しかし、彼女は僕以上に逸っていた。
一通りやることを終えて、酔い醒ましに寄れと言い出したくせに茶の一杯も出されないまま、手持ち無沙汰に何となく尻の落ち着きが悪いと感じながら壁に凭れて時間を遣り過ごしていたら、彼女が身体を揺すりながらラグの上を膝で躙り寄ってきた。
「最近、また太った?」
「うん……。」
「何キロ?」
「4キロ太って、84キロ。」
「凄いね。」
「うん。そういうナイトは、すごく痩せたよね。」
「5キロ。」
彼女の唇が、躊躇いがちにそっと重なった。 僕は無反応で、彼女の顔をじっと見つめた。
目を閉じて近づいた彼女の顔は、やはり観賞には堪えなかった。
しかし、僕は目を開けたまま、まだ閉じている彼女の唇を舌でノックした。待ち兼ねていたかのようにすぐさま薄っすらと開いたので、隙間から舌を差し込んで彼女のそれと絡めた。
いきなり喘ぎ声を聞いた。
僕も喘ぎそうになるのをぐっと我慢して、絡めて、絡めて、絡め取ろうとする程に、弄り続けた。そこで初めて、彼女の頭に手を廻した。廻したら、力を込めたくなった。僕よりも尚短い髪に指を差し入れ頭皮を鷲掴んでぐいと寄せると、ますます舌が絡み合った。無我夢中で貪り合い、少し落ち着きを取り戻した頃、唇を啄ばみ合った。啄ばむと、また貪りたくなり、それは無限に繰り返しても満足できないのではと思われるほどに焦燥感を伴い、長々と続いた。
二人とも、息が切れていた。
2009年5月18日号掲載
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