PINKFLOYD
比較検証&試聴会レポート
ピンクフロイドの道はプログレッシヴの道なり その2
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いやぁ、もはや12月、めっきりさむくなってまいりました。
試聴会開催から半年あまり、な〜んでこんなにUPが遅れちゃったんでしょうねぇ。
まあその理由はオイオイ明らかになっていくと思います(怠慢だろ?)

ではいって見ましょう、「狂気」3000万枚の頂点にたつのは!
(え〜ちなみに、この3000万枚というのは1990に発表されたワールド・ワイドのセールスが3500
万枚を超えたという数値をもとにしております。最近よくみかける1500万枚は米RIAAの1998
年時における認定セールス数です。ま、この業界、話半分が当たり前なんで、どっちでもいいか
な、と・・・)。

The Dark Side Of The Moon/狂気
左上から(末尾の<>内はご提供者)
1.CD:JP 紙ジャケ<隊員W>
2.CD:UK EMI 20th Anniversary Edition CDDSOM20(1993 92remaster)<隊員S>
3.CD:US MobileFidelity UltraGoldCD UDCD517<舞>
4.UK Harvest SHVL804(73年3月24日 見開き/2poster&2sticker 黒/青EMI RECORDSレーベル/Matrix3/4)<舞>
5.UK Harvest SHVL804(見開き/2poster&2sticker 黒/青EMI RECORDSレーベル/Matrix6/4)<隊員Y>
6.US Harvest/capitol smas11163(見開き/2poster&2sticker)<隊員S>
7.UK EMI/Harvest SHVL804(90'Sバーコード付き再発 見開き/黒/青EMI RECORDSレーベル/Matrix11/11)<隊員S>
8.JP EMI EOP80778(見開き/2000円帯)<エンブリオ老師>
9.UK Harvest Q4SHVL804(73年10月 見開き SQ Quadraphonic)<舞>
10.JP EMIF-97002(高音質プロユース盤 2800円 見開き)<舞>
11.UK EMI/Harvest EMI100周年記念盤 LPCENT?(1997,見開き/Remasterd from Original Master,Heavy weight virgin vinyl)<ノイ>
12.US MobileFidelity MFSL1-017(1979 見開き)<隊員S>
13.US MobileFidelity UHQR1-017(Ultra High Quality,Limited Edition)<舞>
14.East Asia? EMI/Harvest SHVL804(見開き/黒Gramophone rimレーベル)<はみる>
(また最初のCDは1984年8月に発売されたCDP 7 46001 2(MADE IN JAPAN)で
ドルビーかけたままCD化されてしまったもののようです)

さ〜て全14種も集まってしまった。えっ、3000万枚ないじゃないかって?そりゃそうなんです
が、巷で高音質といわれている「狂気」はほとんどここにあるのだ。で、どうやって聴き比べ
りゃいいんだ?考えた末、トーナメント方式でいくことになりました。

まず休憩中にかけていた6のUS盤。誰も見向きもせず、あっそう、てな感じでいきなり予選落
ち。なんかモシャモシャした音です。各2種のポスターとステッカーはついていますが、ピラ
ミッドのポスターは英盤の青に対して緑。メンバー写真のポスターは英盤の横使いに対して縦
使いとなっています。しかしなんでわざわざ変えたんでしょう?

こちらはそのピラミッドのポスター。下の緑が米盤。本来のコンセプトは月明かりの夜のピラ
ミッドなんで、緑は変だと思うんですが。英米で変えないといけないという流通上の判断でも
あったんでしょうか。
8の日本盤は豪華なブックレットにピラミッドの写真が掲載されています。音は他のタイトル同
様、中高域と中低域がギシッとつまっている感じで伸びがありません。初版はメンバー写真な
しの定価2000円帯。全1曲40分の大作と書かれています。そうだった、このアルバム、日本で
は全1曲だったんですよ。なお初版のジャケに印刷ミスがあり、表ジャケのプリズムとスペク
トラムがくっつかないで離れちゃっているとの話があります。要するに裏ジャケと同じになっ
ているとのこと。真偽のほどはわかりません。

9の4チャンネルSQ盤はちょっと聴いてみたかったのですが、2チャンで聴いても変なだけ、
との持ち主の舞さんの意見もあり割愛。
14はSHVL804で英盤と同じ品番。Gramophone rimレーベル!しかもMATRIXに枝番の数字なしと
いうことで、すわ英初版か?とみんな色めきたったのですが、ジャケをよくみるとマレーシア
などと書いてあり、EMI系によくあるEAST ASIA盤であることがわかったので割愛。
でも英国プレスの輸出仕様だったかもしれず。聴いてみればよかったなぁ。

4.5.7はどれも品番が同じ英国盤ですが、よりマトリックスの若い(初版に近い)、舞さんの盤
を選択。他の盤は試合放棄となりました。
14はEMI100周年記念盤。このシリーズは評判が悪いものが多く、また「原子心母」の時に聴
いた97リマスターLPと同じでしょうということで、ぬかそうよ、てな意見が出たのですが、
持ち主のノイさんいわく、
EMI100の中でもこれはいい。オリジナル・マスターからリマスターしてるし、音の傾向もU
Kオリジナルといっしょである。とのこと。そういえば中古でゴロゴロあるEMI100シリーズ
でもこの「狂気」はなかなか見かけません。てなことで4のUKオリジと対決。

4.UKオリジ VS 14.UKEMI100周年97リマスター
たしかに同じ傾向の音質。しかしUKオリジが高低域に果てしなく自然にのびていくのに対し
てEMI100は悪くいえばドンシャリ。イコライジングの後がありあり。で、隊員Sがちょちょっ
とかけて、「ハイ、4のUKオリジの勝ちでしょう」と、1回表裏で勝敗を決してしまった。なん
て乱暴な・・・。
持ち主のノイさんはちょっと不満げで、「おかしい。家で聴けばもっといいのに・・・」といっ
た表情。ノイさんすいません。
(この対決は後日ノイさんのお宅で再戦となった。ここで圧倒的勝利をおさめたのは、やはり
4のUKオリジ。ノイさんもさすがに納得。そしてこの後、ノイさんは「狂気」にとりつかれて
いってしまうのだが、これはまた後の話・・・)。
ということで英盤代表は4のUKオリジに決定。

UKオリジもちょっと聴いたので、このへんでCDも聴いてみましょうということになった。
1.紙ジャケと2.20周年記念盤は同じ1992リマスター。米capitolの94リマスターがないのは残念
だが英92リマスターといっしょ、との意見もあり(誰がいったんだっけ?忘れちまったよう)。
でもまぁ聴いてみようということになるが、紙ジャケをしばし聴いた後、隊員S、20周年記念
盤を3秒で打ち切り。
「ハイ、同じ。次いきま〜す」
これにはさすがに出席者から不満の声があがる。隊員S、これ以前のレビューでさんざん聴き
比べていて飽きていた?だが実は完全に同じではない。20周年記念盤は紙ジャケよりほんの
ちょっと音がでかい。そのせいか少し張りがあるように聞こえる。でもEMIのSwindonプレ
スって国内盤と比べてほとんどそう。ビートルズやクィーンも同じで、このアルバムに限った
ことではない。まぁ、これくらいの差は4のUKオリジとの差に比べればミクロレベル。問題に
ならないレベルのものだ。
なおTrackの位置は紙ジャケで改正されている。20周年記念盤はヒプノシスによるニューアート
ワークで、プリズムは実写となりポストカードは5枚になった。
3.モービルのCDは低音がふくよかに伸びていて楽器の解像度も高く、実に、ああいい湯だなっ
て感じ。で、CD代表はモービルに(でもこれも廃盤じゃん。どうすんだ現在CD事情)。

さて予選もあらかた終わったところで、シードの高音質シリーズの対決となった。決勝トーナ
メントの開始だ。「狂気」は、ベストセラーであるだけでなく心臓の音、足音、時計やレジの
音などSEを含めた音響的な部分も面白いので、オーディオ的にももっと高音質で楽しみたく
なる1枚。そのため重量盤、高音質盤も多い。

10.日本プロユース VS 12/13.米国モービル
どちらもハーフスピードマスター方式による高音質盤。果たして決勝で英国盤を迎え撃つのは
どちらだ〜。なんて意気込んでますが、当日はわりとあっさり進みました。

ガンバレ日本代表!のプロユース。おお、っと出だしの心拍音からすごい低音で〜す。床が揺
れてます。さすがに代表、通常日本版より音が伸びてます!でもなんかレンジが狭いです。低
音も超低音まで自然に伸びているといより、ある程度のとこでストップしちゃってそこがガガッ
と突出してる感じです。高音部もそう。
これは、あれだな、普通の日本盤のマスターを使って、モービル風にハーフスピードにしたみ
たいな音だな〜。鮮度も低いです。オーディオ的な押し出しの強さはありますが、ハッキリいっ
て低音出しすぎじゃない?バランス悪いっス。
なんだと〜、いいじゃんかよ〜定価2800円のハーフスピードなんてお得じゃないかよ〜、じゃ
本家モービルはどうなんだよ〜。と皆さんの呪詛の声が聞こえてきま〜す。お手やわらかに〜
って、お手やわらかくないのはオレの方か。

「あ、このモービル、けっこう後期のヤツですね」
なに〜!?顔が青ざめる12の通常モービルの持ち主、S隊員(オレのことだよ)。モービルに
後期も前期も排卵期もあるものかー!?

