サントラの日本盤も発売され、待望の映画も無事公開されたピストルズ。最近またまた さわがしいということで、特集してみることにしました。予告編で映画公開までにはな んとかまとめたい、などといっておりましたが、気づいたら上映もとうに終わってしま い、セルビデオが出そうな気配です。すいません。(行かずに終わった前売り券が...)。 ピストルズはパンクバンドの中でもいまだに人気が高く、ポスター、バッジなどのメモ ラビリアも天井知らずの値段をつけています。ほとんどビートルズ、ツェッペリンとな らぶコレクター人気なのですが、何故か(わかる気もするが)レコードの音質とかはあ まり語られていなかった気がします。紙ジャケも出てることですし、どこまでできるか わかりませんが、いっちょやってみようと思います。 なにしろ当サイトのモチーフとなったバンド。けっこう力入ってます。 少しずつ違う「勝手にしやがれ!!」 今回参考にした本。主に役に立ったのは右上の2つ 「Never Mind The Bollocks CLASSIC ROCK ALBUMS BOOK BY CLINTON HEYLIN 」レコーディング記録やテイク違いなどが詳しい 「Retorospective」各国盤のレコードが詳細にのっているコレクター本 ピストルズがジョニー・ロットン脱退までに出したレコードはアルバム1枚にシングル 4枚(フランスのみ5枚)。わずかこれだけです。ということで検証も楽だと思って始 めてみたんですが....イヤハヤ。とりあえず、世紀の大傑作アルバムからいってみましょう。 「勝手にしやがれ!!」Never Mind The Bollocks いちいち書くのが面倒なので以下、NMTBと略記させていただきます。 なお、 「グレイト・ロックンロール・スィンドル」Great Rock'n'roll Swindleは、GRRS 「ゴッド・セイブ・ザ・クィーン」God Save The Queenは、GSTQと 略記させていただきます。あしからず。また文中の価格などは2000年末時点での調査 によるものです。ご了承ください。 で、そのNMTBなのですが、本来は77年11月3日に全世界同時発売の予定だったの に、なぜか77年の10月28日に英国で発売されてしまいました。リリース時にゴタゴタ が必ずあるピストルズ。これもある程度はマネージャーのマルコム・マクラレンの仕組 んだことだったのではないかと思います。このへんの事情はおいおい触れていくとし て、まずは本家英国盤から検証したいと思います。 UK 上段左から UK1.VIRGIN SPOTS001=V2086(Blue label,11Trk,No "Submission"credit on rear cover)+VDJ24(1sided 7")+Poster,All items in 1 pack shirinkwrapped with sticker,77/10/28 UK2.VIRGIN V2086(Blue label,11Trk+VDJ24 or 12Trk, PINK rear cover with no track listings),77/10or11? UK3.VIRGIN V2086(Blue label,12Trk,12 trak listings with "Submission"),77/10or11? UK4.VIRGIN VP2086(Picture Disc,12Trk,Die-cut cover, B&W12 trak listings in collect order),78/1 下段左から UK5.VIRGIN V2086(Green/Red label,12Trk,Wrong trak listings),79-'80s reissue? UK6.VIRGIN OVED136(Mid Price Series,Green/Red label,12Trk,Wrong trak listings,Catalog inner),'80s reissue UK7.VIRGIN/EMI LPCENT20(EMI100 Anniversaly,Direct Metal Master,Heavy weight virgin vinyl,12Trk,Replica blue label,No "Submission"credit on rear cover),97 UK8.VIRGIN VP2086(21st Anniversaly,Numbered 2000only,PInk Wax,Remaster from Original analog master,12Trk,custom label,12 trk listings with "Submission"),98/10/28 UK1が正真正銘のオリジナル。LPは11曲入りで、裏ジャケも11曲表記。"Submission" を収録した片面シングルと、ポスターがセットになったものです。レーベルはLP/シ ングルともブルー・レーベル。シングルの裏は真っ白なレーベルです。これらをパック してステッカーを貼ったセットの品番がSPOTS001です。英国盤の販売形態としては珍 しくシュリンク・ラップしてあります。ステッカーは下記のオレンジ・タイプの他に緑 のものもあったそうです。 オレンジステッカーは輸出用? "UK PRESSING"とあるのは、オレンジは輸出用(緑のステッカーには表記されていない ?)という説と、フランス盤の侵略を恐れたヴァージン(リチャード・ブランソン)が わざわざ英国製と表記したという説があります。これ以前の経緯からしてフランス盤を 恐れていたことは十分考えられるので、後者の説の方が有力です。 (追記2002:緑ステッカー盤も手に入れてみましたが、こちらもUK Pressingと書い てありましたので、やはり輸出用ではなく、最初から2色あったようです)。 SPOTSというのはピストルズがシークレット・ギグをやった時のバンド名からとられて いるとされています(バンド名自体はSex Pistols On Tour Secretlyの頭文字をとったも の)。しかしヴァージンはこのパック商品で味をしめたようでこの後も何回か似たよう なパックを出しています。下記はジュリー・コヴィントンのアルバムですが、シングル 2枚をパックしてあります。 で、パックの品番はSPANK004!せっそうがありません(なお中身はフェアポート ・ファミリーせいぞろいの名作です)。 またこのSPOTSには裏ジャケが真っ黒のものがあると、英レコードコレクター紙や一部 日本のムック本に記述されていますが、写真すらみたことがありません。ピストルズの コレクター本にものっていないし、何かの間違いではないかと思っています。もし黒 バックを知ってる方いらっしゃったらぜひ情報をお寄せください。 付属のポスターはジェイミー・リードお得意のコラージュポスターで、曲に対応したア イテム(デザイン?)を並べたもの。紙ジャケでも復刻されました。 下が紙ジャケ版 SPOTSは予約だけで12.5万枚ともいわれていますが、現在完全な形で残っているもの はかなり少ないと思います。ポスターとシュリンク+ステッカーつきなら2万はくだら ないでしょう。シングルつきだけだったら7〜8千円、シングルもなしだったら5千円 くらいで買えちゃいます。 "Submission"の片面シングルは1000円くらいで売ってるん で(理由は後述)、自分で別々に買って組み立てるというのが一番リーズナブルです。 彫りの深さ、迫力、鮮度とも、このUK11曲盤にかなうものはないので、努力の価値 はあると思います。音質に関して詳しくはのちほど。 UK1のレーベル。2曲目がLiarである点に注目(クリックで拡大) つづいて上段左から2番目のUK2です。 これはジャケの裏側。曲名が何もなく、まっピンクのものがそのUK2です。 なんで、こんなジャケがあるのか、前後の状況から類推すると、 ・最初に11曲盤をプレスした。 ・急遽Submissionを収録することになり、フランスではその形で出ることに。 フランス盤の侵略をおそれたVirginは、すでにプレスしていた11曲盤にSubmissionを シングルとしてつけて売ることにした(なおフランス盤の脅威がなかった日本はその まま11曲盤で発売)。 ・11曲表記のジャケットがなくなり、12曲盤のプレスもはじまったが、まだ前にプレ スした 11曲盤が残っていた。 ・そこで11曲盤も12曲盤も両方使えるジャケを”つなぎ”で印刷した。 というつなぎジャケだったと思います。 実際このジャケで11曲盤+シングルが入ったものと、12曲盤の両方が手元にあります。 1000枚しか印刷されなかったということですが、けっこうよくみかけるので実際はもっ とあったのではないかと思います。このジャケでポスターつきがあったかどうかは未確 認です。 UK3(上段左から3番目)は、盤、ジャケとも無事12曲収録/表記にそろったもので、 一応の完成版です(上記写真の赤丸部分がSubmissionの場所)。 以後現在のCDまでこの形が基本となります(紙ジャケもこのタイプ)。 ここまでがヴァージン・ブルー・レーベル。有名なロジャー・ディーンによる2ヴァー ジンズ・デザインとニューウェーヴ期のA面グリーン/B面レッド・デザインの中間に 使われたものです。 このUK3の盤(12曲ブルーレーベル)でUK1のタイプのジャケ(11曲表示)もよく見 かけます。 UK1.2.3は77年中に発売されました。混乱ぶりが目に見えるようです。 UK4はピクチャー・ディスクで裏の曲目表記がピンクの地にモノクロとなりました。並 び方がめちゃくちゃではなく、ちゃんとA/B面の収録順に記されています。もちろん ピクチャー・ディスクでレーベルに曲順が表示できないための措置です。だったのです が、この表記の仕方を親切だと思ったのか日本の再発盤などで採用されていたりします。 