日々のケダマ

 猫を描いたバッグや猫の消しゴムはんこやフェルトの猫を作ってはイベントに出品して売っている。

 猫のものばっかり置いているから、足を留めてくれるのもたいてい猫好き(猫飼い)の人だ。私は自分が買い物中に話しかけられるのが好きじゃないので、自分から声をかけることはめったにないが、たまにお客さんの方から「猫、好きなんですね」「猫、飼ってるんですか」と話しかけてくれることがある。

 そういうときは「そうですねー大好きです」とか「はい、2匹飼ってます」とか返事をして、ちょっとした猫談義(?)が始まるのだけど、次に「名前は何て言うんですか?」という質問が来ると一瞬言葉に詰まって「ね、猫のですか」と聞き返してしまう。

 猫のに決まっている。そのタイミングで飼い主の名前を聞く人はいない。冷静に考えたら分かるのに毎回面食らった上に「な、名前はですね、タクトと、えー、お、ヲザワ、です」と変な感じになる。

 これはいったいどういう心理なんだろう。あまり親しくない人と話すときには家族の名前を出さず「息子が」とか「妹が」という言い方をするような感じかもしれない。私には子どもも兄弟もいないから想像でしかないけど、「お子さんは(妹さんは)何て名前なんですか」って会って数分しかたってない関係ではあまり聞かないんじゃないだろうか。

 猫の名前を教えてしまったことが妙に気恥ずかしく、あわてて「そちらは何という名前なんですか」と尋ねると、もちろん相手の方は屈託なく教えてくれるので、ほっとして相手の飼い猫に話題を移す。

 猫の名前をばんばん出しまくった文章を人前にさらしておいて聞かれると困惑するなんて、どういう神経なのかと自分でも思うけど、猫の名前を尋ねられることは私にとって、いきなり心の距離を詰められたようで戸惑ってしまうことらしい。雑な猫と暮らしていても、飼い主の性格は相当にねじれてややこしい。

2008年8月11日号掲載 

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決して猫の名前が変だから
というわけではなく

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