「ほら、ここの上部の字体がイタリックというか、ナナメってますよね。これってけっこう後
の方で、最初はブロック体ぽいんですよ」
あるようである(涙)。知らんよ、オレは、モービルに後期があるなんて。だってお店ででも
モービルはモービルで全部タッカぁああい値段で売ってるんだもん。わけへだてなくさ。
「でもモービルって何枚くらいプレスしてたんでしょうねぇ」
「この「狂気」はかなり初期からあって、最後の方まで売り続けてたからけっこうな枚数ある
んじゃないかな〜」
うちひしがれるS隊員にムチをうちつづける舞&はみるさんのマトリクス&モービル鑑定団。
この人たちってホントにイヤ(他人のこといえないけど)。でも二人とも普通の人の想像を絶
する厳しい道を歩んでこの領域まで到達しているのである。もちろんマトリクス&モービル以
外では人間的にも素晴らしい人たちだ。誤解のないように(おまえが誤解させてんだろ!by
W)。
まぁいいや、”後期”で、申しわけないけどぉ、聴いてみましょ。と、かけてみる。音が伸び
ている。特にビロードのような低音はとても気持ちいい。レンジのバランスの良さはプロユー
スを上回る。でもなんかどうもシャキッとしない。鮮度はイマイチで、彫り、というか立体感
が期待ほどではない。やっぱり”後期”だからか?(こだわるなぁ)。
さあ、そこで登場の13.モービルのウルトラ・ハイ・クォリティ・レコーディング盤。限定版で
数千枚しかプレスされなかったもの。ロックでは他に「サージェント・ペパーズ」がある。本
日のフロイド最高値盤である。
UHQRのレーベル。ボケてるのはコピー防止ではなく、撮影に失敗したためです。
「いやぁ、でもこのUHQR、マトリクスが通常盤といっしょなんだよねぇ。だから重さとか
盤質が違うだけってもんだと思うよ。UHQR専用にカッティングしたものじゃなくてガッカ
リでしたよ」
と、持ち主の舞さん(あんた一体何枚持ってんだ?)。しかもこの超ゲキ高盤をこともなく切
り捨てている。流石だ。こうでなくては他人のモービルを”後期”と一蹴できないのだ(まだ
こだわってる)。しかも、このカッティングが通常といっしょ、なんてことは買わなきゃわか
らんのだ。ホントすごいわ。新同なら8万はするそうですからな。
でもいいから、聴いてみましょ。固唾をのむ参加者たち。それはそうだ。このUHQRを聴くの
は初めての人が多いだろう。私もだ。余裕しゃくしゃくなのは舞さんだけ。すごい。でもあたり
前か。
おおお〜っというどよめきは、起こりませんでした。確かに通常モービルとあまり変わらない音。
こころなしか低音にコクがあり、解像度が高いような気がした。これは値段による幻覚作用か、
それとも通常モービルが”後期”だったせいでしょうか(しつこいですね)。
まぁ、やはりこのへんの差は盤質の差なのでしょう。CDでいうゴールドCDのようなものか。
結局UHQRは普通のモービルの豪華重量盤という、考えてみれば当たり前の結果に終わりま
した。あんまり違ってたらモービル社の信用にかかわるもんな。で、CDで生き残っていた3
のモービルCDも基本的には同じ音ですが、レンジの広さ、音の広がりといった点でモービル
はLPの方が利点を生かしやすいようで。
UHQRが僅差で決勝にコマを進めました。

<<「狂気」決勝戦>> 4.英国オリジナル盤 VS 13.米国モービルUHQR盤
ジャジャジャーン!と、お待たせしましたフロイドファンのみなさま。ついに決勝戦です。ま
さしく下馬評どおりの組み合わせ。ブラジル対イタリアかってとこですが、アメリカ大会のよ
うにPKまでもつれこむことはありませんでした(わかんない人ゴメンナサイ)。
「もう、いいからさぁ、1枚くらい通して聴こうよ」
というY隊員の呼びかけに異議を唱える人は誰もいませんでした。そう、ここまで聴いたらみ
んなわかってしまったのです。
出だしのドックンドックンははるか低域までのび、アンティークの鐘の音はどこまでも高く響
く。”MONEY”のギルモアのADTギターがなめらかに艶やかな音色をかなで、クリス・トーマ
スがファイナル・ミックスで施した極上のエコー・トリートメントが英国の香りを漂わせる(て
いうかビートルズ/アビーロードスタジオ伝統のエコー感)。
たとえば”TIME”のイントロで、ヘンテコなパーカッションの音がしますが、わたしはずっと
米国盤で聴いていたのでその正体がよくわからなかった。で、英国盤で聴いた時に初めてわかっ
たのです。ああ、これ、ロートタムか。ニック・メイスンがヘタウマな叩き方をしていたせい
もあります。もっとビル・ブラフォードみたいにロートタム使うならそれらしく叩かんかい!っ
て思ってしまいました。ま、それがニックの良さなんですけど。でも英国盤なら直感的にわか
るほどハッキリしている。エコーバランスが絶妙なのです。
鮮度が高くて彫りが深い、この、各楽器の実在感。それと幻想性の絶妙のブレンド。もちろん
シャキっとした音像を伴った全体のバランスは自然で、無理がない。何度聴いても飽きず、自
分の体調とシンクロした時には必ず背筋に戦慄を走らせる名盤。
グスグス、やっぱり英国盤が優勝しちゃいました。どうしよう。試聴会とか聴き比べやる必要
ないじゃん、これじゃ。

参加者のみなさんも初めて1枚通して聴けて(日本的には全1曲だし)、ようやくなにか満ち
足りたもよう。ひとまずよかったよかった。
ノイさんからもコメントをいただいているのでご紹介しましょう。
「DSOTMは軒並み高音質盤がオーディオ的にもオリジナルに負けていたのが意外でした。決して
レンジの広い録音ではないのですが、この作品が最も正しく聞けるのはUKオリジナル以外には
ありません。まさしくオーラが出ていました。」
オーラっすか〜、ノイさん。まぁこんだけバケモンみたいに売れまくるにはオーラが必要です
よねぇ。メンバーにアイドル性ないのに、どうしてこんなに売れるんでしょ。アメリカで売れ
まくった理由にヤッピーのトリップ用とか、カーステでかかると気持ちよくドライブできると
か色々ありますが、やはりオーラでしょうか。
発売時に「狂気」はグラミー賞ベスト・エンジニア部門にノミネートされましたがスティーヴ
ィー・ワンダーの「インナーヴィジョン」に負けてしまいました。審査員が英盤で聴いてたら
ダントツで勝ってたかもしれません。

と、いうことで悲しいことに英国オリジナルが一番、もう比較しなくてもいいことは今までの
検証例からいってもわかってくる。そうするとどうなるかっていうと、じゃあその英国オリジ
ナル盤の中でもいいのはどれだ?って話になってきてしまうのだ。
ああ、もういやだ。もうついていけない。と思う人が普通であってこの先は読まない方がいい。
「狂気」の英国オリジナル盤なら、こだわらなければネットで12〜15ポンドで変えてしまう。
3000円しないのだ。それで十分いい音なのである。

で、そっからさらに探検隊が奥地へ進んでみると、
・レーベルがいっしょなら、マトリクスが若い方がいい
・マトリクスがいっしょならレーベルが古いほうがいい
という恐ろしいオリジナル盤の法則にぶちあたってしまうのだ。すべてはビートルマニアに端
を発することなのだが、今の英国盤探求はこの地点まで来てしまっている。
ああコワ。
それで最初のレーベルで最初のマトリクスが1stプレスというか、初版といってしまおう。要す
るに一番はじめに販売用に作られたレコードだ。これをつきとめるのが大変。それでみんな同
じアルバムを何枚も何枚も買ってしまうのだ。一昔前なら英米日独仏からはじまって色んな国
の盤を集めればよかったのが、最近は英国盤だけ!マトリクスの番号とかジャケのちょっとし
た違いですべてそろえる!な〜んて風潮が・・・(だって英国盤が一番いいんだから、そうな
んるんスよ)
ということで探検隊も試聴会のあと、さがしまくりました「狂気」の初版。
もうねぇ、ヤマのようなSHVL804がねぇ・・・。で、いってみましょう!