これにはジェイミー・リードも苦笑するしかないでしょう。 下段にいって80-90年代の再発です。 左端UK5はレーベルデザインが変わっての再発。UK6はその廉価シリーズのもの。どち らもバーコードがない時代のものを掲載しています。 バーコードがついてからの80年代後期の再発では、淡いピンクを基調としたレーベル のものや同じく淡いブルーを基調としたレーベル、グレイのレーベルなどがあります。 再発NMTBの裏ジャケはほとんどサギまがいの曲名表記を連発。もちろん自ら”ロッ クンロールのスィンドル(さぎ)”を標榜しているので、一種の開き直りかもしれませ んが、これは笑えません。間違えて、違う曲を入れての再発かと思って買うとえらい目 にあいます。収録曲自体はUK3 から一貫して変わっていません。 裏ジャケの曲名サギ表記パターンには以下のものがります。 A.SubmissionがぬけたUK1タイプのジャケになってしまっているもの(これは一種の復刻?)。 B.Bodiesの代わりにSatelliteを表記したもの。 C.Pretty Vacantの代わりにBelsen Was a Gasをクレジット。12曲表記。配置もかえられた。 D.上記同様、Pretty Vacantの代わりにBelsen Was a Gasをクレジット。さらにGSTQが Liarに変わり、Liarが2回だぶって表記されている。Holidays in The Sunもけずられて 11曲表記。 写真はそのもっともひどい2ライアー/ベルゼンタイプのジャケです。青い丸で囲んで あるのがそのサギ部分。 特にBelsen Was a Gasはピストルズ最後のシングルとして予定されていながら、結局録 音されなかったといわれているもの(GRRSのサントラにライヴ・ヴァージョンを収 録)。出てきたら大発見なだけにファンなら買ってしまうでしょう。ほんと、サギです。 UK7(下段左から3番目)はEMI100周年を記念して97年にリリースされたシリー ズの1枚。重量盤でジャケも厚く、印刷まで濃くなっています。ピンクは蛍光気味の特 色。裏ジャケはUK1の11曲タイプを復刻。このシリーズは全体的に評判よくありません が、NMTBも同様。いまだに売れ残っております。 UK8(下段左から4番目)はNMTB発売21周年記念(半端だな)で98年に2000枚 限定発売。裏ジャケにシリアル・ナンバー入り。蛍光ピンク盤。ジャケのピンクも蛍光。 ということで8枚ご紹介いたしましたが、とりあえずここでUK盤の音質及びマトリク スをまとめておこうと思います。 <UK盤の音質とMATRIX> よくNMTBを評して、今聴くとただのポップなロックン・ロールとか、コミックバン ド風にも聞こえるなどといわれますが、CDしか聴いてないのでは?と思います。確か に曲構造などはそうなのですが、もともとの音質で聴いた衝撃はそんなものではありま せんでした。どっちかというとそれ以前のゲイリー・グリッター、スレイド、スィート などのグラムやベイ・シティ・ローラーズこそそういった評価にあってると思います。 NMTBのひきつったような、音の壁と緊張度はそれ以前のR&Rと一線を画すもので、 先発のクラッシュ、ダムドなどと比べても段違いでした(ダムドは確かに当時からコ ミック風に聞こえましたね)。 特にUK盤は彫りが深く、立体的で、ザクザクときます。また低音から高音まで壁が押 し寄せてくるような圧倒的な存在感があります。マトリクスは、 UK1(11Trk):A3/B1(念のため2枚検証しましたがどちらもこのマトリクスでした) UK2(11Trk):A3/B2(裏まっピンクの11曲盤) UK2(12Trk):A7/B6(裏まっピンクの12曲盤) UK3(12Trk):A5/B5,A9/B7(2種類を検証) UK5(12Trk):A9/B11 UK6(12Trk):A10/B12 (上記マトリクスは今回比較した盤のもので、すべてがこの番号とは限りません。各種 大体この前後だと思います。またこれ以外の特殊盤は番号の系列が違うため割愛しました)。 ちなみにこのサイトでよく使われているマトリクス番号というのはアナログ・レコードの レーベルの周りの溝に彫られている番号です(CDの場合は演奏面の内周)。多くの場合 マスターNo.を表しています。 マトリクス番号が大きくなる度に音質の鮮度が落ちていくのは、ご承知の通り。やはり 当然のごとくUK1が一番よくて、徐々に落ちていくのですが、12Trkになった所からい きなり音質がガクンと落ちます。この差は番号のとび方が端的に表しています。 UK2とUK3はほぼ同時期なので、中の盤とジャケは混然としています。 UK4のピクチャーディスクはUK3と大差なし。 またUK7のEMI100版はこの中でも最低の音質。へんなイコライジングで高音がフニャっ としたまま強調され、あまったれたロックン・ロールのようになってしまっています。 UK8の21周年記念ピンク版は実はけっこう音がいいです。同時に出たCDもいい音なの ですが、このアナログも細部まで分離がよく、しかも迫力を失っていません。さすがに オリジナル・マスターからリマスターしただけのことはあります。再発ものではオスス メの1枚。今ならまだ3000円以内で買えるのではないでしょうか。 また付属の片面シングル"Submission"にはA1とA2の2種類のマトリクスがあります。こ のシングル、LPの方が12曲盤に移行した時に大量にあまってしまったようで、ヴァー ジンのカンパニースリーヴつきで市場に出回っています(カンパニースリーブから判断す るとおそらく79年以降に放出)。放出ものは多くの場合マトリクスがA2なのですが、A1 を見つけて上記に書いたように自分でUK1を組み立てることが可能です。 CS付きで出回っているVDJ24 なおUK1及びUK2に付属していた時のスリーヴはなんでもない白いスリーヴでした。 もちろん本来の付属シングルが分離して売られてる場合もあります。 追記2001/9/26 11曲盤A2/B2を入手しました。 A面の音はやはり一番いいです。 ということは最低A2/B1は存在するということです。 まだ見ぬA1/B1に死ぬまでにたどりつけるのでしょうか? ちなみに付属のシングルはA1で、お値段2648円でした。 今までかけたお金はいったい何だったのか...むなしい 2002/7 ようやく1/1と1/2を発見しました。鮮度は非常に高いです。 ただマトリクスは2系統あるようです。 ・1/1、1/2、2/2、2/3の系統 ・3/1でずっとそのままの系統(レーベル中央に深溝があります)。 この2つの系統は工場が違うような気がします。 1/1はさすがに鮮度が高く、ブリリアントに響くシンバルにはアンビエスがたっぷり。 ベースの解像度、低域の伸びも相対的にいって優れています。 ただまぁ、聞き比べなければ11曲盤はどれも十分な音質だと思います。 なおNMTBのUKプロモ盤は発売当初は存在しませんでした。あれくらいゴタゴタし てたんですから、まぁ、そんなもの作ってる場合ではなかったんでしょうけど...。 その代わりGRRSがでた79年に販促のためかホワイト・レーベル・プロモが作られ たようです。レーベルはUK5とおなじデザインで色が白になったもの。ジャケに"PROMOTION ONLY"の金色のエンボススタンプが押されているとのことです。 (今回発見したのですが入手に失敗。そのうち掲載します)。 ということでUK盤でもっとも音がいいのは、当たり前すぎて面白くないのですが、 UK1でした。以下、このUK1を基準に各国盤、及びCDを比較していきたいと思います。前回の紙ジャケ比較検証へ
<NMTBの曲順:11Trkと12Trk> 各国盤のLP/CDについて述べる前に曲順について触れておきたいと思います。 曲順表をご参照ください。 NMTB曲目比較表 下の写真は当初予定されていた10曲盤の初期ジャケット・デザイン。もちろんジェイ ミー・リードによるもの。タイトルはまだ「God Save The Sex Pistols」。写真は21周 年記念CDのブックレットにのっていたものです。 11曲入りは英、仏、日しか確認できていません。その他ベルギーやカナダでも発見さ れていますが、フランスの輸出仕様のようです。 メキシコ、韓国にも11曲盤があるとの噂がありますが、未確認。韓国はあったとして もオフィシャルではないと思いますが....。 ということでピストルズで重要なのは英仏日のリリース。普通比較検証する時は英米 中心なのですが、今回に限ってはフランスをはずせません。 これには理由があります。まず、レコード会社を転々としたピストルズの遍歴。 仏バークレイの方が英VIRGINより先に契約しています。 ・76/10/8 英EMIと契約 11/26 英で「アナーキー..」のシングルリリース 77/1/6 解雇 ・77/3/9 英A&Mと契約 3/16 解雇 3/25 GSTQ発売予定日 ・77/5/6 仏バークレイと契約(フランス、ザンジバル、スイス、アルジェリア含む2年間) ・77/5/13 英VIRGINと契約 5/27 英でGSTQ発売(仏先行?) 6/8 ヨーロッパVIRGINと契約 6/13? 英VIRGINとワールドワイド契約(日本コロムビア、仏バークレー含む) 7/2 英で「プリティ・ヴェイカント」発売(仏は先行で6月にリリースしていた) 7/? 仏で「アナーキー..」のシングル発売。廃盤状態の英に大量輸入。 10/10 米ワーナー・ブラザーズと契約 10/15 英で「ホリディズ...」発売(仏先行もしくは同時) 10/28 英でNMTB発売(仏先行。また仏で「サブミッション」のシングルリリース) 11/3 NMTBワールドリリース予定日(日本盤はこの日発売) 11/10 初期のNMTBワールドリリース予定日? いかに仏バークレイが英ヴァージンより優遇されていたかわかると思います。