さらにパワーアップした第2弾はこちら 待望のパンク/ニューウィヴ系の紙ジャケの先陣を切ったのはやはりこの名盤だった。 だがそのリイシュー度はたいへん中途半端なもので今後の規範とはなりがたい。非常に 残念だ。以下各部を検証していきたい。 ・UKオリジナル Virgin V2086 ・JPオリジナル Virgin/日本コロムビア YX-7199-AX ・USオリジナル Virgin/Warner Bros. BSK3147 ・JP紙ジャケ Virgin/東芝EMI VJCP-68050 1.音質 まず音質面だが、残念ながら新規リマスターではない。アナログに近いハイビット・ リマスターが望まれているアルバムだけに悔やまれる。だから音はあかん。中低域の音 圧がグッと出てきて欲しいのだが、どうもスッキリしていて聴いていると欲求不満に なってしまう。ブルーノートの24bitシリーズくらい大胆なリマスターをして欲しいも のだが、契約上マスターをいじるのは難しいのかもしれない。 (96/9発売の来日記念限定スパンクBOXはデジタル・リマスター仕様であった。お そらく今回の音源も同じだと思われるがクレジットがないので不確実。ちゃんとクレ ジットして欲しいものだ。ちなみにこのBOXは本アルバム+デモテイク集(spunk!) +カラオケの2CD +8cmCDにTシャツなどのおまけがついて¥4845だった)。 2.表ジャケット 「勝手にしやがれ!!」
次にジャケットである。上の写真はLP(JPオリジナル)と紙ジャケを並べたもの。 ”オリジナル・ジャケット・コレクション”と銘打っていただけに発売前から期待は大 きかった。 まず帯はオリジナル日本コロムビア盤の感じを再現。ただし、当時の"犯すのは君だ!!" というアオリはやはり削除されている。またこの初回の帯はタイトルに「!!」がつい ておらず、単に「勝手にしやがれ」だった。したがって私はずっと邦題は「!!」のな いものだと思っていたが、今回LPのライナーを見直したらちゃんとついていた。紙 ジャケ版の帯は当然「!!」がついている。 LPの帯の裏には「反抗は人間の最も基本的次元のひとつである(アルベール・カミュ)」 と記してあって、ちょっとはずかしかった。 表のデザインはUKオリジナル盤と同じ。US盤はあの悪名高きアメリカン駄菓子色で あった(黄→ピンク、ピンク→ライトグリーンに色が変わっている)。 UKとJPの違いは微妙で、UK盤は黒字のタイプにかすれがある。またバンド名のピ ンク枠のトリミングがちょこっと違う。
左が紙ジャケ盤、右がJP盤の「S」の部分。紙ジャケ盤にはUK盤と同じかすれがある。 (ま、このへんは小さな問題ですね)。 3.裏ジャケット 最大の問題がこの裏ジャケ。UK/JP/USどのオリジナル盤とも曲名の配置がまった く違う。従って本当の意味でのオリジナルジャケットではないと判断したのはこの裏 ジャケの問題が大きい。 現行のCDをほぼそのまま紙にしただけのようなデザインになってしまっている。 ちなみにUKオリジナルとJPオリジナル(写真)はほぼ同じで、会社名と品番の部分 が違うくらい。USオリジナルは色が表同様アメリカン駄菓子色になっている。また曲 名の配置はほぼ同じだが、"EMI Unlimited Edition"が単に"EMI"に縮められその余白に "Sub Mission"の曲名が追加されている(この辺は次項の曲順と曲目にも関連する)。 現行のこのデザインは実際の曲順に沿ったものだが、このデザインがいつから登場した のかは不明。UK盤LPでもいつからかこのデザインに変わってしまったようだ。(ち なみにUK盤はセカンドプレス、サードプレスとも上記いずれとも違う独自の配置であ り、混乱に拍車をかけている)。 こうした複雑な事情をはらむ裏ジャケだけにオリジナルはこれだ!、というリイシュー ぶりを見せて欲しかった。25周年なんだしさ、「オリジナル・ジャケット・コレクショ ン」なんだしさ、歌詞カードに書いてある「〜アナログ・レコードのものをそのまま流 用しているため、CDに収録されている内容と〜異なる場合があります〜」の注意書き が虚しい。逆である。「現行CDに基づいているためオリジナルのアナログ・レコード とは異なる場合があります」と書いてあれば納得したが......。 4.曲順/曲目 さっき裏ジャケが最大の問題と書いたが、個人的にはこっちの方が実は大問題。 紙ジャケ盤はUK/JPオリジナル盤より1曲多い12曲構成だが、この「サブミッショ ン」ははっきりいっていらない。アルバムの流れを止めるし、質も他の曲に比べて落ち る。(この曲は初回UK盤LPに片面シングルとしてポスターとともに付属。その後L Pの中に組み込まれた)。 この12曲構成時の曲順は現行CDと同じで、UK盤のセカンド・プレスもしくはサード ・プレスで「サブミッション」がLP内に組み込まれた時からのものだと思われる。 USオリジナル盤に準じた構成だが、A面の最後2曲のみ逆になっている。 私はUK/JPオリジナルの曲順やコンパクトさが好きだったので残念だ。 実際に比較してみよう。
UK/JPオリジナル | USオリジナル/USCD | その他LP、CD/紙ジャケ | |