これが「狂気」のTRUE ORIGINAL・・・ じゃなかった、ただのオリジナルだった!!

TRUE ORIGINAL?なんだまた新しい言葉がでてきたぞ。オリジナルでも初版でもないのか?そう です。オリジナルの中でも初版に限りなく近いんですけど断定できないもので、で、普通のオ リジナルとは明確な違いがあるものです。ああややこしい。ツェッペリンのファーストでいう 青ロゴですね。じゃ、図解してみましょう。 発売は1973年3月24日 品番は英HARVEST/SHVL804で発売以来現在まで28年間ず〜っと同じ。 ま、最近のものはバーコード・ナンバーが正規の品番なんでしょうけど。 1.ポスター ポスターは最初から最近のバーコードつきまでちゃんと2枚ついたまま。これはレコードの特 典としては珍しいが、バンド側が、 「ポスターつけてくれ、その分印税削るから」 といっちまったためである。レコード会社としてはムリヤリでもつけ続けるよな。印税安くな るんだから。 ポスターのピラミッドは近景で青。米の遠景で緑よりやはりずっといい。メンバーの写真レイ アウトは横使いで、欧州盤はすべていっしょ。なので中古でたまにドイツ盤などのポスターが 入っているので注意。チェックポイントは右下の品番。 2.ステッカー&ジャケット バンド名/タイトルをジャケに入れるのをヒプノシスとバンドがこばんだため、最初の頃はステ ッカーが貼られていた。探検隊では2ndレーベルの頃までついていたことを確認した。 レーベルに関しては後述。 写真では左側に貼られているが、当然右側もある。 また最近のバーコードつきLPでもこのステッカーが復刻されているが、紙質、色味が少し違う。 写真ではわかりにくいと思うが、左側2が復刻ものでツヤ消し黒に白。右側1が初期のもので 黒の部分が青味がかっており。白の部分にも緑が入っている。ま、個体差はあると思います。 ステッカーに関してじゅんさんの調査結果をいただいた。 じゅんさんはTRUE ORIGINALの条件として、 ・表ジャケに円形ステッカーは貼ってない。 (最初はバンド側とHipgnosisの主張を容れたHarvestが少し経つとステッカーを貼り始めた。) との見解だ。 探検隊の見解は、レコード会社がステッカーを貼る理由として「誰の、なんていうアルバムか わからない→売れない」と考えた。その場合、 1.過去3作とも表ジャケにタイトル/バンド名がない 2.ステッカーが初期にしか見られない(復刻はのぞく) 3.最初から売れたので、レコード会社が途中からステッカーを作って貼るような必要はなかっ たのでは? との見解。またあまり信用できないが、英レコードコレクター誌はオリジナルはステッカー貼 りでブラック・インナー付きとしている。英国ディーラー(2名)は発売当初はステッカーつき で売られていたといっていた。 じゅんさんと探検隊の説が矛盾しない見解としては、関係者用、プレス用はステッカーなしで、 一般販売用はステッカーつきで出荷された、というのもあるかも?(このへんはうがちすぎか)。 探検隊は一応ステッカーつきを確保しておいて、実は違うとの結論が出たらはがそうかな、なん て・・・。 ジャケは初版から70年代を通じてすべすべした紙質。復刻ものは光沢がある。 裏地は白っぽいものとボール紙っぽいものが両方あったようだ。折り返しのノリしろは台形。 スペクトラムの虹の部分が7色ではなく6色なのは有名。印刷上区分しづらいということでぬか されたのはインディゴ(紺)。 見開き内側左下にレーベルクレジットがある(赤丸部分)。初期のものは字が細くて読みにくい。 基本的に青色だが、復刻ものは白。 もちろん英盤ならMade and Printed in Great Britainという表示があるはずだ。 3.ブラック・インナー けっこうついていないのがこの黒いレコード袋。発売当初しかついていなかったようだ。耐久 性が悪いのですぐやめちゃったのだろうか?もちろんこのアルバムのためのものではなく、汎 用袋。同じEMI系のアップルの黒袋などで代用できそうだがなかなかうまくいかない。レー ベル部分が丸くくりぬかれており、さらに保護のため内側に透明ヴィニールが貼りつけてある。 当時としてはけっこう高級な内袋だったのではないだろうか。 袋の左下にPATENTナンバーが、右下にレーベル/内ジャケ同様Made in Great Britainと記され ている。よくあるMade in England表記でないところが悩ましい。 表記なしで丸くくりぬかれていないブラック・インナーも見たが、上記の黒袋がcompletely original といったイギリス人を一応信用しておきましょう。とにかく黒い袋であったことは確か。 4.レーベル さて、問題のレーベル。これがトゥルー・オリジナルと通常のオリジナルを分けるポイントと なっている。この特集のその1でもさんざん書いたが、フロイド(ハーヴェストなどのEMI 系レーベル)は73年のはじめまで、レーベルのリム(外周部分)の表記がTHE GRAMOPHONE CO LTD で始まる。その後この部分はEMI RECORDS LTDに変わる。この「狂気」も初版はグラモリム だといわれていた。しかし、試聴会でも誰も持っていなかったし、わたしらも見たことがなかっ た。中古レコ屋で1stレーベルというふれこみで売りに出されていた、との情報もあったが、話 だけではしょうがない。とりあえず現物確認をしょうとさがしてみたのである。 最初はまぁ、別に見つかんなくてもいいや、なんて思って気軽に英国のディーラーに聞いてみ る。 「おまえのいってることはよくわからんが、オレは発売されてすぐ買った。これが初版だ(英語)」 と豪語していたヤツは、届いてみたらEMIリム。 「日本人のいうことは細かすぎてよくわからんが、確かにレーベルにグラモフォンと書いてあ るぞ。これが君のいうグラモフォン・レーベルだろう(英語)」 といって送ってきたものが、またまたEMIリム。確かにレーベル左上より(だがリムではない) にグラモフォン表記があるが、これは常にあるんだよ。ず〜っとあるの。トボけやがって〜、 と、このへんからだんだん意地になってきた。もう、見つかるまでフロイド後編おあずけだ! その他の比較検証もフロイド終わってからだぁ〜状態に突入してしまった。 で、見つけました。見つかる時はあっさりみつかるもんだな。 こちらグラモフォンリムの1stレーベル。クリックで拡大。 レーベル下部センターにMade in GT Britainとあるのもポイント。 こちらEMIリムの2ndレーベル。拡大して見て欲しいのだが、2ndレーベルの特徴はMade in GT Britainが2回書かれていること。たぶんセンターのものは1stレーベルの消し忘れだろう。こ れがちゃんと消されたのを便宜上3rdレーベルとしましょう。2ndレーベルは単なるミス・レー ベルの可能性が高いが、一応存在してるもんで。それに後年このミスしてるレーベルで復刻さ れてしまうのだ。 1stと2ndレーベルのリム部分拡大。ね、ね、グラモリムでしょ?ちゃんと存在いたしました。 前述の英ディーラーの言葉を信じるなら、ほとんど初回出荷分のみか、もしくはその時点です でに2つのレーベルが混在していたかもしれない。イギリス人でもあたりを引いた人は少ない かも・・・。発売が3月24日として、4月からレーベル表記が変わったのなら、1週間の間だけ の初版である(そんなにスパッと切り替わらないと思うが)。 <追記 01/12/25>UPしてみたら、英国のフロイドマニアから、1stレーベルはちがうよ〜ん とのメールが!得てしてこんなもんよね。ということで、1stレーベルは探索中。 Solid Blue Triangleという日本版によく似たレーベルらしいです。 やり直し!今度こそこれが、TRUE ORIGINALだ! 5.ステッカー ステッカーも常に2枚ついている。ステッカーが貼り付けてある用紙も何種類かあって、きっ と、初版はどこ製とかあるんだろうけどさすがにどうでもいいか。 え?で。マトリクスはどうしたかって?あわてない、あわてない。マトリクスといっしょにも う一つの検証課題を見ていこうと思う。 マトリクス&両開き? それは紙ジャケレビューで「けしからん!」といってしまった見開きジャケが両側開きかどう かという問題。「狂気」のUK盤は見開きの表紙側が折り返して閉じられているタイプでなく、 切り落としでノリ付けして閉じてあるタイプ、と思っていて、それで紙ジャケがノリ付けされ ておらず、不様にパカッと開いていたため、いちゃもんをつけたのである。 赤い部分が閉じているはず・・この写真じゃさっぱりわからん だがそこで、たまさんから「私のはマトリクスがA3/B3だが、表紙側が紙ジャケ同様開いてい る」とのメールをいただいた。A3/B3はかなり初期、いやいや発売直後の盤である。これはいか ん、調査しないとホントにいちゃもんになってしまう。 ヒプノシスに聴いてもどうせ、「ンなことどっちゃでもいい」といわれるに決まっているし、自 分たちで見るしかないな。 ということでとにかくいっぱい見てみた。探検隊は中古レコード屋をやってるわけじゃないので 限界はあるが、その結果は以下の通り。マトリクスといっしょに見ていきましょう。 <追記 01/12/25>上記Solid Blue Triangleの発見により、とりあえず一つずつ順番を繰り下 げました。