ほとんど のリリースが英に先行し、英で再リリースできなかった(おそらくEMIとのからみ) 「アナーキー...」が仏でリリースされちゃう。このシングルが大量に英国に入ってきた 時には、ブランソンはムカついてしょうがなかったと思います。な〜んでうちで契約し とんのにレコード出せないんだよぉ、と思ったに違いありません。 あげくの果てがデビュー・アルバムまで仏先行。それを危惧して世界同時って決めたの にぃ(これは私の推測)。おまけに英盤より1曲多くて、その曲まで仏のみシングルリ リースされます。 こ、れ、は、また「アナーキー...」の時のようにフランス盤に英市場を食い荒らされる に違いないとブランソンは思ったことでしょう。「何でもいいから早くだせ!」と自ら 決めた世界同時発売のスケジュールを破って、1週間はやい10/28に無理矢理リリー スしちゃいました。 もちろんこの1週間前、10/22には「SPUNK」なるブートが売りに出され、「これこ そピストルズのデビュー・アルバム」なんていわれちゃってるわけですから焦りも最高 潮ですな(このSPUNKのリリースにもマルコム率いるグリッター・ベストが関わってい たのでは、という噂があります。ま、あくまで噂ですが)。 いったいこれはどういうことなんでしょう?マルコム・マクラーレンのメディア攪乱戦略? いや、どっちかっていうとヴァージン/ブランソンにいじわるしていただけのような気がし ます。 マルコム(ピストルズ)は伝統と由緒ある大手レコード会社からレコードを出したかった のです。だから最初にEMIを選んだわけです。「内部から古い価値体系を壊したかった」 などとうぞぶいていますが...。クラッシュもCBSから出たことだし、とにかくインディ ーズなんてまっぴらだったのです。 パンクの精神のひとつにDO IT YOURSELFがありますが、ピストルズはこと販売/流通に関し てはそうした考えはもっていなかったわけです。彼らはやはりデストロイヤー=破壊神で あって、ピストルズが破壊した焼け野原があったからこそ、DO IT YOURSELFをかかげた 後続のパンク/ニューウェーヴの自主レーベルが出てこれたのではないかと思います。 だからインディーズあがりでわけのわからん実験音楽やプログレを出してるVirginなどいや だったのですが、女王式典までにはGSTQをリリースしなければならず、しょうがなく、 といった所でしょう(自分達で出そうなどという考えはハナからなし)。 ヴァージンがストーンズやジャネット・ジャクソンなんかと契約するビッグレーベルになる のはまだまだ先のこと。この時点では確かにそんな印象でしょう。 マルコムはブランソンも嫌いだったようです。二人は似た者どうしだった、という関係者の 証言もあります。おフランス好き、ブランソン嫌いのマルコムの子供じみたいじわるが巻き 起こした、こうした混乱は、以後もピストルズ関係のリリースにつきまとうことになります。 「もしもし...。あ、リチャード?ボク、マルコム」 「なんだ、こんな夜中に...」 「あのね、NMTBなんだけど、11曲やめて、12曲にするから」 「な、なに〜!また変更か!もうプレスしちゃってんだよ、もうムリだ!」 「う〜ん、でもメンバーみんなと決めたことだからね、シドもOKしたし」 「ムリっていったら、ムリ!世界同発なんだぞ!もうまにあわんよ!」 「あ、そう。うん、じゃいいよ。11曲で。じゃね。あ、それからバークレーは1曲増やして かまわないっていってたから....それじゃおやすみ」 「な、なにぃ!?...あ、おいまてマルコム!こら!」 「(ツー).....」 (ま、マルコムの感情だけではないと思いますが...。以上けっこう推測入ってます。あしからず)。
FR ということで、ピストルズのレコードでは重要な位置をしめるフランス盤を見ていきたいと思います。 左から FR1.Barclay 940553(Cover same as UK1,No mark on back cover,Black label,Large Band Logo on Aside only,11Trk,Hand-etched Matrix,Thin Press)for Export? FR2.Barclay 940553(Cover same as UK1 but laminated,A mark on back cover,Black label,Large Band Logo on Both sides,11Trk,Machine-etched Matrix,Thick Press)for EU? FR3.Barclay 941001(Pink&Green Cover with "includes....Submission" on front,laminated,handwritten B mark on back cover,same label type as FR1,French12Trk, Hand-etched Matrix) FR4.Barclay 941001(Cover same as UK2 Pink back,B mark on back cover,Disc and Label same as FR3) フランス盤は品番が2種あり、940553が11曲盤、941001が12曲盤。12曲の曲順 は"SUBMISSION"がA面最後にくるフランス独自のもの。 NMTB曲目比較表 FR1と2が11曲盤でおそらく輸出用。3と4が国内用12曲盤ではないかと思います。ま たバークレイ盤は裏ジャケ右上にへんなアルファベットがふってあります(シングルも 同様)。 左からFR1/なし、FR2/A、FR3/手書きB、FR4/Bです。おそらくリリースの順番を 把握するためではないかと思います。その分Matrixが品番のみで枝番がなく、順番がわ かりません。FR2以外は手書きのMatrix。 レーベルは全部黒ですが、写真右のFR2だけバンドロゴが両面にあり、アルバムタイト ルが "Here's The Sex Pistols"を省略した短い表記になっています。 背表紙は上段左からFR1、2。どちらもUK1と同じ11曲表記。 下段左FR3はUS盤と同じピンク/グリーンジャケ。"Submission"の表記は表側にドカンと のせてあります。 INCLUDES THE UNRELEASED"SUBMISSION" 下段右のFR4はUK2とおなじピンク裏ジャケ。曲目/曲順はFR3と同じフランス独自の12曲。 FR2と3は美しいコーティングジャケ。 また背表紙は4種とも他のどの国とも違う白地に黒文字。 この後バークレイ盤はこの品番(941001)のままUK3と同じジャケ/曲目の仕様にな るようです(未確認)。 しかしこの混乱ぶりはいったいどういうことでしょう。マルコムがいかにVIRGINを嫌っ ていても、どっちかっていうとバークレイの方がマイナーでいい加減なレーベルのよう な気がします。JAZZではチェット・ベイカーの欧州録音で有名ではありますが。 こっからは推測ですが、おそらく以下のようなことだったのではないか、と....。 ・VIRGIN同様、マルコムから1曲増やせといわれた時にはもう11曲盤をプレスしていた。 ・しかし「アナーキー..」の再発シングルを輸出して味をしめていたので、英国盤より 1曲多い点、しかもそれが未発表曲である点、さらにシングルをきっていいなどの条件 が非常に魅力的だった。 ・したがって12曲盤で出すことにしたが、時間がなかったので、本来B3に収録すべ き新トラックを、A面最後に無理矢理つないた。 ・それまでプレスした11曲盤は輸出用にすることにした。初期のプレスはカナダ(仏 語圏)などの遠い所へ、最後の方のやつはベルギーなどEU圏内に輸出した。EU用は 混乱するといけないから、Aとマークを入れた。 「もしもし...。あ、ボク、マルコム。どうだい、NMTB用に未発表曲が1曲あるんだ けど、そっちの盤だけ特別に入れてみない?」 「未発表曲か?アンリリーストだな?」 「もちろんアンリリーストだとも。ジャケにでっかく書いていいよ。シングルにしても いいぜ。ヴァージンより1曲多く収録していいからさ、その代わり10,000ほど用立て てくれないかな。ジョンの入院費用がはらえなくてさ... 「え、なに?ヴァージンより1週間はやくリリースしたい?いいよ、じゃあさらに1万 でどうだい? 「じゃ、明日振り込んでくれたらその曲のマスターおくるよ。うまくつないでくれよ」 なんてね。 ピストルズのコレクター本Retrospectiveでは、FR3がフランスで発売された最初の版で、世 界で一番早く発売されたNMTBであるとなっています。この説が正しければ、やはり FR1 と2は輸出用に回され、11/3のタイミングで世界同時に発売されたのではないでしょうか。 実際、FR1はIMPORTのステッカーがはられていてカナダ経由で買ったものです。FR2はベル ギー盤と称してしばしば売られている模様。 では世界で一番早く世に出たバークレイ盤の音質はどんなものなんでしょう? けっこういいのですが、プレスが甘いのか、UK1にはやはりかないません。 世界的に11曲盤は12曲盤よりやはり1段優れていて、このバークレイ盤もしかり。 FR1とFR2は実はどっちが先のプレスなのか判別できないのですが、聴いて比較すると FR1の方が鮮度が高いのでファーストプレスとしています。盤はFR1が薄くて、FR2が 厚手の盤です。ただしプレスの質がバラバラのようなので、薄い厚いは個体差かもしれ ません。 バークレイ盤で一番いいFR1を「けっこういいな」と思いながら聴いた後に、UK1を聴 くとその彫りの深さにビックリします。英国盤恐るべし。ザクザクザクザクと突き刺さ るような感じがたまりません。 12曲盤のFR3はFR2よりガックリ落ちています。FR4はFR3と大差ありません(同じ?)。
