって dの上部の突き出しが消えてしまい、それをそのまま補正したのだろう。なんか紙ジャケを担当したデザ イナーの方の過酷なスケジュールが思われて身につまされる。これもbeetlegの指摘ではじめて気がついた。 もっとあるかもね。でもこれも愛嬌ってとこですか。このへんのショボさもキンクスらしいっていうか、 完璧な復刻って似合わないし...。 しか〜し、これはいかん。 歌詞カードが「アーサー」同様米盤仕様になってしまっている。まず色味がまったく違う。んで、光沢が 必要なのはこっちの歌詞カードの方である。ジャケを光沢にしたら逆でである。 女の子が米盤の女の子(赤丸部分)になってしまっている。となりの男の子の髪(赤矢印)の色も違う。 で、もう片面はいっしょ、と。これではわざわざプラケース版を米盤ジャケ、紙ジャケを英盤ジャケにした イキな計らいがだいなしである。 ね:あ〜これはいけませんねぇ、やっぱ減点ですか? S:うーん... 音の方は紙ジャケCDもなかなかいい。特にライブの方は迫力が増し、この時代のはCDでもいいかも...と 思ってしまった。ただし、2枚組をCD1枚にまとめてあるため、曲間がカットされているのが惜しい。 これはもとのvelvel版リマスターがボーナストラックをおさめるためにカットしたものをそのまま使ってい るためだと思うんだけど...(きっとボーナス部分をなくしたからって戻せないんだろうな。時間の余裕はま だあるんだけど....残念!)。 <ワン・フォー・ザ・ロード> ARISTA時代はこれだけ。 写真は米ARISTA/A2L-8401と紙ジャケ(VICTOR/VICP61005)。 RCA、ARISTA時代は米盤が原盤になる。ということで、これくらいは米盤と比較しましょう。 これは、発売日にアメリカで買ったので初版だと思う(たまに違ったりするんだけど、アメリカって、ほら 広大だから...)。 LPは写真左のように黄色いデカいアメリカンなステッカーが貼られていた。左は開いたところ。カッコ いい見開きの写真は紙ジャケもそのまま。LPには水色のアリスタ内袋と、同名ビデオの宣伝チラシが入っ ていた。ま、ここまで復刻する必要はないでしょうが...(してたら凄いけど)。 で、ポスターがじゃっかん違う。 表はいっしょ。 裏の最下部の写真がディスコグラフィになってしまっている(赤線部分)。右はその拡大図。 もしかして英盤ってそうだったのかな?でも「ワン・フォー・ザ・ロード」のジャケ写ものってるって変だ し、米初版ポスターの写真の方がカッコイイからそっちにして欲しかった所です。 ここにいたっても試聴会の方は二人のままである。しょうがないんでヴェルヴェットのmonoやドアーズの mono、アフィニティの聴き比べをする。 ねこねこさんはさらなるキンクス物をとりにいったん家にかえってしまう。 ね:すぐとって戻ってきますから。その頃にはもう少し人が増えて盛り上がってますよネッ? S:ううう。 すでに泣いた青鬼状態とはなっていた隊員Sだが、気を取り直してZEPのATCO盤を聴く。 寺垣式でボーッと聴いているとやはりこのATCO盤はすごくいい。とても自然。 1stなのかペイジがのぞんだのかはもはや疑問だが、音自体はやはりいいと一人で悦に入る。 (この件に関してはじゃっかん調査が進展したので、また次回。乞うご期待!) ねこねこさんがキンクスの追加分をどっさりもって帰ってきた。 もうあきらめてもらって2人で「ヴィレッジ・グリーン」に突入することにした。 <ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ> さあ、VGPSである!やっぱりこれが最高傑作なのか?レアな関連音源も含めて検証してみたい。 上段左から 1.UK PYE/NSPL18233 (1st,Laminated gatefold,Light blue label,stereo)(ね) 2.UK Castle/ORRLP005 (97remaster,Laminated gatefold,with bonus'7,stereo) 中段左から 3.UK PRT/NSPL18233 (83reisuue,Laminated gatefold,stereo) 4.JP SMS/SP20-5029(同上,single sleeve,stereo)(ね) 下段CD左から 5.JP Victor/VICP60227(98 remaster,Mono+12track Stereo version) 6.JP Victor/VICP61000(2000Digital K2 remaster,papersleeve) 残念ながら5のCDに収録の12トラックStreo版のLPはありません。 