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『下流社会』(光文社新書)の三浦展は、格差社会への分裂を、それぞれの集団が持つ価値観と関連づけながら分析している。
前回の女性モデルに続いて男性のモデルをプロットすると以下のようになる。
垂直軸(y軸)は、女性モデル同様、上に進むほど上昇志向(高地位志向)であり、下に進むほど現状志向である軸を取る。水平方向(x軸上)は、右に進むほど女性同様の仕事志向とされるが、左に進むばあい、女性の場合は専業主婦志向であるのに対し、趣味志向とされている。
そこで、第1象限は上昇志向(高地位志向)かつ仕事志向の象限で、「ヤングエグゼクティブ系」のモデルが位置する。
第2象限は仕事志向かつ現状志向で、やや中心に近い位置に「SPA!系」が位置づけられている。これは雑誌『SPA!』の主要読者層と思われる「中」から「下」にかけてのホワイトカラー系男性であり、次のように三浦に特徴付けられている。
特に勤勉でなく、仕事好きでもないし、才能もないが、フリーターになるようなタイプではなく、仕事をするしかないので仕事をしているというタイプ。
ブランド志向は強くないが、オメガなどは普通にディスカウント店で購入。でもスーツはスーツカンパニーでもいいし、ユニクロはよく買う。
あまり高級な趣味はないが、サブカル好き。オタクといわれない程度にオタク趣味を持つ。ガンダムが一般常識という典型的団塊ジュニアであり、異常でない程度にロリコン趣味や格闘技系趣味を持つ。
パチンコなどギャンブルも好き。高校時代にカラオケボックスに入り浸った者が多い。キャバクラ、アダルトビデオなどに金をつぎ込む者も少なくない。
ロハス系と同様、できればもっと趣味の時間を増やしたいと思っているが、仕事の要領がよく方ではないので残業が多い。週60時間以上労働を過去数年続けている。
(81頁) |
三浦の『下流社会』の人気は、こうした描写のリアルさにその一因があると思われるが、この「SPA!」は最も一般的なモデルにあたるだろう。
第3象限は、現状志向でかつ仕事志向に対照される趣味志向の象限になる。この象限に位置するもの三浦は「フリーター系」を当てている。「ヤングエグゼクティブ系」の対照に当たるモデルである。
第4象限は、趣味志向でかつ上昇志向(高地位志向)を持つモデルで「ロハス系」と名づけられている。ロハス(LOHAS)とは、「Lifestyle
of Health and Sustainability」(健康で持続可能な生活様式)を意味し、いわゆるスローライフ志向ということになる。このモデルは上昇志向の象限に位置してはいるが、「比較的高学歴、高所得だが、出世志向が弱い。マイペースで自分の好きな仕事をしていきたいと考えるタイプだが、嫌な仕事でもそつなくこなす業務処理能力もあるので、フリーターになるタイプとは異なる。ヤングエグゼクティブ系の男に対しては、教養がなくて暑苦しい奴だと内心軽蔑している。」(77頁)
こうした男女のモデル化を構成する軸において、より重要なファクターはもちろんタテ軸(y軸)の上昇志向(高地位志向)か、現状志向かという選択になるだろう。何度も繰り返すように、ホリエモンが選んだのは強い上昇志向である。そしてホリエモンは、この分析で第3象限、現状志向でかつ趣味志向に位置づけられている「フリーター系」を価値観の多様性において認めるようなそぶりを見せながら、「マイサクセス」という言葉を引き合いに出しながらそれを結局は「要するに、自己満足ですね。」と切り捨てているのである。
これらの言説を分析するには、もう少し言葉が必要だが、少しあきあきしてきている人もいるかもしれないから、ひとつの流行歌をここで引こう。
『世界に一つだけの花』
作詞:槇原 敬之 作曲:槇原 敬之 歌:SMAP
♪花屋の店先に並んだ いろんな花を見ていた♪
♪ひとそれぞれ好みはあるけど どれもみんなきれいだね♪
♪この中で誰が一番だなんて 争うこともしないで♪
♪バケツの中誇らしげに しゃんと胸を張っている♪
♪それなのに僕ら人間は どうしてこうも比べたがる?♪
♪一人一人違うのにその中で 一番になりたがる?♪
♪そうさ僕らは 世界に一つだけの花♪
♪一人一人違う種を持つ その花を咲かせることだけに♪
♪一生懸命になればいい♪
♪困ったように笑いながら ずっと迷ってる人がいる♪
♪頑張って咲いた花はどれも きれいだから仕方ないね♪
♪やっと店から出てきた その人が抱えていた♪
♪色とりどりの花束と うれしそうな横顔♪
♪名前も知らなかったけれど あの日僕に笑顔をくれた♪
♪誰も気づかないような場所で 咲いてた花のように♪
♪そうさ僕らも 世界に一つだけの花♪
♪一人一人違う種を持つ その花を咲かせることだけに♪
♪一生懸命になればいい♪
♪小さい花や大きな花 一つとして同じものはないから♪
♪NO.1にならなくてもいい もともと特別なOnly one♪