JP 左から JP1.Nippon Columbia YX-7199-AX(Cover same as UK1,11Trk,Blue Label,obi,insert,postcard,Reserved Speciality:Budge&Poster),77/11/3 JP2.Virgin/Victor VIP6986(Colored UK4 Type Back Cover,12Trk,Green/Red Label,obi,insert),82 JP3.Virgin/Toshiba EMI 25VB1068(Colored UK4 Type Back Cover,12Trk,Green/Red Label,obi,insert),86/2/1 写真下 JP4.Virgin Japan VJL110(VIrgin Best Selections 30 Limited Edition,Cover same as UK5 Wrong Track Listings,12Trk,Yellow Label,obi,insert),88/3/9 われらが日本盤。JP1が初回コロムビア盤で、私の愛聴盤です。前の検証の時にも書き ましたが、予約して発売日にとりにいったのを覚えています。77年11月3日のことで す(地域によって多少前後するでしょうが)。色んな本にさまざまな発売日が、ひどい のは78年とか書いてありますが、この日付が正しいと思います。当時の雑誌ですら11 月10日になってるものもあるので、日本でも混乱していたようです。 ミュージックマガジン77年11月号の広告です。全世界同時発売と書いてあります。英 と仏に裏切られましたが、日本盤はなんのゴタゴタもなく、11曲盤で出た唯一の国 (?)。裏ジャケも11曲表記。このまま82年まで11曲盤のままです。 予約特典はバッチとポスター。封入ではなく店頭渡しだったので、今やほとんどそろっ ていることはないです。私も例にもれず、なくしました。バッチは銀黒のバンド・ロゴ をかたどったもの、ポスターはメンバーが壁にもたれている写真だったように記憶して います。 あとポストカードというか、単なるアンケート葉書がついていて、送ると抽選でなんか もらえたので、これもほとんどの場合なくなってしまっています。ま、ただの白いはが きだから完品にこだわらなければ、なくてもどうということはありません。 なにかと話題の帯。「犯すのは君だ!!」のあおりが有名ですが、これはその前の「処 女アルバム」のコピーにひっかけたもの。要するに、「デビュー作を聴くのはあなたで すよ」ということをいっているわけですが、"処女→犯す"という連想の仕方が過激で す。処女なんだから"犯す"ではなく、"やさしく針を落とそう"という方向性も...(余計 いやらしいか)。この担当者はやはり"処女は犯すもの"、という思想が...。いや、 まぁ、当時の担当者の力の入れ方が感じられる、素晴らしいあおりだと思います。 こちら帯裏の格言。当時から気恥ずかしかったのですが、今見ても気恥ずかしくて、よ いです。言葉はともかく、(アルベール・カミュ)の、このカッコで閉じてあるところ がなんとも。 下の写真のポスターは予約特典ではなくて、77年11月の後半くらいから店頭特典で配ら れたカレンダーつきのもの。コロンビアのロゴ入り。たぶんカッコよかったのでとっとい たのだと思います。 ジャケ裏とともに再発盤を見ていきたいと思います。JP1はUK1といっしょ。 JP2(左から2番目)は82年のビクター盤。ここで初めて日本のファンは「サブミッ ション」を聴くことになります。12曲盤。裏ジャケはUK4(ピクチャー・ディスク)の デザインに色づけした独自のもの。確かにこのレイアウトは曲順どおりにならんでい て、わかりやすいんですが...カッコ悪いよ、やっぱり。 JP3(左から3番目)は86年東芝に権利が移った時の再発盤。ビクター盤といっしょで す。この時同時に、日本で初のCD(32VD1011)も出ました。 JP4はヴァージン・ジャパンが設立された時の限定盤(88年)。販売はビクター。黄色 いレーベルが世界的にも珍しいです。裏ジャケはUK5と同じ"サギ"表記、2ライアー/ベ ルゼンタイプです(赤丸部分)。もちろん収録曲はJP3や4といっしょです。 日本で出たNMTBのアナログはこの4種ですべてだと思います。他に知ってる方い らっしゃったら是非情報をお寄せください。 で、日本で出たアナログ・シングルは右の写真の7インチ5枚と左の12インチですべて? 上段左端のGSTQは日本のみの自主規制ジャケで、女王の写真をカット。左から2番目 のプリティ・ヴェイカントは上下が英盤とは逆になっているドイツ盤と同じタイプ。下 段左から2番目のシリー・シング/サムシング・エルスは日本独自のカップリングです。 日本初のピストルズのレコード、GSTQのシングルが出たのは忘れもしない77年の9月 2日。中学生だった私は放課後、部活をさぼって自転車で探し回った記憶があります。 どこにも入荷してなくて、ようやく駅の地下のショッピング広場の小さなレコードコー ナー(売ってるのはほとんど演歌のシングルとカセット!)で見つけて、家に帰って聴 きまくりました。 当時は情報がとぼしかったのですが、ミュージック・ライフや音楽専科によく記事が のっていたこと、それと多分TVでちょこっと流れたGSTOの映像にノックアウトされ たんだと思います。とにかく発売日が待ち遠しかったです。 見本盤レーベル このGSTQのサンプル盤のレーベルに"S52/9/1送"と親切に書いてあるので、放送局な どには発売前日に送ったのでしょう。英国に遅れること3ヶ月あまり。ようやく聴けた 時は感動しました。 と、昔話はこれくらいにして、音質の話に入りたいと思います。 JP1は11曲盤だけあって、やはりいい音です。長年愛聴してきたので、ひいきが入って るとは思いますが、少なくともフランス盤よりよくて、UK1に迫るもの。 じゃっかん平面的で、鮮度や彫りの深さではかないませんが、高音などはよく整えられ ています。憂いはないが、やさぐれているといった感じ。77年ですから、すでに日本 のプレスはかなり優秀で、内周部分は英盤に比べて劣化が少ないです。日本のファンは このコロムビア盤を誇りにしていいと思います。 なにしろ英や仏がやれ11曲だの12曲だのと混乱していた時に最初にやってきた11曲マ スターで着々と作業したわけですからね(想像ですが)。 で、念のため3枚聴きました。 JP1 Matrix Disc1:A1/B1 枝番はなし 市販盤 Disc2:A1 A3/B2 A3 サンプル見本盤 Disc3:A2 A5/B2 A9 市販盤 私が予約して発売日に受け取ったもの JP1 Sample Disc 発売日に受け取ったDisc3がすでにこのマトリクスですから、けっこう予約あったんじゃない でしょうか。サンプル盤ですら、けっこう数字の大きいマトリクスです。 ということで、今回の特集のために必死にMatrix1を探しました。Disc1がそれ。ファースト プレスだと思います。ですが、比較視聴した結果は、3枚とも音質はほぼいっしょ。はから ずも日本プレスの優秀さを裏付ける結果となりました。 コロムビア盤JP1は、帯なしで2〜3千円、帯付きで5千円前後。年々高くなっているので、 アナログ・プレイヤーをお持ちの方は今のうちに買っておきましょう。 音質は上記で述べた通り、どのマトリクスでもけっこういけると思います。 あとのJP2〜4はやはり音が落ちます。 なお11曲盤のサンプル盤は世界的にも珍しいとのこと(英盤はなし)。米盤のプロモがジャ ケのみなので、12曲盤まで含めても、77年の時点でのNMTBのサンプル"盤"は、その存在自 体が貴重だそうです。日本ではけっこう見つかるので、見つけたら買っときましょう。
US 左から US1.WarnerBros.BSK3147(Pink&Green Cover,11Trk listings,no sticker on back,12Trk,White Label,blue/white insert),77/11? US2.WarnerBros.BSK3147(Pink&Green Cover,11Trk listings,with "submission"sticker on back,2 Promo sticker on front,12Trk,White Label,blue/white insert),77/11? US3.WarnerBros.BSK3147(Pink&Green Cover,11Trk listings,with "submission"sticker on back,12Trk,Textured White Label with DeepGroove,blue/white insert),77/11? US4.WarnerBros.BSK3147(Pink&Green Cover,12Trk listings,12Trk,Light Yellow WB Label),'80's さて米盤です。ここまでくると、特に米盤を聴いていると、ピストルズでこんなことやって も意味ないんじゃないか、と痛切に感じます。はじめからわかってはいたんですが...。 米盤は特徴は2つ(カナダ盤KBS3147もいっしょ)。 1.すべてFR3と同じピンク&グリーンの色。ですがFR3より色味は安っぽいです。コーティン グはされていません。 2.12曲収録だがA面の最後の2曲が入れ替わっています。 再びNMTB曲目比較表 これはヒット曲GSTQを印象づけるため最後に持ってきたアメリカらしい措置でしょうか? それとも各国で少しずつ変えるグリッター・ベスト(マルコム)の計略? US1からUS3はほぼ同じ時期にでたもので、どれも盤は厚手。ステッカーのあるなしが最大 の相違です。