1
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(A side) Holidays In The Sun |
(A side) Holidays In The Sun |
(A side) Holidays In The Sun |
2
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Liar | Bodies | Bodies |
3
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No Feelings | No Feelings | No Feelings |
4
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God Save The Queen | Liar | Liar |
5
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Problems | Problems | God Save The Queen |
6
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(B side)Seventeen | God Save The Queen | Problems |
7
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Anarchy In The U.K. | (B side)Seventeen | (B side)Seventeen |
8
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Bodies | Anarchy In The U.K. | Anarchy In The U.K. |
9
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Pretty Vacant | Sub Mission | Sub Mission |
10
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New York | Pretty Vacant | Pretty Vacant |
11
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EMI | New York | New York |
12
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EMI | EMI | |
* | Sub Mission (UK付属EP) |
プログラム機能付きのCDプレーヤーかMDなどをお持ちの方は是非一度UK/JPオ リジナルの曲順をお試しあれ。何故当初"Sub Mission"がアルバムとは別になっていたの かその意味がハッキリすると思うのだ。当時イギリスと日本を襲った衝撃はこの曲順で なければ得られない(断言する)。2曲目は"Liar"の方が絶対いいし、B面の流れはこ の方が圧倒的に素晴らしい。なんでこんな曲目になっちゃんたんだろう?アメリカ人が 悪いのか? ただこの現行の曲順の1.2曲目は、この2曲のみシドのベースであるといわれているも の(後はスティーブ説が強い)。そのへんが関係あるのかな? 5.付録/解説 付録のポスターはUK盤についていたものを再現している。ちなみに日本版LPの特典 ポスターとは違いコラージュ・アート的なもの(このポスターはかっこいい)。 JPオリジナルの予約特典はポスターとバッジ。ポスターはメンバー4人が並んだもの (その後ステージ写真をあしらったカレンダー付きも配られた)と記憶している。バッ ジは銀色でバンド名のロゴをあしらったものだった。またプレゼント付きアンケートは がきも入っていた。 ライナーはミッキー森脇氏の書き下ろし。この人以外考えられませんな。ちなみにJP オリジナルのライナーは大貫憲章/大森庸雄の両氏。はっきりいって今回のリイシュー はこの付録とライナーのみが救いであった。 6.総評 結局現行のCDから緑の外枠とっぱらって紙製のジャケットにしただけじゃないのか? そんな疑問がふつふつと沸いてくる紙ジャケ化であった。 リマスターは無理にしても(このリマスターも古いけどね)、 UKオリジナルのポスターまでつけるなら"Sub Mission"もオマケの8cmCDにして曲順を オリジナルにすれば完璧であった。これだったら多少高くても買っただろう。 それか付録はやめてJPオリジナルでもよかった(帯まで再現したんだから)。それも立 派なリイシューだったと思う。ああ、次はヴァージン30周年までまたなければいけないの だろうか(そん時こそ新規リマスターして欲しいなぁ)。 さらにパワーアップした第2弾はこちら
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