案の定そこに書いてあった電話番号は携帯電話のものであった。
なんだ、分かってみれば簡単なこと。
"Hey, Toshi?"
"Yes, this is Toshi. I'm glad to contact you!
Where are you now ?"
という具合。
本当に出会うことができてホッとした。人と人とがいつも出会えるとは限らない。すれ違いだってありうるのだから。
彼はロンドン市内にいたので30分ほどでホテルに来てくれる。私はホテルのアイリッシュバーでエールを飲んで待っている。しかし考えてみればこれがイギリスに来てから初めてのビールだ。いつも時計とにらめっこのような行程だったから。何をそんなに急ぐ、日本人。
グレンは婚約者の女性と友人の女性を連れてきた。そのバーで1杯飲んでからパブに移動。8時近くになっていた。
グレンによるとパブゴルフというのがあるそうだ。パブをゴルフのホールに見立て、2杯飲んだらパー、1杯ならワンアンダーというように決めて、何軒も飲み歩く。
ハーフコースでもかなり酔っぱらう。そりゃそうだろう。フルで歩いたらヘロヘロだ。
1軒目で食事。イギリスの典型的な食べ物フィッシュ&チップスを注文。チップス(日本的に言うとフライドポテト。アメリカではフレンチフライと言う。アメリカでチップスといえば日本と同じくポテトチップスのことになる)にはビネガー(酢)をかける。これがイギリス風。ちなみにアメリカではあまりやらない。これにグリンピースもついている。だいたいにおいて西洋人は芋と豆をよく食べる。それにしてもフィッシュ&チップスは私にはあまり美味しくない。グレンは、Banger
& Mush。Bangerとはソーセージのこと。婚約者のHeather は、Bubble & Squeak。バブルというのは焼くときに小さな泡が出るのでそういうのだとか。
ビールはヨークシャービターの John Smiths。
2軒目。すでにお腹いっぱいでビールが入らない感じ。ハーフグラスにしてもらう。グレンはだらしないなあと笑っている。グレンは、私が持っていた日誌のノートをのぞき込んで読む。(私は旅行中いつもノートを携帯し、メモを取っていた。)そして、私が今日FOYLES書店に行ったのを知り、母親はこの近くで生まれ育ったんだと言う。母親はその書店で働いていたこともあったらしい。
彼は「これから酔っぱらったので、もう書けないなあー。飲もうぜ!!」とノートに日本語で書き込む。彼は先日まで日本にいたので日本語はなかなか上手いのだ。私が英語でメモを取っているのを見て、「ニホンジンガ エイゴデ カイテ イギリスジンガ ニホンゴデ カイテ、ヘンダナアー」と日本語で言って笑っている。
3軒目は少し歩いてShakespeare's Headというパブ。2階からシェイクスピアの人形が外に身を乗り出している。After
Shockという強い酒と、Bailey'sというアイリッシュクリーム。両方を一緒に飲む。そういう飲み方なのだ。Bailey'sは日本でも飲んだことがあるが、口当たりがいいので女性でも飲めそう。ただし弱い酒ではない。
そのパブがあるのはCarnaby Streetという通りで、グレンに聞くと、最近は店が建ち並んで観光客が訪れる場所になったとか。いい店も多いが、観光者向けに高い店もあるから気を付けろと言う。MUJIと書いてある無印良品の店もあった。
11時半。彼らは手を振りながらピカデリーサーカス駅へ降りていった。
ホテルに戻りシャワーを浴びて、それから今日も暑いので涼むためにホテル周辺を歩いてからベッドにもぐり込む。
グレンに次に会うのはいつのことになるだろう。彼はロンドンで大学院にいくことになっている。またすぐに会えるさと思いながら何十年も会えない、なんてことは人生にはいくらもある。まさかそんなことはあるまいが、という思いと、もしかしたらもう会えないかも知れないという思いが交錯する。
See you, Glenn. I'll never forget you. When you
come to Japan again, be sure to call me !
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