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では、堀江貴文は、勝ち組に入らなければ負けるだけだから金にこだわるのか?
いや、そうではない。人生そこそこの生活ができればいいんじゃない、とか、上を目指すにも「上ってどんな上ですか」というようなニヒリズムに陥ってはいけないのだ、と堀江はいう。
「将来の夢はなんですか」と聞かれれば、堀江は「宇宙旅行の会社をつくりたい」とか「人類とは何かを知るために生命科学を発展させたい」と話すという。宇宙旅行が夢物語だなんて言っているうちに科学はどんどん進化するし、「実は、僕は死なないと思って」いる。
突拍子もないことを言っているようですが、死の仕組みをきちんと解明して、死なないような仕組みをつくればいいだけの話です。…僕は、死なないための努力を放棄したくないと思うのです。
(『稼ぐが勝ち』、知恵の森文庫、光文社、57頁) |
人間の生命の不思議を形づくっているタンパク質をひとつひとつ解明していくことで、やがて人間の全容が理解できるようになるかもしれないのです。
そこに僕は希望を持ちつづけたいのです。
けれど問題なのは、いま、そういう分野にお金が投資されないことなのです。僕はこういう未来のフロンティアにどんどんお金を流していく仕組みをつくっていかなければならないと思っているのです。
というわけで、結局はお金次第なのです。とにかくお金をかけて研究を進める。宇宙旅行を楽しめる時代、お金を持っていれば死なないですむ時代はきっと来るはずなのです。
(『稼ぐが勝ち』、知恵の森文庫、光文社、59頁) |
ここでも、堀江の語ることは、「「マーケットに限界はあるけれども、マーケットのよさを正確に理解したうえで、それをどのように利用すれば生活が豊かになるかを、いつも考える癖をつける」──この態度こそが、日本の将来にとってきわめて重要な意味をもつことになると私は確信しています。」(『痛快!経済学2』、集英社インターナショナル、50頁)と語る中谷巌と近接しているともいえるかもしれない。
けれども、宇宙旅行を実現するのは夢をかなえることであるのに間違いないとして、金儲けにもなるからそれをしているのか、金儲けとは別次元でそれを考えているのか、お金を持っていれば死なないですむ時代は、お金を持っていなければ死んでしまう時代なのか、はっきりしているとは言えない。