今、外を歩くと、09卒シュウカツで歩いている学生の姿を見かけるが、気を抜くとだめだよと声をかけたくなる。娘のK大の女子全体では、11月現在でもまだ決まっていない子がいる(決まっていても迷っている)。W大でも8月にやっと決まるなど、私大トップでも女子は簡単ではなかった。K大の就職課には現在も募集の紙がかなり張ってあり、中には大手もあるが、さすがにもう女子総合職はないようだ。2月まではまだまだチャンスはある。
「アエラ」にも書いてあったが、08年卒も決して楽ではなかった。それだけに氷河期はどれほど大変だったか想像がつく。30歳ぐらいの友人には派遣が多い。「バブル並」「売り手市場」などと言われるが、バブル時より学生数が増加しているので簡単には比較できないし、実は1000人未満の企業では4.22倍だが、1000人以上の大企業では0.77倍と狭き門は依然続いていると新聞も書いていた。業種を問わずでそれだから、業種を問えばもっと下がるわけだ。
シュウカツを始めた昨年、「このバブルで(内定が)とれなかったら、ヤバイ!」と叫んでいたゼミの男子がいたらしいが、そう簡単な話ではないのだ。それなりに苦労の連続で、メディアで報じられるのとは違う現実があった。就職バブルなどと言われるが、そんなものとはほど遠い。とくに女子は、大量に採用が出た金融、IT系以外は決してバブルではなく、高度なスキルなどがなければ誰もが大変だったと思う。銀行の総合職のような女子の大量採用は、逆にいえば大半が2、3年で辞めるからこその大量採用で、長く勤務できないというのは女性にとってきつい何らかの理由があると思う。TVでもそのあたりを特集していたのを見た。
昨年11月14日の新聞には、10月1日現在の内定率男子70.1%。女子は68.2%で5年連続改善されているとある。確かに10年前よりはずっといいのだろう。4月初めに大学へ行くと、早い内定は体育会系男子が多く、成績など関係ないということがわかる(反面、娘が内定したGの筆記試験では、人数がどれぐらいいたのかわからないが、男子はほぼ全滅というほど酷かったと人事が明かしたそうだ)。来年もそうだろうか。男子が先という傾向はいつに なっても変化しないのだろうか。男女平等など異世界のような現状が当然のごとくまかり通っていて、男子には聞かないが女子には転勤が可能かどうかを聞く。それでも昔とは違い、良い面も多いシュウカツだったと思う。それなりに女子にも期待している会社も多くなっているという印象を受けた。
07年は、さらにシュウカツバブル――と最も大々的に報道していたのは日本経済新聞系だったと思う。とくに11時からのTV「ワールドビジネスサテライト」では、何回も“シュウカツバブル模様”が放映されていた。日経新聞は株、企業系新聞だから、就職面でも再びバブルが到来して景気が良くなった!と煽って株を買わせたい、そんな思惑だろうか……。日経に限らず、他紙もその傾向は強く、TVではNHKも同じような放映を繰り返していた。結局、企業が相手であるシュウカツ状況の報道は、政治や株などに密接に影響するから、ちょっと良くなっただけでもオーヴァーに煽るのだろうか。
日本の大企業というのは全体の5%くらいだろうか、今はもっと増えているのか? 社員数も増え、ヒットしているIT企業系なども含め、ごく一部の社員にとっては景気は良くなっても、大多数の人には無関係、むしろ生活に困窮しているという声が多い。新聞は、それらを無視して、景気が良くなっている、来年――もう始まっているが――08年(つまり09年卒)シュウカツもバブルは続く、などと書き続けている。
若い人にとって働き方の選択は増えたが、逆に、それぞれの判断で生きていかねばならず、20代の若さゆえ判断ミスを冒し、それに気づいて方向を訂正しようとしても(たとえば転職など)、そこでの選択はずいぶん狭まっている気がする。転職がうまくいく条件は、特殊なスキルがあるか、輝かしい職歴があるか、そして運が強いか、だろう。いとも簡単に転職ができてしまうかのような本や宣伝を見かけるが、現実はかなり違うはずだ。
不本意に正社員から転落し、どういういきさつなのか、ついにはネットカフェ難民に身を落としてしまうケースなども見られる。若者には様々な未来がありえるようになっている。メディアの放映は、どちらかというと“困窮”か”裕福”のどちらかに偏っている。月並みな言い方だが、裕福でなくてもごく普通の生活ができるようなシュウカツ、そして若者が成長できるような未来が訪れてほしい。
2007年2月4日号掲載
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