この国でも当初11曲盤で裏ジャケを刷っていたので、急遽"サブミッション"の ステッカーを貼ってなんとかしています。 US1はステッカーなし。貼ってあった痕跡、はがした跡がないものです。ステッカー貼り忘 れにしてはけっこう見かけるので、ステッカーが間に合わずに出荷してしまったものでしょ うか?白色のレーベルでマトリクスはLW1です。今回の比較の米盤4枚の中では最も鮮度が 高い音だったので1番にしてありますが、米盤は工場によっても異なりますので、明確にこれ が1st プレスとはいえません。 US2は俗に3ステッカーといわれるプロモ盤です。裏に"サブミッション"のステッカーが貼っ てあり、表に2つのプロモステッカーが貼ってありますが、盤自体はUS1といっしょで PROMO表記はありません。マトリクスはLW1です。 この当時の米プロモはステッカー貼りだけですませてしもうこともほとんどだったようなの で、珍しくはないのですが、なんでレーベルがあたかもプロモ盤のような白レーベルだった のでしょうか?もしかしてプロモ白レーベルを作ろうとして時間がないからそのまま商品ま でいっちゃったのかもしれませんね。 US3はステッカーあり(間に合った?)。マトリクスはWW1#3で、上記2枚より一段幕 がかかった音です。レーベルも白はいっしょなのですが、何故かテクスチャーレーベルで ディープ・グルーヴ(レーベル上に刻まれた深い溝)があります。ま、このへんは工場の 違いでしょう。 US4は再発盤で裏ジャケも12曲表記。レーベルも通常のWBレーベルとなっています。色 は最近のリイシューは蛍光っぽくさらに安手になってきています。写真はバーコード付の 最近のもの。音はスカスカです。 US4以外の盤には青/白のインサートがついています。米国でのプロモ用の資料などから 構成されています。 カナダ盤KBS3147も米盤と同じ。インサートも付いています。 米盤の中では優劣がありますが、UK1やJP1に比べると全体的に軽く、薄っぺらい音です。 ニルヴァーナのカートがカセットで聴いたのは正解だったと思います(カセットにコピーし た方が中低音が粘っていい音になったのでは)。 なお米盤では権利的に必要なかったのでしょう、EMIの曲目表記にUNLIMITED EDITIONと ついていません。英国ではこの「制限はうけていません」表記をつけるのが条件だったと いうような話をどっかで読んだのですが....(うろおぼえですいません)。私の記憶の通り だったとしたら英EMIもイキな会社です。 もちろんこの曲のLIMITED EDITIONなどというものは存在しません(ブートでたまにつけて いたりするが)。
Other Countries それでは地獄の各国盤巡りといきましょう。各国盤で面白いのは英ヴァージンからの権利で 発売している国ではなく、グリッター・ベストとの直接契約で発売しているもの。仏バーク レー、日コロンビア、豪ウィザードなどがあります。いずれも2年くらいの契約だったよう です(日コロンビアはヴァージンも持っていたのでもうちょっと長い?)。これらの国は レーベルデザインがヴァージンレーベルではありません。 ということでオーストラリア盤なのですが、肝心のWIZARD版NMTBが未入手のため、90年代 にカラーレコードで再発されたヤツをどうぞ(すいません)。 左から AUSTRALASIA? Virgin V2086(Blue Wax,UK3 type Laminated cover,12Trk listings,12Trk),90's limited edition? AUSTRALASIA? Virgin V2086(Red Wax,UK3 type Laminated cover,12Trk listings,12Trk),90's limited edition? どちらもヴァージン盤なのですが、レーベルに"MADE IN AUSTRALASIA"と書いてあり、最初 見たときは一瞬どこの盤なのかわかりませんでした。オーストラシアなのか、オーストラリ アなのかハッキリせい!って感じです。それともオーストリア盤だったりして....。 12曲盤でコーティングされた蛍光カバー。ギラギラしております。"Retrospective"には GreenWaxと RedWaxが出ていると書いてあります。上記左はどう見ても青なので、これ以外 に緑盤もあるかもしれません。音は普通。 続きましてヴァージンからの権利で発売されたヨーロッパの各国盤です。 左から ITA Virgin VIL12086(UK1 type cover,11Trk listings,12Trk,Green/Red Virgin Label),79or80? HOL Virgin 25098XOT(UK1 type cover,11Trk listings,12Trk,Twins Virgin Label),70's? same as Ger Virgin 25593XOT Greek Virgin 2933-370(Purple UK1 type cover,11Trk listings,12Trk,Twins Virgin Label),70's or 80's? 左がイタリア盤。写真では見えないのですが、ジャケに黒い縦縞が入っています。きっと紙 質と印刷の質が悪いためでしょう。11曲表記の12曲入り。 イタリア初版ということで買ったのですが、なぜかレーベルは緑/赤のニュー・ヴァージン レーベル。これは80年代(ところによっては79)から使われはじめたはずなのに....。しか もマトリクスに2.11.77と刻印されています。ということはやはりマスターが出来たのは世 界同時発売に合わせてのことだったのでしょうか?うーんどうもうさんくさいぞイタリア盤。 またイタリア盤には同じ品番で表紙に"PUNK"の文字の入った80年代の再発盤もあります。 中央がオランダ盤。ドイツ盤もいっしょです。このへんの各国盤で人気があるのがこのタイ プの、11曲表示でロジャー・ディーンデザインの双子Virginレーベルのもの。それか変わっ たジャケのヤツです。 右端が変わってるものの一つで、ギリシャ盤。俗に紫カバーといわれとりますが、どうみて も FR3かUSのタイプを刷ろうとして色が転んだようにしか見えません。これも11曲表示で双 子ヴァージン・レーベル。うーん変な盤だ。 ギリシャ盤NMTBにはこの他にも普通の黄色のジャケで灰色のヴァージンレーベルのものがあ るそうです。 ピストルズはギリシャでもけっこう人気ある見たいですね。その他にも変なモノがいっぱい 出ています。後で出てくるシングルボックスなどもそう(一説にはこの手のギリシャものは ブートに近いんじゃないかといわれとります)。 音はオランダ/ドイツはまともですが、後はヒドイ音質です。 その他80年代に出た各国盤は基本的に以下のようなものです。 PORT Virgin/VaDeCa VV-33.012Y(UK3 type cover,12Trk listings,12Trk,Green/Red Virgin Label),80's 写真はポルトガル盤ですが、12曲表示で緑/赤Virginレーベル。これが標準的なリリースです。 人気もないし、音もよくありません。 下は3〜4年前に話題になった(どこで?)、ロシア盤。 RUS AUTRON P93-00273/4(80's CD type cover,12Trk listings,12Trk),93 80年代中期のCDのデザインを使ったものですが、裏ジャケの女王の絵がふるってます。 一時は1万近くしたのですが最近は値が落ち着いてきて2000円くらいで買えたりします。 AUTRONという会社が出してますが、これって昔はポーランドの会社だったような気もしま す。だから正確にはポーランド盤かもしれません。 P93というんだから93年のリリースでしょう。市場に出てきたタイミング的にもそんなもん です。 THE SEX PISTOLSと書いてあります PUNK ROCKと書いてあります さて実はロシア盤はクラシックの世界では音がいいので有名だったりします。80年代くらい までは、すべて真空管プロセスでプレスマスターを作っているだの、オリジナルマスターテー プからバンバン、プレスマスターをカッティングしてるだの、けっこう噂になってたものです。 てなことで、ちょっと期待して聴いたのですが、これが大ハズレ。ひどい音質でした。
アルバム比較結果 さてNMTBのアナログLPを27種32枚聴いてきたのですが(グェエエ)、ここまでの結果、音 質は 1.とりあえず11曲盤の方が音がいい。 2.各国の音質はUK>JP>FR>>GER(HOL)>>USてな感じでした。 それにしても今回あらためて聴いてみて、やはり同時代のパンクバンドと比べて、ピストル ズは圧倒的に出音がいいです。 きっと機材がよかったんでしょう。なにしろスティーヴ・ジョーンズとポール・クックで フェイセズやらボウイのコンサートで(もちろん真偽は未確認)、アンプから何からくすねて きてたみたいなので。一流も一流、ちゃんとメンテもされた機材を持ってたことになります。 それでリハーサルもやってたんですから、うまくなりますよね。 なお、昔から下手とかいわれていましたが、当時中高生だった人で、ピストルズをヘタクソ と感じてた人はあまりいなかったと思います。最近はヘタクソなんてとんでもなかった!と いう話をよく聴きます。確かにスタジオ版しか聴いてなかった我々にとっては超ウマのバン ドでした。ギターを10回以上オーヴァーダブしたなんて話もしらなかったし...。これは当時 コピーした人だけがわかる感覚かもしれません(以外とキマった演奏をするのはむずかしい)。 77年くらいはフュージョンも全盛期で私もウェザー・リポートやRTFを中心にけっこう聴 きまくっていましたが、それらと比べてもピストルズがヘタクソなどと感じたことはありま せんでした(系統が違いすぎるが)。
