来る6月6日&7日の2日間、神戸映画資料館にて【極北の自主映画が来る!】と題されたインディーズ映画上映イベントが開催となる。
ここで気を惹くのは、何と言っても「極北」の2文字だ。「極北の自主映画」とはいかなるいものか? 「傑作」とも、「頂点」ともちょっと違う。定められた規範からの逸脱を予感させるこの言葉からは、得体の知れない不穏さを放ちつつ、同時にとてつもなく魅力的であるという、魔力めいた引力が感じられる。
今回上映されるのは2作品。映画批評家としても活躍する葛生賢監督の『吉野葛』と、映画愛に満ちた木村卓司監督の『シネマトグラフ オブ エンパイア』。上映当日は吉野・木村の両監督の来場も決定! 舞台挨拶&トークショーを開催するとのこと。関東(東京)と関西(滋賀)が誇る2人の才人が、神戸の夜に銀幕という魔法をかける!
極北の自主映画が来る! 日時:2009年6月6日(土)・7日(日) |
『吉野葛』
2003年 日本 58分 葛生賢監督作品
監督・脚本・編集:葛生賢 撮影:合田典彦、木田貴裕 録音:原田健太郎 助監督:大田和志
出演:大谷美香子
【INTRODUCTION】
奈良県・吉野の風景を大胆な表現で捉えたロードムーヴィーであると同時に、朗読映画でもあるという『吉野葛』。「反=日本性」の提示を目指したとか。かの蓮實重彦や浅田彰から絶大な支持を受けた伝説的傑作として名高い。現時点で、今回の神戸上映以後は関西上映予定が無く、貴重な機会と言える。
【作者コメント】
映画とは他人の夢を物質化することだ、とジャン=マリー・ストローブは言っています。私がこの作品で試みたのも、ファシズムが台頭しつつあった時代に谷崎潤一郎が夢みたものを物質化することだったと思います。この小さな映画が、政治状況が反動的な方向へと傾斜しつつある日本社会へのささやかな抵抗となることを作者としては願ってやみません。
<葛生賢(くずう さとし)監督プロフィール>
1970年生まれ。東京都在住。映画批評家・映画監督。映画批評家として『floweriid』『映画芸術』などに寄稿する一方で、青山真治監督の『AA
音楽批評家:間章』などの作品にスタッフとして関わる。自主映画監督としての代表作に『吉野葛』『火の娘たち』など。
『シネマトグラフ オブ エンパイア』
2009年 日本 51分
監督:木村卓司
出演:沖島勲(脚本家・映画監督 代表作:『一万年、後....』『YKK論争 永遠の“誤解”』『出張』)、高橋洋(脚本家・映画監督 代表作:監督『ソドムの市』『狂気の海』 脚本『おろち』『呪怨』『リング』『女優霊』)、ペドロ・コスタ(ポルトガルの映画監督 代表作:『コロッサル・ユース』『ヴァンダの部屋』『骨』)
ほか
【STORY】
突如、超巨大ブラックホールが発生し、全宇宙が絶滅の危機に!! 主人公(名前は?)は恐怖のあまり発狂しながらも、愛したシネマの記憶をデジタルカメラに遺すことを決意する。沖島勲、高橋洋、ペドロ・コスタといった多くの映画監督やシネフィルにインタビューする中で、彼らの言葉に勇気付けられた主人公は、やがて、デジタルカメラに写る自身の姿をシネマそのものと同化させようと悪戦苦闘する。しかしその時、全宇宙絶滅の瞬間は目前に迫っていたのだった…… 映画そのものを主題に据え、真っ向からの挑戦を試みた壮大な叙事詩。
【木村卓司プロフィール】
1964年生。滋賀県在住。同県内で自主映画製作を続けている。超越的私個人記録映画社主宰。代表作に『さらばズゴック』『眼の光』『阿呆論』などがある。昨年映画美学校で開催された初のレトロスペクティブは大きな反響を呼んだ。最新作『シネマトグラフ
オブ エンパイア』は“制作費0円でシネマトグラフは可能か”をテーマに、“シネマトグラフの命とは何か?”を探求する意欲作。ドキュメンタリーとフィクションを混在させながら、このまま行くと滅びてしまうかも知れない“映画”に対して少しでも関心をもって欲しいという願いを込めて製作したという。