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『下流社会』(光文社新書)の三浦展は、1955年体制における「一億総中流化・平等化モデル」が転換し、「階層化・下流化モデル」へと変わりつつあるという。
2005年以降のわが国の社会は、おそらくもうあまり成長はしない。国民も、もちろん不景気は脱して欲しいが、まだまだたくさん欲しいものがある、買いたいものがあると言って経済成長と階層上昇を求める時代ではない。みんな中流なんだから、これ以上の格差是正は求めないという価値観も出てきていると言われる。
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そしてそんな中では、皆が中流であることを目指すことに価値はなく、むしろ自分にとって最適な生活、最適な消費、暮らしを求めるようになっているようにも見える。
だからこそ、評論家の森永卓郎のように「年収300万円時代を楽しく生き抜く」といった内容の本が売れるのだとも言える。
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結果として、国民は次第に異なるいくつかの集団に分裂していく。その前提には以下の4つの要素が存在すると、三浦は指摘する。
- 階層上昇志向を持つ人が今までよりは減り、仕事、お金より、個人の趣味、あるいはNPO、ボランティアなどを重視する人が増える。
- 階層上昇志向の弱い人の中には、企業に就職せず、手に職をつけるなどの形でもっと自由に働くことを志向する人が増える。
- 今まで通り階層上昇志向を持つ人は、もちろん一定数いる。特に女性では上昇志向を持った人がさらに増える。また上昇志向の強いひとたちは、成果主義型賃金体系の中で、あるいは外資系やベンチャー系企業などの中で、より多くの所得を得ようとする。
- しかし、夫の経済力によって高階層であろうとする専業主婦志向の女性も簡単には減らない。
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この前提をもとに、三浦は階層上昇志向か現状維持志向か、また職業志向か趣味志向か(女性は「職業志向か専業主婦志向か」という2軸を想定して、男女がそれぞれどのような集団に分裂していくかをモデル化して見せている。
女性の場合、水平方向(x軸上)に右に進むほど職業志向であり、左に進むほど専業主婦志向である軸を取る。また垂直方向(y軸上)に上に進むほど上昇志向(高地位志向)であり、下に進むほど現状志向である軸を取る。第1象限はしたがって、上昇志向でかつ職業志向であるモデルが位置する。ここに位置するモデルを三浦は「ミリオネーゼ系」と名づけている。同様に、第2象限は、上昇志向でかつ専業主婦志向であり、ここに位置するモデルは「お嫁系」と呼ばれる。第3象限は、現状志向でありかつ専業主婦志向であり、ここに位置するモデルはやや意外ながら「ギャル系」である。「渋谷の109前か、センター街でこういうギャルをつかまえてインタビューしてみればすぐにわかるが、彼女たちは、そのけばけばしい外見とは裏腹に、実は専業主婦志向が非常に強い。」(62頁)と三浦はいう。第4象限は、現状志向でありかつ職業志向であり、ここに位置するモデルを三浦は「かまやつ系」と名づけている。