シドはどの曲を弾いてるの? てなわけで、シドのベース、当時はうまいと思ってましたね。 グレン・マトロックが抜けたのは、まだ日本でピストルズのレコードが出る前だったので、 よくある、デビュー前のメンバー・チェンジくらいにしか感じてなかったと思います。んで 当然グレンよりシドの方がうまいんだろうな、なんて勝手に思ってました。 だって普通、デビュー前のバンドが、より下手なヤツとメンバーチェンジしたりしませんよね。 今や日本では、ピストルズの志村ケンとか諏訪信治とか言われているシドですが、この日本 での伝説の崩壊は、実はNMTBでほとんどベースを弾いてなかったことがわかった時点から始 まったような気も...。 ということでシドのベースはどの曲で聴けるのか、検証してみたいと思います。 現在シドが確実に弾いたといわれているのが2曲。GSTQとボディーズです。 関係者の証言を含めて、CLINTON HEYLINの本からひろってみましょう。この本自体がさまざ まなインタビューや関連本をもとにしているので、孫引きとなってしまいますが、ご容赦を。 1.スティーヴはアナーキーとボディーズ以外のすべての曲でベースを弾いた。(クリス・トーマス) 2.アナーキーはもちろんグレンが弾いたテイク。 3.GSTQは最初シドが弾いたが、あまりにもcrappy(原文ママ)だったので、スティーヴが弾き直した。 ただしシドの音もMIX INされているはず。(クリス・トーマス) 4.このGSTQ以降、二度とシドといっしょに録音しなかった。(クリス・トーマス) 5.クリス・トーマスは後の方は、ほとんどスタジオにいなかった。 レコーディングはビル・プライスと(多くの場合)スティーブ・ジョーンズで行っていた。 6.シドがベースを弾けなかったんでグレンを雇った。(ジョニー・ロットン) 後に撤回。グレンもオレが弾いたのはアナーキーだけと言っている。 7.ロットンはリズム録りの時は基本的にスタジオにいなかった。オケができてからやってきて歌った。 8.ロットンはサブミッションでのシドのベースを誉めている。 9.スカンジナビアのツアーから帰ってきた後、メンバー4人そろって久しぶりにスタジオに入った。 「ホリディズ...」はスティーヴがベースを弾き直した。「ボディーズ」はトーマスが シドのベースをミックスで(音量を)上げるより、ギターをかぶせる方向性でまとめた。 聴いてみてもわかるようにアナーキーはグレンが弾いてます。彼のリッケンバーカー4000 の音色は他の曲とはまったく異質。またちゃんとベースラインも考えられています、 その他のほとんどの曲はフレーズの出だしをずり上げるように弾くスティーヴのくせが認め られます。このベースはこれで、何本ものギターと重厚にユニゾンしていて、NMTBのヘヴィ ネス、前進力を高めているいいベースプレイだと思います。 ではシドは? とにかくGSTQは弾いているようなのですが、判然としません。トーマスの発言を信じれば ミックスはされてるのですが、2本のベースはきこえず、スティーヴらしきベースの音しか 認められないです。 アタックの部分の補強用程度でしょうか?このへんはビル・プライスに記憶を呼び覚まして もらうしかなさそうです。ですから、弾いてはいるが、ほとんど聞こえず、弾いてないのと いっしょ、って感じです。 で、問題はボディーズです。77年8月にアルバム用としては最後に録音されたもの。 このへんの録音に関してはトーマス、ロットンともあまりスタジオにいなかったようなので、 参考にしづらいのです。トーマスがいう1と4の発言、スティーブはボディーズを弾かず、シ ドとは二度と録音しなかった話をとると、じゃあスティーヴの弾いていないボディーズは誰 が弾いてるの?ということになってしまいます。やはりシド? そう思って聴くとボディーズのベースは他の曲よりルーズでラフなような気もしてきます。 ブーンブーンしてますし。 この本に書いてある9の説を信じて、やはりこれはシドが弾いたと思いたいです。確かにベー スの音量もおさえ気味にMIXされています。まぁ最終的にはやはりプライスに聞いてみるしか なさそうな気もしますが...(オレが弾いたとかいい始めたりして)。 8のロットンのいうサブミッションは別テイクの可能性が高いです。ロットンはアルバムに 入らなかったサブミッションの方が好きだったともいっています。 この別テイクは今や簡単に聴けるので、 スパンクの謎を追え! の方でとりあげたいと思っています。 没になった別テイクはベースのいい加減なグリスが目立つ、わりとルーズというか、確かに PILに感じが近いテイク。 結論としては 1.GSTQは弾いているが聞こえないので、弾いてないのといっしょ。この曲はスティーヴの ベースといった方が正しい。 2.ボディーズは弾いている。 3.その他の曲は弾いていない。 従って、NMTBで、これがシドのベースといいきれるものは最大限あっても、1.5曲?... 1.2曲くらいでしょうか?ま、ライヴではけっこう聴けるので、別にいいんですけどね。 <追記>2001/10/3 英MOJO誌の特集記事パンク・シングル100選の中に元ピストルズのポール・クックのインタビュ ーがあり、「ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン」の録音に関して興味深い発言をしています。大意は「 シドは録音の時、病院にいたと思う。オレとスティーヴで録音した。スティーヴがベースを弾き、ジ ョニーがヴォーカルをかぶせた」というもの。どうする、シド!また演ってる曲が減っちゃったぞ! これでNMTBでは残り1曲だ。
======================================================================= NMTBの完コピ盤 疲れてきたんでちょっとくだらないものでも。NMTBを丸ごとコピーしちゃった他のバンドの アルバムです。最近のCDでもトリビュート盤で似たようなものが出ています。 ピストルズでトリビュート盤作ろうとすると、アルバム1枚しかないんで、NMTBの完コピ盤 になっていっちゃうのはしょうがないとこです。 左の黒いのがボロックス・ブラザーズの「勝手にするとも!」。原盤は英チャーリーでこれは 日本のキング盤(83年/K28P407)。ボロックス・ブラザーズはジョン・ライドンの兄弟(兄 だか弟だか忘れた)がやってるバンドで12インチシングルなども含めると相当な数のタイトル が出ています。私も PRODUCED BY J.LYDONの表記につられてけっこう買ったのですが、面白 かったのはこの1枚だけ。 J. LYDONも、お、ジョン・ライドンがプロデュースか!なんて思っ たら大間違いで、どうやら兄弟のジョニー・ライドンのようです。 えっ?よくわからない?そうですよね、ピストルズのヴォーカルだったのは、ジョニー・ロッ トン=ジョン・ライドン。ジョニー・ライドンではないのです。ああややこし。 「勝手にするとも!」はオリジナルの11曲盤を完全コピー。シンセポップっていうか安手の ニューウェーヴバンド風。 右はスペインのなんだかわからないバンドの完コピ盤。12曲盤をコピってます。アレンジも編 成も同じの、ほんとのコピー。このバンド、なんか他にもタンゴとか、ミュージカル、映画音 楽集とか出してるみたいで、企画物のシリーズの一つかもしれません。スタジオ・プレイヤー の寄せ集めでしょうか?これが.....誰かディストーションのかけ方、教えてやってくれ〜!!っ ていうくらいわかってません。でも笑えます。 右のCDはNMTBとは関係なくて、シドのライブ音源です。100万回くらいCD化されてる例 のアメリカのライブで、内容は聴くまでもないのですが、ジャケのNMTBもじりがいかしてた んで買っちゃったもの。スイマセン。 下は中国パンクバンド、ドラゴンズ。 JP BARCLAY/LONDON L28B1030 龍革命/ドラゴンズ('82) 「アナーキー..」のカバーとしては、最も秀逸なもの?ではないかと思っております。上記FR盤 でご紹介した仏バークレーが原盤で、日本ではポリドールの発売。初版はステッカー付で、シ ングルも出ていました。 胡弓とギターとドラムという編成。ヴォーカルはラジオを聴いてコピーしたのでしょう、ほと んど歌詞を歌っていません。「アーイヤァイヤァ、アイヤヤヤイ!」って感じです。 ライナーに書いてある、再教育施設に何度も入れられたとか、地下活動していたとかが誇大情 報でないなら、彼らにとってはピストルズなんて甘チャンでしょう。 =======================================================================