これで、よく英オリジナルといわれて売られているのは4番目のレーベルというこ とに!ああ! 1stレーベル(Solid Blue Triangle,Gramophone Rim,1GT.BRITAIN(Center),Miss Label?)  1/1 片開き(じゅんさん所有。これが初版。)  2/2 片開き  1st→2ndレーベル(Blue&Black,Gramophone Rim,1GT.BRITAIN(Center))  3/2 片開き  3/3 片開き 2nd→3rdレーベル(Blue&Black,EMI Rim,2GT.BRITAIN(Center&Right) Miss Label?)  3/3 片開き2枚 3rd→4thレーベル(EMI Rim 1GT.BRITAIN(Right))  3/3 両開き(たまさん)  3/4 片開き(舞さん 3rdレーベルかも?)  5/5 片開き  6/4 片開き  7/6 片開き  10/11 両開き  11/10 両開き2枚(このMatrixはもっと後かもしれません) 4th→5thレーベル(Late70`s Blue&White)  70年代後半。この辺で白地に青の再発レーベルあり 5th→6thレーベル(Late80`s to 90`s? Same as 2nd Label=Blue&Black,EMI Rim,2GT.BRITAIN(Center&Right))  11/11 両開き2枚 (MATRIX3/3のものは、2nd/3rd/4thの3種類のレーベルにまたがって存在することが確認された) 5th,6thのところはちょっと怪しいです。5thは白地に青の再発レーベル。6thはバーコード付き の復刻LPで3rdレーベルのGT.BRITAIN表記が2つのタイプを復刻しています。 また同73年10月に出た4チヤンネルSQ盤も3枚見ましたが3枚ともとじていました。これらの マトリクスは1/1と2/2です。 ああ、つかれた。東芝EMIさんの担当者が、「いえいえ探検隊さん、あれであっているので すよ」と神の御言葉をかけてくれたら楽だったのになぁと思ってしまいました。 結論としては、まぁ当時の英盤、工場でノリ付け忘れたのもあるでしょうし、ノリがはげちゃっ てパカッと開いたものもあるでしょうが、 ・基本的には閉じていた、 もしくは ・どっちでもいいが、1枚モノだし、紙ジャケは閉じていて欲しかった との見解を示しておきたいと思います(ああ、終わった、悪夢だったな)。 ジャケ片開きに関してじゅんさんの調査結果をいただいた。 じゅんさんはTRUE ORIGINALの条件として、 ・見開きジャケの片側は閉じている。 (ポスター2枚とステッカー2つをレコと一緒にしまうと膨らんでしまうために途中から両開 きにしたということみたいです。ちなみに私の家にある狂気は片側閉じています。そして閉じ ている方はのりしろがついている(逆フリップバックというのでしょうか)ので、のりを付け 忘れたということはないのでは?と思っています。) との見解。探検隊の持っているものにはのりしろがついていないジャケもあるが、説としては もっとも信憑性が高いと思う。だから、閉じてていいのだ、きっと。 肝心の音質はご想像の通り、マトリクスが若いほど鮮度が高く、音の彫りが深く張りがありま す。絶対値でいうとマトリクスが5くらいまでは極上といえます。 しかしまぁ、内容あっての音質ですからね。わたしなんかず〜っと予選落ちした米盤聴いて満 足してたし、最近は「エコーズ〜啓示」をカーステで聴いてご機嫌ですから。初めて聴く人は 紙ジャケで十分ですよ。もっといい音で聴きたいと思ったら、2枚目は英盤、でその後は自分 の好みを追求していけばいいのではないかと思います。 日本版と英プロモ紙ジャケ「ECHOES 6TRACK SAMPLER」(EMI CDLRL054) さすがに「狂気」はもう聴きたくないと思っていたのですが、しかし、このアルバムにはさら なる深淵があることがわかってしまった。カンベンしてくれ〜。 その苛烈なるダークサイドについては、下記「ノイさんのクアドラ奮闘記」で!! てなことで、試聴会の会場に戻りましょう。 ====================================================================== シド・バレット及び編集盤 左上から(末尾の<>内はご提供者) Syd Barrett/The Madcap Laughs 1.UK Harvestオリジナル SHVL765(70年1月 コーティング・見開き Gramophoneレーベル)<じゅん> 2.UK EMI/Harvest EMI100周年記念盤 LPCENT?(1997,Heavy weight virgin vinyl)<ねこねこ> Masters of Rock Vol.1 3.Holland Columbiaステレオ BEST OF PINK FLOYD 5c058-04299(1974 Norman Smith Remix for true stereo)<ねこねこ> Syd Barrett/Barrett 4.JP Odeon初版?<ねこねこ> Picnic 5.UK Harvest SHSS1/2(70年 Autographed by Storm Thorgerson)<ねこねこ> 「狂気」をイッキ聴きして気がぬけたのか、みなさんしばし休憩タイム。この間をぬって隊員 Sはこそこそと関連もの、編集ものを聴いている。 じゅんさんの「帽子・・・」はとてもきれいで、しかも1U。かけてみると、いいんだ、これ が。シドの才能はやはりLPで聴かないと、としばし聴きほれる(ちっちゃい音でね)。邦題 は最初「幽玄の世界」で「気狂い帽子の舞踏会(だっけ?)」とかあってその後「帽子が笑う、 不気味に・・」になったと思う。紙ジャケは重厚な出来だが折り返しまでは再現していない。 また音は今までのCDからボーナストラックをぬいたもの。 ねこねこさんからも色々面白いモノをもってきてもらった。3のヨーロッパのベストは、初期の シングルの編集版。1974年リリース。最初のプロデューサーのノーマン”ハリケーン”スミス がトゥルー・ステレオにリミックスしたものだ。ほとんどのシングル曲はこのLPではじめて ちゃんとしたステレオになったのだ。オリジナルはドイツの Masters of Rockシリーズ盤とい われているが、ジャケがつまんないのでこのオランダ盤の方が人気がある。シド(?だよな) が写ってるし。ちょっとだけ聴いたがさすがフルステレオミックスの原盤。レリクスよりいい 音に感じた。再発ジャケではおサイケなジャケになった。あろうことか「おせっかい」の内 ジャケの写真を着色して、しかもギルモアを無理やりシドに変えてしまっている(いいのか)。 4は日本盤で裏ジャケの解説が楽しい。 5のハーヴェストのサンプラーは紙ジャケ化が流れちゃったもの。で、なんとヒプノシスのス トーム・トーガソンのサイン入り。今回のエキジビジョンでのクリニックでもらったそうな。 いいな〜。フロイドの曲は後に「WORKS」に収録される”エンブリオ”だが、なんかラフ・ミッ クスを無断で収録したとかなんとかで問題になったそうで。 うーん皆さんいいモノを持ってらっしゃいますな、なんてまるでジャズ批評誌の岡村氏のよう な言い方になっちゃってますけど。 すいません、上のクリニックは間違いでした。ねこねこさんから詳細をいただいたので、訂正 とともに掲載します。 「ストーム・トーガーソンに会ったのは、展覧会スタート前日のレセプションでの話でした。 「じゃあ、これにお願いします・・・」と僕が「Picnic」を取り出したときは、驚いて周りの お友達を集めて「おーい、こんなの出てきたぞー」ってな感じで喜んでくれました(っていう か「ホントにこれにサインしていいのか? Are you serious?」って何度も確かめられましたけ ど・・・でもそこまでの激レアでもないですよね?)」 どうもどうも。いずれにしろいいよな〜 Relics/レリクス〜ピンク・フロイドの道 左上から(末尾の<>内はご提供者) 1.UK Starlineオリジナル SRS5071(71年5月 テクスチャー・カバー DeepGroove?)<隊員Y> 2.UK Starlineオリジナル SRS5071(71年5月 テクスチャー・カバー)<ノイ> 写真とるのを忘れた「レリクス」(ごめんなさ〜い)。写真は1のUK盤。 で、1も2もどっちもオリジナルみたいでマトリクスも同じなのだが、1の方がDeepGrooveという 円周上の溝がレーベルに刻まれているもの。 真ん中へんのへこみが問題みたい 「ディープ・グルーヴの方が溝の彫りが深いぞ」、「しかもジャケのテクスチャーの感じが違う」 などと達人の方たちが比較を開始。 溝を見比べるだけでわかる? で結局どうなったかよくわかんないけど、結論はでたようです。音かけなくても、いいのか? ちなみにこのベスト、日本版は見開き(赤盤あり)、アメリカ盤は4つ目の化け物風カン・オー プナー、オーストラリア版はコインのジャケットだった。ノイさんにもってきてもらった97年 のリマスターLPは英盤のイラストを実体におこしたもの(現在のCDも)。写真とれなくて スイマセン。どうでもいいわけじゃないんすけど、このベスト、英盤でも音悪いんだもん(も ともと疑似ステの曲多いし)。 ====================================================================== Wish You Were Here/炎 左上から(末尾の<>内はご提供者) 1.UK Harvest SHVL814(1997 リマスター)<ノイ> 2.US Columbia ハーフスピード初版 HC-33453<舞> 3.US Columbia PC-33453<ノイ> 4.UK Harvestオリジナル SHVL814(75年9月 ステッカード・ブラック・ビニール/インナー/ポストカード)<隊員Y> 5.JP Columbia初版 SOPO100(ステッカード・ブラック・ビニール/インナー/ポストカード/ポスター)<隊員S> 1.CD:JP 紙ジャケ<隊員S> 2.CD:UK 紙ジャケ<隊員Y> 3.CD:US MASTER SOUND COLUMBIA CK64405 GOLD DISC<ノイ> Y隊員の愛する「炎」。最初は青黒のヴィニールにくるまれて出荷されました。2、3の米盤 では何故か燃えてる人がふんぞりかえってます。アメリカ人は握手する時ふんぞりかえる、と いうヒプノシス特有のブラック・ユーモア?燃えてる方の役者のギャラが500$、燃えてない方 は250$だったそうで。妥当なとこかしら。また裏ジャケのコゲあとも各国盤で少しずつちがう ようです。 ジャケ全体の構成はデータベースのレビューを見てもらうとして、紙ジャケの日英の違いは、 英紙ジャケの方がたよりな〜いヴィニールにつつまれていて、色も英盤らしく黒に近い。英オ リジナル通りポスターはついていません。日本の紙ジャケは日本版同様ポスターつきです。 最初の日本盤は米盤に「炎」ステッカーを貼って出荷されたとのことです。 米のハーフスピード盤には品番の違う再発(HC-43453)があります。また米国盤のCDには93年 のSONY/SBM盤(CK33453)、97年の記念盤(CK68522)がありました。 音質に関してはまたまたノイさんに語ってもらいましょう。Y隊員はピンクフロイド哲学に入 っていくので割愛(それはそれで面白いんだけど)。 「WYWHに関しては あの時はハーフスピード盤の鮮明さ、ダイナミック感が強く印象に残りま した。それくらい他の盤との差があったように感じました。 ハーフ・スピード盤のレーベル  しかし、再びUKオリジナル盤を通して聴き比べてみると、この作品の本質は鮮明さやダイナ ミック感とは違うのではないかと思うようになりました。  シドが壊れてしまったことへのメンバーの深い悲しみ という意図がもっとも正しく表現さ れているのはやはりオリジナル盤です。オーディオ的にビシバシ出てくるのはこの作品の意図 とは別のベクトルのものだと思います。深く暗く沈んだような表現はオリジナル盤独特のもの です。」 ノイさん、どうも。録音中、スタジオにシドがいたという話は有名です。Y隊員はシドの影、 狂気への接触を感じる最後のフロイドといってます。わたしは狂気というよりもブルージーな 部分にシドの影を聴いてしまいます。 ま、とにかくこのアルバムに関してはハーフ・スピード盤がけっこうよかったです。 あんまりUKオリジナルばっかりいいとつまんないし。 ただし、日本のハーフ・スピードは注意。はみるさんによるとウソだそうで、米国通常盤のマ トリクス。ハーフスピード盤のマスターではないとのこと。なんじゃそりゃ。 当然音はふつうの米盤なみ? ====================================================================== Animals/アニマルズ フロイドは「炎」までじゃ!というオールド・ファンのY隊員のせいでアニマルズは試聴せず。 でもけっこう紙ジャケの出来はいいです。 USの8トラックテープ版のみPIGS ON THE WINGのPART1と2をギターソロでつないだロング・ ヴァージョンが収録されていたそうです(米COLUMBIA/JCA34474)。 ギターソロはスノーウィー・ホワイトによるもので、同ヴァージョンは95年に出た彼のアルバ ム「ゴールドトップ」(1995)にも収録されたようです(ただしリミックスとのこと)。 またこの試聴会の日はなんと、ねこねこさんがバターシー発電所への新婚旅行から帰ってきた 日でもありました。おめでとうございます!ヒューヒュー!でも、ハネムーンがそんなとこで 大丈夫?(本来の旅行先はイギリス。発電所はついでによった、のですね) その時の写真がこちら〜。見よ21世紀のバターシーを。 ====================================================================== The Wall/ザ・ウォール 左上から(末尾の<>内はご提供者) 1.CD:US MobileFidelity UltraGoldCD UDCD2-537(1990)<ノイ> 2.UK Harvestオリジナル SHDW411(79年11月 写真はステッカー紛失/Matrix4/5)<隊員Y> 3.US Columbiaハーフスピード HC2-46183<はみる> 4.CD:JP 紙ジャケ<隊員W> 個人的なことで恐縮だが、わたしはこのアルバム、紙ジャケではじめて買った。それまでは借 りたLPをテープに落として聴いていた。映画は公開時にオールナイトで見て、しかもベータ とLDで買っていたので映画の方がなじみがある。ジェフ・ポーカロのドラムはやっぱいいな ぁ、というのが主な感想(フロイドファンのみなさんゴメンナサイ)。 探検隊プログレ担当のYは「炎」までの人なので、ここもノイさんにまとめてもらいましょう。 「これは意外にハーフ・スピード盤が良くなかった。オリジナルがバランスがよかった。モー ビルCDが独特の音作りでこれはこれで楽しめた。低音部の厚みは凄い。 しかしロジャーの根暗な人柄が正しく?出てくるのはオリジナル。モービルCDもオーディオ 的には凄いと思いますが、アーティストの意図した表現とは違う気がする。 フロイドの場合 ある種の暗さが表現できるかというのが重要なファクターだと最近思うよう になってきました。 決して手放しでオリジナルを良いというつもりはないのですが、結局そうなってしまったとい う・・・」 ということで、ぜ〜んぶまとめてもらっちゃいました。そうなんですよ。あんまりUKオリジ ナルばかり勝ち続けるとなんかイヤなんですけど、聴き比べると結局そうなってしまうという。 隊員Sと隊員Yはよくブラインドで聴き比べるのですが、結果は同様。 ああ、いいよなぁイギリス人は。こんな悩みないんだろうなぁ。でも原盤衝撃度は味わえない ぞ。あれは日本盤やCDを長年聴いてきた日本人の方が楽しめるのだ。 ちなみにヘリコプターのSEは後にケイト・ブッシュの「愛のかたち」(1985)でも使われた。 「ねえ、デイブ、なんかいい音ないかしらん」 「ウォールのやつもってこようか?」 「え〜?ロジャーに怒られないかしら」 「ダイジョーブ。あいつもうフロイドじゃないもん・・・」 ====================================================================== 総括 紙ジャケは重厚なつくりでよくできていたが、音質的には次のリマスターに期待か。オススメ は「アニマルズ」と「時空の舞踏」(オイオイ)。まだ買えると思います。 また試聴会に供出された日本盤のことでノイさんがきづいたことがありました。 「ファーストから原子心母までの日本盤にはJISマーク(日本工業規格)の刻印がありますが、 不思議なのは私の持っている原子心母とおせっかい日本盤のJISマークはどちらも塗り潰してあ ること。私の盤はどちらも黒盤ですが、今日拝見した原子心母までの赤盤にはしっかりJISマー クがあります。どういうわけかおせっかいの赤盤のJISは黒盤と同様に塗り潰してありました。 おせっかいの東芝EMI社名変更後のセカンドプレスも同じマトリクスですがこちらはJISが塗り 潰されていません。 これが何を意味するのかまだ何も判りませんが ちょっとしたミステリーでした。」 ん〜なんでJISマークぬりつぶしてたんだろう?規格外だったのかしら? わたしらもよくわかりませんが、ま、こうした謎を残しつつも無事試聴会は終了。 なんとかウォールまでたどりつくことができました。 こちらの不手際で時間配分が悪く、また6月なのに暑い日でもあって参加されたみなさまには 苦行をしいる結果となりました。ま、これもフロイド、ということでご容赦ください。また気 前よく場所と機材を提供してくださったDANA様にも感謝いたします。 んでこの後はみんなでビールをのみにいったと。いやはやプログレおやじ同盟のパワーはすご いぞ!まけるな、プログレ以外のおやじ同盟(ないない)。 ====================================================================== ====================================================================== しかし、話はこれで終わらないのだ。ネヴァーエンディングなのだよリマールくん。 掲示板でかわされた4チャンネルの話題に端を発し、「狂気」にとりつかれた男が....。