2枚しかない?といわれている英盤をのぞいたとしても、フランス盤やニュージーランド盤など超バカ高 いものばかりです。ジャケも違うんで、今回の比較はこんなもんで。 ジャケの色味やコーティングはやはり紙ジャケが一番オリジナルに忠実です。 裏ジャケとレーベル。今回ねこねこさんにご提供いただいたオリジナル盤はStereo。Mono盤はほんとに 数が少ないようです。日本再発盤は基本的に英PRT盤をもとにしています。レーベルはいっしょですが 裏ジャケはモノクロになっています。 裏ジャケ右上品番の部分。上から英盤、英PRT再発、紙ジャケ。英盤はStereoなのですが、これもアーサー 同様Monoのジャケしか作られなかったようで、この上からシール対応で済ませていたのだと思います。 真ん中の英PRT盤は何故かMONOと書いてあってSの入ったSTEREOナンバー。 オリジナルをコピーしてジャケを作り、"NS"の部分を無理矢理修正したようです。 ちなみにこの盤はSTEREOですが、レーベルにも何の表記もないのでたまに中古屋で、「MONO盤!」と かいわれて売られております。音を聴くしかないのですが、STEREOです。ご注意ください。 紙ジャケや英Castle盤はちゃんと修正されています。 VGPSは英国伝統のユニパック形式のジャケに入っています。見開きで内側折り返し、内側から引き出 すというものです。大昔の英国のクラシックレコードなどはほとんどこの形式だったようです。 上段はオリジナルで、もちろんレコードは内側から。中段がPRT盤で普通の見開き。下段のCastle盤はちゃ んと内側引き出しを再現してあります。 左はオリジナル盤からレコードを引き出したところ。右は紙ジャケとの比較。紙ジャケもちゃんとなって います。が! 伝統のユニッパックなので、これも「サムシン・エルス」までと同様、コーティング内側折り返し、それ 以外はコーティングなしなのです。 上からオリジナル(折り返し(赤線部分、内側は従って折り返し部分のみコーティング) PRT盤(折り返しがそのまま写真にとられている(赤丸)普通の見開き。) Castle盤(折り返しの跡はちゃんと修正されている) 紙ジャケ(同上、ということで「アーサー」と同じ形式) ということになっています。 「サムシン・エルス」まで折り返しやったんだから是非この最重要タイトルでもやって欲しかったところ です。 ね:いやこれ、ビクターの人気付いてなかったんじゃないですかねぇ?気付いてたらやってますよ。 S:ここまでやったんですからねぇ。 この点は残念である。 さて肝心の音質であるが、紙ジャケはもちろんCastle盤とほぼ同様。ヴォーカルのキャラクターなどもいっ しょであるが、エコー感はさらに強くなり、低音部はさらにマッシヴ。CDの良さが良く出ている。 そもそものCastle盤は迫力のある現代的なリマスターだがやや平面的。 なおこのCastle盤には"You still want me/ You do something to me"を収録したボーナス・シングルが付属。 PRT盤とその日本盤であるSMS盤はスッキリとした感じ。SMS盤の方がやや生気がない。 こうしてリマスター盤を各種聴いた後に英オリジナルを聴いたら、あまりの地味さにアレっと思ってしま った。特にA1、B1などの音数の多い曲はちょっとさえない。しかし聴き進むうちにやはり、鮮度の高さ や彫りの深さが際だってくる感じである。特に生っぽくて楽器の数が少ない曲は、断然素晴らしい。 レイのヴォーカルも他の盤とキャラクターが違っていて、奥行きがある。 ああ、モノで聴きた〜い!と思ったら、多少あった。 何か写真はただ黒くなっちゃっててわけがわからないが、これは英PYEが70年に出した2枚組のベスト盤。 The KInks(pye/NPL18326)(ね)。なんとこのベスト、MONO盤のみなのである。 もちろんVGPSからの曲もMONOで収録。