シングル盤と音質 70年代後半のパンクムーヴメントは、シングル盤の復興を促しました。金のない若者のための 音楽、Do It Your Selfのスローガンと自主制作盤のリリースといったことがらがシングル盤の フォーマットと合致していたからです。ピストルズも例外ではありません。なので音質の検証 をしようとしたら、避けて通れないとこです。 とりわけNMTBはベスト盤といってもいいもの。シングルの寄せ集めです。特に「アナーキー・ イン・ザ・UK」などはシングル・リリースから1年近くたってからのアルバム収録になりま した。音の鮮度もけっこう違いそうです。 イギリスのオリジナル・シングル6種。これ以降はNMTBと関係ないため、GRRSのコーナー で扱いたいと思います。 1と2は「アナーキー・イン・ザ・UK/アイ・ワナ・ビーミー」。EMIから出ました。1が初 回のブラックP/Sつき。2がセカンド・プレスのカンパニー・スリーヴ(C/S)仕様。 3が発売中止になったA&M盤「ゴッド・セイブ・ザ・クィーン/ノ-・フィーリング」。 4以降はヴァージン盤。「ゴッド・セイブ・ザ・クィーン/ディド・ユー・ノウ・ロング」。 5が「プリティ・ヴェイカント/ノー・ファン」。オリジナルは右のブルー・レーベル。緑/赤 レーベルの再発盤もあります。 6が「ホリディズ・イン・ザ・サン/サテライト」。レーベルは左と同じブルー。ベルギーの旅 行社の観光パンフレットを勝手に使ったため、訴えられて回収処分。再リリースは白いスリー ヴになりました。 デイブ・グッドマンのプロデュースはIB(2B)、3B、5Bの3曲。後はクリス・トーマス。 グレン・マトロックのベースは1A(2A)、1B(2B)、3B、5Bの4曲で聴けます。 フランス盤のシングル。すべてバークレーから出ています。 最初に出たのが左上のGSTQ。英ジャケと違って、女王の鼻に安全ピンが突き刺さっているオリ ジナル(?)・デザインが採用されています。 イギリスでは流石にはばかられたのでしょうか? 「アナーキー...」はその後、「プリティ..」と「ホリデイズ...」の間に出ました。 上段左から2番目はその「アナーキー」。下段の12インチも出ました。 右上がフランスのみで発売された「サブミッション/ニューヨーク」のシングル。 おそらくフランス盤NMTBと同時くらいの発売で、この中では最後に出たもの。 写真上がGSTQ、下がアナーキーの裏ジャケです。GSTQの裏には「イギリスで禁止されたアナー キーがもうすぐ出ますよ〜」と書かれています。あざといです。「アナーキー」の表ジャケに もイギリスで禁止されました!ってしつこく書いてあります。思惑通りイギリスへ輸出されて バカ売れしたそうです。下がその「アナーキー」の裏ジャケ。「GSTQも出てま〜す」と書いて あります。 また「プリティ・ヴェイカント」はイギリスの裏ジャケ(Nowhere Bus)を表にもってきたデザ イン。 「ホリディズ...」の表には"nice sleeve"の文字があります(イギリス盤は裏)。 裏ジャケ。左がUK、右がFR フランスのバークレーはなんか一つでもいいから英国盤+アルファを要求していたのでしょ うか?考えられる話です。 フランス盤シングルの裏ジャケはNMTBのLP同様、謎のアルファベットがついています。 日本盤のシングルに関しては上記日本盤NMTBの項目をごらんください。
Anarchy In The U.K. 76年11月26日に発売されたピストルズの最初のシングル。 その後のリリースの混乱ぶりを象徴するかのように、工場にはプレスをボイコットされ、初版 はミスクレジット、翌77年1月には契約解除で早々に廃盤になってしまいました。 当時このシングルが、世界各国でどのようにリリースされ、どのように受け取られ、どのよう に影響を与えたのかは、パンク文化人類学的にはけっこう面白いかもしれません。 ちなみに当時世界各国のEMI系列で発売されたのは 1.イギリス EMI2566(初版はP/S付でミスクレジット プロモあり) 2.ドイツ EMI ELECTROLA 1C006-06294(P/S付ミスクレジット) 3.オランダ EMI 5C006-06294(P/S付ミスクレジット) 4.ベルギー EMI 4C006-06294(P/S付ミスクレジット) 5.オーストラリア EMI11334(ミスクレジット プロモあり) 6.ニュージーランド EMI2566 の6カ国のみ。フランスは上記のように半年以上後。残念ながら日本では発売されませんでし た。発売されていたら日本の音楽事情も多少変わっていたかも。 6カ国のうち、クレジットが正しかったのはニュージーランドのみ(なので後発?)。 ドイツ/オランダ/ベルギーの3カ国はP/S付で今やバカ高い。俗にアナーキー3種の神器とい われています。 当初はNMTBに入る予定がなかったようですが、やはりヴァージン側が何らかの形でリリー スしたかったのでしょう、急遽収録されることになりました。当時マルコムの秘書だったソフ ィーの日記に、アナーキーの収録についてシドに承諾をとるくだりがあります。やはりいくら ベースを弾いていないといっても、自分の加入以前の録音が出るのは抵抗があったのでしょう か? そのベースは前述したようにグレン・マトロックがリッケンバッカー4000を弾いたもの。ス ティーヴはギターを21回オーヴァーダブし、ロットンがヴォーカルを入れる時には1トラック しか残っていなかったとのことです(どういう計算なのかよくわからんが)。 初期の頃クリス・スペディングがギターを弾いていたというのは単なる噂。このへんはスパ ンクの項目で詳しく扱いたいと思います。 1が76/11/26 に出た英国盤の初版(EMI2566)。 イギリス盤はパンクのモノリスといわれる真っ黒なスリーヴ(これでもピクチャー・スリー ヴ)。一応ジェイミー・リードやメンバー達によって考えられた結果の模様です。パンク・ ファンなら持っていて損はないのですが、初版は5000円以上するので、安い2ndプレスを 買って自分で黒く塗りつぶしたジャケを作るのも一考? 第2版の2では普通のEMIのカンパニー・スリーヴになりました。 3は77/7 に出た仏バークレイ盤(640112)。前出の12インチもあります。 4は紙ジャケシングルCD?英ヴァージン CDT3(ようやく紙ジャケ登場)。85年に出た次 の5の復刻ですが、裏ジャケを表に持ってきています。 5が83年にようやくヴァージンから出たシングルの12インチ盤(VS609-12)。7インチ盤 (VS609)も同時発売。シングルCDも同時に出たと書いてある本もありますが、見たこと ないです。B面はNO FUNとEMIに変えられました。表は真っ黒で1と同じですが裏のデザイン が変えられています。 左が5の12インチ盤の裏ジャケ。右が3インチの紙ジャケCDの表です(裏は白に黒文字で クレジットを表記)。「EMI」からUNLIMITED EDITIONの表記がなくなりました。ヴァージン がEMIに買収されたからでしょうか? その他「アナーキー」の英シングルとしては92年にベスト盤「KISSTHIS」の発売にあわせて 7インチ及びマキシシングルCDの形式でVS1431(c/w"I WANNA BE ME"CD初版はポスター スリーヴ)が出ています。 NMTBの1年近く前にリリースされたシングルだけに、1.2の英シングルはアルバムより格段に 鮮度が高く、生々しい迫力があります。英ヴァージンの再発/フランス盤は12インチも含め て彫りが浅く、平面的です(CDよりましですが)。ということで英EMIオリジナルを聴き 比べてみました。 すべて英EMI2566で(オイオイ)、左から 1.PROMOレーベル。ミスクレジット。PSつき。マトリクスA1/B1。 2.1stレーベル。ミスクレジット。PSつき。マトリクスA1/B1。 3.2ndレーベル。修正クレジット。PSつき。マトリクスA1/B2。 4.2ndレーベル。修正クレジット。カンパニースリーブ。マトリクスA1/B2。 初版の有名なミス・クレジットとはAB面ともプロデューサーがクリス・トーマスとクレジッ トされていること。後からB面がデイブ・グッドマンが録音したことがわかり、差しかえら れました。 左が1、右が4のレーベル・クレジット 1のスリーヴには日付のプロモ・スタンプが押してある 3は盤のプレスが第2版になったのに、PSが余っていたころの過渡的なものだと思います。 多分「アナーキー...」のオリジナル盤の組み合わせはこれですべてでしょう。 音質は基本的にいっしょですが、3.4のB面のみ鮮度がやはり一段落ちます。 とにかくイギリスらしい音のシングルで、アルバムに比べてパンチ力が格段にちがいます。 特にB面の"I WANNA BE ME"はピストルズがストーンズ/スモールフェイシズ/フーの直系 のブリテイッシュバンドであることを証明するもので、このイントロを聴いて何も感じな いロックファンはいないでしょう。特にグレンのベースの入り方はゾクゾクします。 残念なことにこの曲はNMTBには収録されませんでした。SPUNK系のブートには収録されて いるのですが、ピッチが遅いので、音質/ピッチの問題を総合すると、このシングルで聴く しかなさそうです(CDは論外)。 ただこのUK盤シングルは期待する音質より少しくぐもった感じです。こもってはいないが、 曇っているように感じます。英EMIらしい上品でコシのある音なので、ピストルズにもっとワ イルドさを求めるとちょっと物足りないかもしれません(工場がプレスを拒否した影響か?)。 下の同時に出た独EMI盤ではそのへんの不満が解消されています。 ドイツ EMI ELECTROLA 1C006-06294 高音のバランスが整い、非常にいい音です。英盤よりじゃっかん彫りが浅くなっていますが、 その分ワイルドです。全体的に甲乙つけがたい音質。両方聴き比べると、多くの人がドイツ 盤に軍配をあげるかもしれません。特にB面はピカイチです。 なのですが、今や異常に高くなってしまっているのでオススメできません。探検隊も、じゃ あ同時に出たベルギー、オランダ、オーストラリア盤はどうなのか調べようとして西新宿な どに探索にいったのですが、あるにはあるのですがシングルのくせして1枚2.5万とかしてい ます。ネットのオークションでも1万くらいでは競り負けてしまう有様。 なんなんだ、一体、って感じで泣く泣くあきらめました。まぁきっとドイツ盤と同じなん じゃないかと思います(負け惜しみ)。 なお同時に出た全世界6ヶ国盤のうち、クレジットがなおっているのは英2ndとニュージー ランド盤のみ。後はミスクレジットのまま2ヶ月弱で廃盤となりました。 ドイツ盤もミスクレジット このへんの各国版シングルに興味のある方は"RETROSPECTIVE"という本か、レココレ95年 6月号に掲載された森脇美貴夫氏のコレクションをごらんになることをオススメします。 本で眺めるだけで満足しましょう。決して今から買おうと思わない方が....。