「ノイさんのクアドラ奮闘記」

クアドラっていっても昔のマックじゃないぞ〜。もう読み疲れたからくだらないこというなよ 〜、っていうなよ〜。オイラも書きつかれてマジメに書いてられないんじゃ〜。 「ノイさん奮闘記」っていっても本人まさかこんなタイトルになってるとはまったく知らない んだよ〜ん(コワレテル)。 クアドラとは70年代の中期にいっせいを風靡した4チャンネルマルチ再生のことですね。 4チャ ンネル用に別ミックスされたものも多いのです。中でも「狂気」は昔から話題にのぼることが 多かった。なぜかというと、 1.ライブで鍛えられた4チャン  ライブでこなれてからスタジオで録音するというのが、昔のバンドのやり方でした。フロ  イドは原子心母の頃からライブでマルチチャンネルシステムを試しており、意欲的でした。  SEはともかく演奏的にはライブで熟成されたマルチチャンネルなのです。 2.アラン・パーソンズの監修  特に「狂気」の4チャンはアルバムのエンジニアのアラン・パーソンズが監修したものです。  他のアルバムのようにレコード会社が半分勝手に4チャンネル化したものとは違うようです。 ということで、どうです?4チャンに興味がない方も聴いてみたくなったのではないでしょうか。 もちろんクアドラMIXの具合も気になります。 英SQ盤の内袋。なんか方式が書いてありますが、英語なのでチンプンカンプン 4チャンネルの方式としては、大まかにいって 1.SQ 2.RM(QS) 3.CD−4 と呼ばれるものがあるようです。 ではまずわたしもよくわからないので、基本的なことをノイさんに教えてもらいましょう。 基礎知識  SQとRMはどちらも4-2-4方式(4つのディスクリート音源、記録媒体が2ch、再生が4 個のスピーカー)ですが、CD-4も含め、それぞれの方式の技術的な特徴を書いておきます。 SQ方式: 1.フロント左右チャンネルの分離は大変優れている 2.フロント片側だけに記録された音はリアの両方に同じレベルで漏れる 3.フロントセンターとリアセンターは原理的に分離できない 4.通常の2chシステムで再生した場合、音が中央に集まる *1〜4より フロントチャンネルの分離を重視した方式と言える  設計思想はリアはあくまでプラスα的な扱い 5.デコーダーで全チャンネルに位相シフターを通すため、音質が劣化しやすい 6.欧米でほぼ主導権を握ったのでソフトが多い RM方式: 1.フロント左右チャンネルの分離はSQよりも劣る 2.フロント片側だけに記録された音はリアの片側に寄って漏れる 3.フロントセンターとリアセンターはそこそこだが分離できる 4.通常の2chシステムで再生した場合、音がスピーカーの外へ広がる *1〜4より、SQよりも4chの前後の広がりを重視した方式だが、  左右も前後も そこそこの分離度なので どっちつかずとも言える。 5.デコーダーで位相処理をする必要がないので音が劣化しにくい 6.SQに対してソフトが少ない CD-4方式: 1.完全なディスクリート方式である 2.通常の2chシステムと完全な互換性がある 3.カートリッジとデコーダーはCD-4専用のものが必要 4.超音波(聞こえない高い音)を記録しているため、   音溝の消耗が激しく、雑音が増えやすい。また寿命も短い 5.ソフトがRMよりも少なく、レコードも高価だった   (但し、日本ではRMと同じくらいのタイトルが発売された) うーむなるほど、ディスクリートってヤツの方がよさそうだぞ。このディスクリってのはきっ と独立してて分離がいいみたいなことなんだろうな。でも再生するのはたいへんそうだ。だっ てモノ自体はただのレコードなんだもんな。 で、問題のフロイドは? フロイド4チャンネル事情 タイトルとしては「原子心母」、「狂気」、「炎」、アメリカでは「ワークス」と「アニマル ズ」もあるようだ。 で、「狂気」に関してはLPは日本以外はすべてSQ仕様。日本RMはオリジナル・ディスク リートとのこと。そうか、やっぱり日本東芝盤が要チェックなわけだ。 問題の東芝4チャンネル<DC8さん所有> で、掲示板で知り合ったDC8さんにお借りすることに(こういうことがあるから掲示板やめられ ないんですよね)。でもどうやったら聴けるんだ。少なくてもスピーカーは4つ必要なわけだ。 後何がいるんだ?すると、というか若干時間は前後するが、再生に関してはノイさんから「う ちでできます」と頼もしいお言葉をいただいた。おおこれでそろったじゃないか〜。よーし、 4チャンネル聴き比べだ〜。ただしノイさんはこんなこといっちゃったためにダークサイドに落 ちていくことになるのであった。 クアドラ試聴会 ついにこの日がやってきた。2001年11月3日クアドラ試聴会。奇しくも「エコーズ」の入荷日で あった。個人宅での開催ということで、さすがに参加メンバーは件のDC8さん、ノイさん、S隊 員、はみるさん、舞さんの5人にしぼられた。
当日の機材
カートリッジ:オーディオ・テクニカ AT33PTG
ターンテーブル:YAMAHA YP-D10
CDプレーヤー:DENON DCD-DS10III
スピーカー フロント YAMAHA NS-1000M ×2(マルチチャンネルに改造)
      リア   KEF MODEL303 ×2
      フロントセンター 3DスーパーLOW FOSTEX FW-800(80センチ)
アンプ イコライザ、プリアンプ ダイレクト2段直結(昇圧トランスなし電池駆動)
    フロント マルチチャンネル3WAY(自作電池駆動)
         10W×4 MID,TWEETER
         30W×3 WOOFER,SUPER-LOW
    リア サンスイAα77 50W×2+GEQ TECHNICS SH-8075 フルレンジ
デコーダー QS:サンスイQS-D1000
      SQ:標準SQマトリクス位相シフタ3段式デコーダ(自作)
見ておわかりのように()内に気になる言葉が書いてありますね。
まずデコーダーのSQ方式用。この日のためにノイさんがせっせと作ってくれたもの。
自作デコーダー。つまみはあんまりいらないんだな。しぶい。
んでなに?もう1個「自作」ってのがありますね。電池駆動?そう、ノイさんのアンプは電池
で動いているのです。なんで?ポータブルなの?
違います。オーディオで電源にこだわると電池にいきついちゃうみたいなんです。ただし、自
分で作っちゃうなんてことは寺島さんでもやらないでしょう。まさに究極の電源?
もうすぐ200Vが日本の家庭にやってこようとしていますが、これにはかなわないでしょう。
電池で動くアンプ。でも持ち運べそうにありません。

さあて、では聴いてみましょう。クアドラ体験のはじまり〜。

写真左上が日本東芝RM盤<DC8さん>、右上がUKSQ盤、下がドイツSQ盤です。
品番などの詳細は下の方で表にまとめてあります。

とりあえずやっぱRMから聴いてみることになった。UKSQより分離がいいはずで
4チャンネルMIXがより楽しめるはずだ。RMのデコーダーはサンスイを使用。
名機といわれてるらしいサンスイのデコーダー
うわ〜これは、面白い。たしかに面白い。四方から音が分散して聞こえるのは当たり前なんだ
けど、こんな音あったっけ?みたいなのが続出。タイムのアンティークの鐘や時計なんて、な
んか増えてないか?って感じだし。マネーのギルモアのADTギターは前後に分かれて鳴って
る。レジスターリズムや「アス、アス、アス、アス...」なんかはお約束とおり、っていうか期
待どおりに分散して回る回る。大笑いじゃ〜。
マネーはもともとスタジオ・ライブっぽい演奏で、じょじょにテンポアップしていくため、回
る4チャンで聴くとけっこう快感!