はっきりいって、今回はこれが一番よかった。 音圧が高く、彫りも深い感じ。なんかStereoミックスの方はまだミックスがこなれていない、って音質。 同様にMONO盤のCDもそれなりにいい。ただしプラケースなので薦めませんが....。 その他のVGPS関連LP。すべてねこねこさんのもの。 左から UK PRT/KINK1 THE KINKS GREATEST HITS/DEAD END STREET '83(ね) 英PRTのベスト盤。10インチのボーナスディスク付き。 初版のボーナスディスクは以下の「グレイト・ロスト〜」からの3曲を含む5曲が収録されていたが、案 の上アレン・クレインからクレームがつき、2版目からボーナス・ディスクの内容が変わった。これはそ の貴重な初版の方。 US REPRISE/MS2127 THE GREAT LOST KINKS ALBUM '73(ね) キンクスの編集盤で最も有名なモノ。VGPS関連のテイクがギッシリ。不法コピーのアナログやCDが 出回っているので注意が必要。オフィシャルのCDは存在しないそうで、アナログも一応写真のようにイ ンナーがついていればオリジナルなのではないかとのこと(楽観はできませんが)。 UK KINKS GREATS-CELLULOID HEROES '76(ね) 米編集ベストの英国盤。ジャケが楽しい。 レイが影響を受けたといわれているディラン・トマスのLP。2枚とも米の朗読専門レーベルCaedmonか ら出ている。この名前だけでグっとくるプログレマニアも多いかもしれませんが、まったく関係ありません。 左がディラン・トマスによる「リア王」の朗読(Caedmon TC1158)。右が「UNDER MILK WOOD」の自作自演。 2枚組(Caedmon TC2005)。聴いてもさっぱりわけわからんが、イングリッシュ・アドヴェンチャーのように 妙に引き込まれるところはある(1回しか聴けなかったが)。版画のジャケが美しい(それだけかい!)。 <ねこねこさんのキンクス・コレクションより> 当時一体何人の人が買ったのだろう?(見本盤の方が多かったりして)。 「石鹸歌劇」の日本初版帯付き。 紙ジャケ同様、ちゃんとレコードは左側(見開き手前)から出し入れする。 日本盤シングル三種。左から エイプマン/ラッツ(コロンビア LL2424Y) 二十世紀の人/骨と皮(VICTOR SS2150) ヴィクトリア/Mr.チャーチル・セッズ(コロンビア LL2328Y) 「エイプマン/ラッツ」は英同様、MONO。ガッツのある音がカッコいい。 「二十世紀の人」は米リリースのカップリング。 「ヴィクトリア」はなんといってもジャケが最高である。 ねこねこさんはこの3枚まとめて、最近ネットのオークションで落としたそうで。 で、3枚で2000円!!?って、ケタが一つ違いませんか?ねこねこさん。 ね:いやぁ、これは最近の幸運なことの一つで。これでしばらくはレコード買いで多少失敗してもトータ   ルで十分もとがとれると思うんです。 やはり好きで集めている人の所にはこういうのがやってくるんですよね〜。 あやかりたい人はねこねこさんのHPでも拝みにいってみてください。 ねこねこさんのHP、Deadfunnyへ <と、いうことで....> S:あ〜っと、聴いた聴いた。キンクス、けっこう聴きました。   結局ず〜っと2人きりでしたけど、いかがでしたか、ねこねこさん。 ね:いやぁキンクスはこういう高級オーディオより、昭和30年代の家庭用ステレオセットが似合ってますね。   今度は是非それで聴き比べてみたいなぁ、ラジカセとかで。 S:そ、それでしめますか? やはり....。 ということでキンクスらしくしょぼしょぼと終わった試聴会。 キンクスの紙ジャケは完璧じゃなくて、色々問題もあるけど、愛すべき紙ジャケだと思いました。 やっぱビクターさんいには感謝したいと思います。 一応新規リマスターだし、初期のシングルジャケは素晴らしいし、なにしろキンクスを紙ジャケにしたっ てことで保留していた評価は5にしたいと思います。 (なに〜、甘いだとぉ〜! みんな来なかったんだから、文句いうなよ〜>探検隊ALL)
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