でも、全体に何故かエコーがかかってなくて、ひとつひとつの音が生っていうか、奥
行きはないんですな。分離をよくするためかな?女性ヴォーカルも含め、ヴォーカル
類もとても生々しい、っていうかナマ。ギルモアのADTギターは2つにわかれちゃ
った上にエコーかかってないんで、チャチくて笑っちゃいます。
これ、しかしアラン・パーソンズがやったとは思えないエコー感ではある。

で、こんどはUKSQ盤。
UK盤のSQロゴ
アラン・パーソンズのクレジットはこのUK盤だけに入っている。
アラン、ちゃんと監修したようです
でも、他のがそうじゃないってわけじゃなくて、ただ単に通常版のジャケを流用しただけかも。

SQ盤は基本的な音はUK盤といっしょ。で、こっちはRMと違い、ちゃんとエコーがかかっ
ている。UK盤と同じエコー。四方から包み込まれる感じはとても気持ちいい。
だが、RMより分離が悪くて、あんまり回ってる感じとか、後ろからギターがおっかけてくる
感じは薄い。で、低音の聞こえるポイントがとても狭い。センターからはずれると、位相がう
ち消しあっちゃうのか低音が消えてしまうのだ。
ノイさんはそれにしても低音が出ていないので、何かミスがあったのでは、といっていた。レ
ンジ・バランスとしてはRMの方が通常盤に近いとも。また分離されたスキャットやADTギ
ターはSQでもエコーは通常版に比べて浅い。これは分離をよくするためだと思うが、いずれ
にしろRMと同じミックスから作られているようだ。

ドイツ盤はジャケに赤い線が入ってるだけで、方式はUK盤といっしょだ。

と、ここで舞さんが、「そういえばこの間の試聴会の時なかったよね〜」
といって取り出したのが「狂気」のピクチャーディスク
US CAPITOL SEAX11902<舞さん>(ピクチャー・ディスクでは他にUKのFIRST IX BOX SETのものもある)
あんた、まだ買うか?
「でもこれ、ピクチャーにしてもつまんないデザインだよねぇ」
だからなんで買うのよ〜。でもほんとに面白くないわね〜とみんな口々にいっている。
舞さん楽しそう。それでいいのか舞さん?
ちなみにデザインはヒプノシスではなく、ROY KOHARA。納得。

次にDC8さんからご希望がでた。
「すいません、ちょっとシンセ・モードで聴いてみたいんですけど・・」
と。え?なに?「狂気」ってシンセでやったヤツもあるの?と目を白黒させるさせていると、
ノイさんが何事でもないかのように
「ああ、ハイハイ」な〜んて答えてる。
なんだ?で、DC8さんがお持ちになったプロユース盤をかけ始める。

おお。2チャンネルのはずのプロユース盤が4つのスピーカから!
「これはデコーダーを使って疑似4chにしてるんですよ。今のAVアンプのサラウンドみた
いなもんですね。2-2-4と呼ばれていて、当時結構流行りました。」
とのこと。な〜んだ、そうか。よく見たらサンスイのデコーダーにそんなポジションがついて
いる。しかし、シンセ・モードっていうのかぁ。変なの〜。でもこれも気持ちいいわ。


つづいて原子心母のUKSQ盤、日本東芝RM盤を聴く(いずれもDC8さん所有)。
ん〜狂気を聴いた後だとイマイチ面白みにかける。SQもRMもいっしょで、RMだからといっ
て狂気のように分離がいいわけではなかった。どうやらイギリスからきたSQ方式のマスター
をRM再生用にエンコードしたもののようだ。ちょっとつまんないぞ。

ちなみにUKSQの初版はSQロゴが表にあったのですが、第2版で内側に変更になったとの
ことです。ヒプノシスからクレームでもきたんでしょうか?でも、それじゃSQかどうかわっ
かんないですよね。
またこのSQ盤も通常のUK盤によくあるB面がエンドレスのものだそうだ。が、確認するの
を忘れてしまった。ゴメンナサイ。


続いて炎のUSSQ盤。これもDC8さんのものをお借りした。
しかしDC8さんのレコードは、ほんとにワン・オーナーものの美品です。しかもなんかこの素晴
らしい貯蔵品を奥さんがどんどん捨ててしまうそうで。
うーむ、やはり美品を持ってる人の奥さんはちがうな(なにがだ?わからんぞ)。

で、炎だ。このアルバムは日本盤クアドラはないようだ。感じは原子心母といっしょで狂気の
あとではふ〜んって感じ。これだったら2チャンとあんまりかわらないかな(余裕ね)。

この日はその他にもスティーリー・ダンの「プレッツェル・ロジック」なども聴かせてもらい、
衝撃と笑いのうちに終わったのだ。ノイさんにしめてもらおう。

4ch盤と2ch盤の違いは分離や音質は別にしても、ビートルズのモノ−ステレオのミック
ス違いと同じように、通常の2ch盤とは別ミックスだと考えればそれなりにミックスの違い
を楽しめると思います。

原子心母と炎は狂気と比べると4chミックスの違いは少なかったように感じました。やはり
アラン・パーソンズが手を出してないということなのでしょうかね?

しかしこれでノイさんの探求は終わらなかったのだ。SQもRMもレコードを使っている限り
はやはり4-2-4。この2があるというのが問題らしい。完全真正ディスクリート、4-4-4のマス
ターが聴けるものはないのか?

「ありました、ありましたよっ」
「またなんか買ったんですか、ノイさん」
「ハチトラって知ってます?」
「デコトラなら昔のりましたけど」
(実際にこうした会話がかわされたわけではありません....)
QUAD8
8トラックテープは日本ではカセットが普及する前にカーステレオなどで使われ、8トラカー
トリッジテープと呼ばれていた。つい最近までカラオケや路線バスのアナウンス用などにも使
われていた。 LP以外のフォーマットで4ch仕様でリリースされていたものにこの8トラック
テープがある。この規格はQUAD8と呼ばれ、完全なディスクリート方式。主にアメリカで
多数のテープが発売された。

フロイドも上記3タイトルはアメリカでQUAD8テープでリリースされている。ところが、
アメリカでリリースされた狂気はどういうわけか、分離が非常に悪く、ディスクリートとは思
えないとのこと。おそらくSQデコードされたマスターをSQエンコーダを通して擬似4ch
にしたものを使用したのではないかと言われている。

イギリスでも狂気のQUAD8テープがリリースされた模様。現在ではこれが唯一入手可能な
狂気全曲のディスクリート音源である。

原子心母と炎もアメリカでQUAD8テープがリリースされている(UKは未確認。少なくと
も炎は出ていないという話です)。この2タイトルは狂気と違い、完全なディスクリート音源
を使用しているらしいが、原子心母は元のマスターそのものの出来が良くないため、分離を楽
しめる4chになっていない。

炎のQUAD8テープは優れたディスクリート4chとのこと。

カートリッジテープ以外は不明だが、1/4インチオープンリールテープで発売された可能性があ
る。
というのは、4トラック全てを使ったディスクリート4chテープの規格があって、タルの
ウォーチャイルドの4chテープなどが存在する。

「てことなんですよ」
「よくそんなえげつないこと調べあげましたね」
「ええ、なんか世界には詳しい人がいるのですよ」
「でもそんなもの入手しても聴けるんですか」
「聴けます、うちなら!」
「...........(なんでそんなもの聴けるんだろう)」
「とりあえずネットのオークションで落としましょう!」
(しつこいようですが、実際にこうした会話がかわされたわけではないです)。
まさか出品されてなんていないだろう、と思ったら、これがあるのだ。もうネットで存在しな
いものなんてないな、ほんと。てことで、完全にダークサイドに足を踏み入れた2人はフロイ
ドのQUAD8を入札しまくった。
が、落とせない。ことごとくもの凄い値段で競り負けてしまう。なんなんだ、一体。誰がほし
がってんだ?落として聴けるのか、みんな?アラブの石油王の間でQUAD8がはやってんの
か?

どうやら世界にはクアドラマニアというやつらがいて、紙ジャケ探検隊の落札をはばんでいる
ようなのだ。いや、きっと向こうはKAMI-JYAKEなんていってもわからんだろうが。

しかも肝心の「狂気」のUKQUAD8がないのだ。もはや、ここまでか。

内心ああよかった、これでダークサイドから抜けだせる〜なんて思ってた(いや、冗談ですよ
ノイさん)探検隊のもとへ、ノイさんから起死回生のメールがまいこむ。

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 DTS-CDというのをご存知ですか?日本ではほとんど知られていませんが、アメリカでは結構
流行っています。 DVDの音声ではなく、CDにDTSの5.1フォーマットがあってアメリカでは
DTS-CDがかなりの数リリースされています。 DTS-CD対応のCDプレーヤでこのCDをかける
と、 DVDのDTSと同じ5.1チャンネルでマルチ再生ができます。

 こともあろうに30年前に流行った4chのレコードやテープを DTS-CDに焼き直してサラウ
ンドを楽しんでいる奴らがいました。

 そのやり口はまずデコーダなりを通して独立した4chの音源にします。次に4ch入力の
あるサウンドカードをパソコンに入れて4トラックを24bitで取りこみます。これをDTSエン
コーダーソフトにかけて、CDに焼きこむわけです。

オランダにはCD-4からDTS-CDにコンバートするスペシャリストがいたり、結構全世界規模でリ
ンクされています。まったく呆れるやら恐れいるやら・・・ 早速コンタクト取ってみます。
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え、なに?DTS-CDは知ってるけど、だからどうしたの?コンタクトとってどうするんでしょ、
ノイさん?どこまでいっちゃうの〜〜。

しばらくしてノイさん、ついにDTS-CDを入手した。これがいったいなにかというと、完全真性
ディスクリートの「狂気」UKQUAD8をコピーしたものなのだ!!!
おお、なんと、そういうことかノイさん!でもまたしても機材がないぞ。
「買いました」
ええ〜、買ったんですかぁ?DTSデコーダー。しかももっとも金を借りてはいけないところ
から借りたようである。そう、カミさんだ。私もこれでよく地獄に落ちる。

よ〜し、ノイさんがそこまでやってくれたんだ、さあ聴きましょう、是非聴きましょう、「狂
気」のUKQUAD8!
その後もデコーダーがバグったりとトラブルが色々あったのですが、艱難辛苦を乗り越えて、
ついに真性ディスクリート「狂気」を聴くことができた。

UKQUAD8

これがすごかった。分離は東芝RMを上回り、しかもエコーがちゃんとかかっている。ADT ギターやスキャットはチャチくなくたっぷりと鳴り渡り、マネーのレジスターリズムが回ると ころなどは今までで最高。また女声コーラスがかぶさってくる盛り上がりの部分は全方位から つつみこまれるようで、背筋に戦慄がはしる。たまらん。 これを聴くと、同じミックスながら東芝RMはエコーをかけるまえのプリミックスというか、 わざわざRMにするためにエコーぬきミックスを作ってもらったのではないかと思う。 72年の1月にECLIPSEが初演された頃から、まるでこの「狂気」というアルバムは4チャンにす ることを考えてつくられていったような気さえする。きちんと計算され、構築されているのだ。 同時に入手した「炎」のDTS-CDも聴いてみたが、「狂気」ほどのすごさはなかった。 ただ、問題もあった。高音はUKオリジの通常版なみに出ているのだが何故か低音があまりで ない。これが8トラ故なのか、DTS-CDにしたせいなのかはわからない。 この点に関してはノイさんが本物のUKQUAD8を入手する日を、みんなで「入手できます ように」と祈って待とう(とても勝手)。 ノイさん、ホントにありがとうございました。いいもの聴かせていただきました。 ということで、当時最高の環境で「狂気」を楽しんでいたのはイギリス人で8トラ聴ける車に 乗ってたヤツ。しかも運転席のダディじゃなくて後部座席中央にいた次男坊クラスのガキだ! ああ、うらやましいぞ、イギリス人の子供。 こんなヤツが成長して病床にふせったりしたら大変である。 「ああ、子供の頃聴いた「狂気」が忘れられない。あれを聴けば元気になるのに」 これではいくら山岡やゆう子さんが素材を吟味して 「これだ!UKオリジナルのミント、これならきっと元気になるぞ」 と持っていっても、 「わたしが聴いた「狂気」はこんなもんじゃないよ。ちがうよ」 などといわれて途方にくれてしまうだろう。 「士郎、まだ甘いな。QUAD8を知らぬとは。それで究極の「狂気」だなどと片腹いたいわ」 ああダメだ脱線していく。

QUADRAFILE

さて、ノイさん、これ以外にも面白いフロイドのクアドラものを入手していた。 イギリスの雑誌、HIFI-NEWS&RECORD REVIEW MAGAZINEから出た4chのデモレコード QUADRAFILEである。 QUADRAFILE ノイさん所有 2枚組で、片面ずつCD-4/QS(RM)/SQ/UD-4の4種類のフォーマットで同じ曲が収録されている。 フロイドのものはマネーを収録。もちろん4種類ですべてショートヴァージョンだ。 4つの方式で収録 またCD-4/QS(RM)方式で収録した1枚目はMADE IN JAPAN。おそらく日本でしか製造できなかっ たのだろう。 アラン・パーソンズ監修によるマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」も入 ってる(エディット・ヴァージョン)。 内ジャケに掲載された当時のアビーロード・スタジオでの4チャンネル・ミックスの様子。 よくこんな状態でやってたな。 ためしにCD-4ヴァージョンでマネーを聴いてみる。けっこう分離するし面白いのだが、やはり もうUKQUAD8を聴いた後ではふーんて感じだ。 ノイさん苦心の作、フロイドQUAD一覧表はこちら こちらこれらのフロイドクアドラ版をまとめたリスト。 さて、まとめである。もう、最後もノイさんにしめてもらうしかないでしょう! 「狂気」のクアドラマスター違いですが、話を整理すると、 1.オリジナルQUAD4トラックマスターはアラン・パーソンズ監修で製作された。 2.完全なディスクリート4-4-4はUKリリースのQUAD8のみである。   (QUADリールテープが存在するかは未確認)また、MoneyはCD-4による    ディスクリートがUKのQUADデモレコードに収録されている。 3.4-2-4方式としてはSQマトリクスの各国盤LPがある。   日本版のみRM方式。当初オリジナル・ディスクリートマスターからRM化と思われてい   たが、後日UKQUAD8を聴いて、エコーなしマスター使用と判明。 4.USのQUAD8トラカートリッジテープはSQLPよりも分離が悪い。   これはオリジナルディスクリート4chマスターから作ったSQマスター   をキャピトルのSQデコーダーを通したものを使った可能性が高い。  USでQUAD8テープを出す時にディスクリート4chマスターが無かったので、 仕方なしにSQ2トラマスターからデコードしてQUAD8を作ったのでしょう。 <追加情報>(まだ聞き続けてたのか、ノイさん) 例のデコーダ不調で気にして聴いてたんですが、判り易い違いを書いておいた方がい いと思ったので追加しときます。 1.A1の冒頭、心臓のドク ドク は通常盤だとセンターから聞こえますが、4ch ではフロント左から出て来ます。次に出てくる時計のチクタクのSEは通常盤だとエコー が付けてありますが、4chでは生音でフロント右から出てきます。 2.B1のキャッシュレジスタの音はジャラジャラから始まってチーンカタカタ、バシャ (コインを投げ捨てる音)などが4chではフロント左から始まって右回りに順にス ピーカーから出てきます。これがリズムになってて4ch効果絶大です。 3.B2,B3などで使われているテープエコーを使ったエフェクト音(ヴォーカルやオル ガンなど)は4chではテープのエコー部分が各スピーカーから散らばって順に出て きます。 例えばUs and Themの冒頭、 US(生音フロントセンター) US(エコー1フロントセンター) US(エコー2リア右) US(エコー3リア左) US(エコー4フロント左) ・・・ and Them them them...同様 といった具合。 *ディスクリートは例のquadrafile盤で各方式と比較しましたが、方式で分離の差は あれど、ディスクリートに近い定位をします。東芝のRM盤でも同じような定位だった と思います。 最近、オーディオのマルチ再生への関心が高まっている。こうした素晴らしい4チャンのマス ターがあるのだからSACDマルチ、DTS-ES(マトリックス/ディスクリート)などの フォーマットで是非また商品化してほしいものだ(紙ジャケでね)。 フロイドにしても話題はつきない。紙ジャケに続き、素晴らしいベスト盤「エコーズ」の発売。 来年の3月にはウォーターズの来日もひかえている。やはりあの声でフロイドの名曲の数々を 聴きたい人も多いだろう。 ピンク・フロイドの道はまだまだ終わらないのだ(お約束のシメでしたね)。 ====================================================================== ====================================================================== 感謝、感謝 てなことでPの道はとりあえずこんなもんで。 なんか今年一年、フロイド紙ジャケについやしたような気がします。 6月の試聴会、クアドラ試聴会に参加されたみなさま、たまさんをはじめメールで貴重な情報 をよせられたみなさまに感謝いたします。また協力いただいた世界のクアドラマニアの方たち にも感謝。Thanks TOM and QUADRAMANIA. しかも、全員にノーチェックで書きとばしてしまった。 まずいとこや間違いがあれば速攻で修正いたしますのでどしどしいってくださいね〜。 eメールはこちら
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