God Save The Queen GSTQが英で発売されたのが77/5/27、日本では前述したように同年9/2のこと。よう やく日本でも発売されました。 当初はA&Mから77/3/25に発売される予定だったものです。 上段左端はその発売中止になった英A&M盤(AMS7284)。B面はグッドマン・プロデュ ース(スパンクヴァージョン)の"NO FEELING' "。なぜかSがないです。 25000枚が製造され、現存するのは100枚程度といわれていますが、よくわかりません。 スリーヴはカンパニー・スリーヴで2種類あるようです。一つはこの写真のA&Mの文字が 太くカクっぽいもので、もう一つが上の方にのせた写真の文字が細くなめらかなタイプ。 GRRSの内ジャケは後者のタイプ。私が入手した時もそのスリーヴでした。ま、どっち でもいい見たいです。 98年に元A&Mの重役から少数放出されたものもあります。これはブラウン・スリーヴ に入っていてプロモ・シート付。プライスガイドで2500ポンドと書いてあります。ヒョ エエエ。ちなみに普通?のものは2000ポンド(36万相当)にまではねあがっておりま す。パンク系のシングルでは最も高いのではないでしょうか。 後はB面が「DID YOU NO WRONG」で両面ともクリス・トーマスのプロデュース。 上段中央がUK VIRGIN(VS181)、右端がFR Barclay(640106)。 下段左端がJP Columbia(YK-90-AX)、中央がそのレコード袋とレーベル。 下段右端がUK VIRGIN(CDT37)が88/12に出した紙ジャケ3インチCDシングル。ジャケ は見開きになっていて、カップリング曲にDON'T GIVE ME NO LIP CHILDが追加されていま す。GSTQの紙ジャケシングルとしては90年代のベルギー盤もあるとのことです。 問題はA&M盤の音質。そんな30万以上するほど違うのか、といえばそれほどは流石にち がわないのですが、印象は全く異なります。リミッターのかかり方がまったくといって いいほど違い、全体に音圧が高く、バシッとした音です。 音が違う?A&M盤GSTQ B面の"NO FEELING' "もスパンク系の音とはかなり異なります。おそらくこれが正常なピ ッチ。強力なリミッターがかかり、ヴォーカルがやたらなまなましくて、一瞬別ミック ス?と思ったほど。 この曲はピストルズの悪名高き会社訪問の際、A&Mの社長デレク・テイラーが、 「うわぁ、なんだこいつら、早く追い出さなきゃオフィス破壊された上に、OLみんな犯 されちゃう!...もう、いいや、これでいいや、B面これ!早く出てってくれ〜」 とあわてて選んだものだそうです。にしてはいい選曲です。 で、英VIRGIN盤。NMTBより全然いいのですが、A&Mよりかなり甘い音になっています。 ソフィーの日記に、マルコムが「A&Mがマスターかえしてくれない〜」とあせっているく だりがありましたが、まさか.....。 手元にMATRIXがA1/B1のファーストプレスとA6/B6の後期プレスがありますが、さすが に後者はもう音がボケてきています。ファーストプレスは、上記A&M盤は反則だと思いま すので、その他のGSTQのレコードの中では最もいい音。 フランス盤は音質が変わってしまっています。なんででしょう。 日本盤はまたしてもUKに迫る音質です。 「プリティ・ヴェイカント」、「ホリディズ・イン・ザ・サン」も同様。 英ヴァージン>日コロンビア>仏バークレイといった感じでしょうか。 全体にやはり同国のLPよりシングルの方が音圧が高い音に仕上がっています。
その他シングル ピストルズにはその他にも変なシングルがいっぱい出ています。 まぁほとんどガラクタのようなものですけど....。 SUBMISSION 日本人にはなじみの少ないサブミッション。前回の紙ジャケ比較検証でも述べましたが、 どうもこの曲が入ったNMTBには違和感を覚えます。勢い、スピード感が殺されている感 じがするのです。日本では結局コロムビアからリリースされず、82年のビクター盤NMTBが 発売されるまで聴けなかった曲。 上段左端はUK1の付録と同じ英VIRGIN盤の片面シングル(VDJ24)。写真のようにヴァージ ンのカンパニー・スリーヴに入った状態でよくうられています。 上段中央がフランスのみのシングルカット(640137)。77年10月発売。B面はニューヨ ーク。 上段右端。アメリカではプリティ・ヴェイカントのB面として発売されました(WBS8516)。 ジャケのはぐき男は、これもジェイミー・リードのデザイン。 下段は85年に英CHAOSレコードから発売された12インチシングル(CARTEL1T)。B面は ANARCHY IN THE UKでどちらもデイブ・グッドマン録音のデモ・ヴァージョン。カラーレコ ードで色は7〜8種類くらいあります。ちなみに写真のものは白。 さてこの曲。ロットンが気に入っていて、最終的にアルバムいれたがったのもロットンだと いう説があります。ピストルズの初期から存在するレパートリーなのですが、NMTBに収録さ れたものは、すでに勢いのない無機的な感じが強い演奏。オルタナ感もあります。そういう 意味ではロットンのPILへつながる方向性がうかがえます。ただやはり個人的にはNMTBに は不向きだと思います。ロックンロールの爽快さが残っているのはどちらかというと下段の 12インチに収録されたデモの方。グレンのベースが痛快です。こっちのヴァージョンが NMTBに入っていたらそんなに文句はなかったのですが。 音質的にはやはり英片面シングルが一番。12インチのデモもこのテイクを収録した盤の中ではい い方です。 こちら80年12月に発売されたシングル6枚組パック。 上が英盤SEX1。未発表曲2曲が入っていますがロットンぬきのお遊び曲。聴いてもしょうが ないです。カップリング曲やスリーヴのデザインはオリジナルと変えられているものもあり ます。アナーキーのシングルは、この英国フラッグジャケでの再発もあります。 下のNMTBのジャケを模したBOXがギリシャ盤(VG008/013)。中身はいっしょですが、カ ラーコピーのような内袋、ひどい盤質。オフィシャルではないとの説もあります。 右端が92年11月にリリースされたPRETTY VACANT/NO FEELINGSの再発シングル(VS1448)。 表がダイアナ妃、裏がファージーをGSTQ風にあしらったものですが、これは単なる悪趣味に しか感じられません。
CDの音質 さてそれではNMTBのCDではどれがいいのでしょう?音質的に満足がいくものはあるでしょう か?そんなにたくさん持っていないので申し訳ないのですが...。 上段左端が日本VIRGIN JAPAN(VJD28093)。日本で3番目のCDだと思います。ちなみに 最初が86年の32VD1011、2回目がVJD110だと思います。 上段中央が99/1の日本東芝EMI盤VJCP17525。99/1に出た廉価盤で変テコなカバーがついて います。デザインは85年のCDリリースの時のものを使用。 上段左端が英VIRGINの21周年記念デジパック(CDVP2086)。98/10/28発売。 下段左端が日本VIRGIN JAPANの再結成来日記念スパンクボックス(VJCP36065/6)。96/9発 売で2枚組。1枚がNMTBで、もう1枚がスパンクを中心にしたデモ集。他にカラオケ・シングル、 ステッカー、Tシャツ付き。ナンバー入り限定品なのですがいまだに新品で売ってます。 下段中央がその2枚組の英盤(SPUNK1)。こちらはオマケなし。 下段右端がいわずとしれた日本の紙ジャケ (VJCP68050)。99/3発売でポスター付き。 下が米WARNERの3147-2。CD初期のロング・ボックス入り。曲順は頑なに米国仕様です。 さてこの中で音質的に唯一許せるのが98年の21周年記念デジパック。オリジナル・アナロ グ・マスターからリマスターしただけあって、他のCDとは段違いです。解像度もなかなか いいです。 紙ジャケはこのリマスターの後に出たのに、何故かそれ以前の悪評高いEMI100周年記念 のリマスターを使っているようです。盤面にもLPCENT20と、100周年記念アナログの番号 がついています。この音ではとうていピストルズを聴いた感じはしません。 左から21周年記念アナログ、デジパックCD、日本の紙ジャケ 後、どうでもいいCDの群れ。 上段は左がプリティ・ヴェイカント(95)、右がアナーキーのマキシシングル(92)。 別テイクなども入っていますが、上記スパンクボックスにまとめられました。 下段左から96年再結成時のプリティ・ヴェイカントのプロモCD。灰色の7'盤あります。 中央がアメリカのカラオケ+インタビュープロモ(DPRO11549)。右が英プロモ(SEXDJ96)。
日本編集盤 アルバムを1枚しかだしていないくせに、ピストルズにはたくさんの編集盤、ベスト盤があり ます。ここまでくると音質はどうでもいい感じです。下は日本の編集盤。 上段左は79年に日本コロンビアからでた「ザ・ベリー・ベスト・オブ..」(YX7247-AX)。 発売当初はバカにしていたのですが、今あらためて考えてみると、ピストルズのベストでも 世界最高のもの。シングルのAB面と当時の未発表曲2曲を収録しています。名前を「シン グルズ&アンリリースト」にしておいてくれたら、もっと早くこの価値にきづいたと思うの ですが。 上段右が83年にビクターから出た「ザ・ベスト・オブ...」(VIL6024)。英VIRGIN盤 「Flogging A De ad Horse」のジャケ違い。内容的には無価値。どーでもいい編集盤です。下 段のCD左から、92年のメンバー監修リマスターによる「KISS THIS」(VJCP35035/6) 写真は初回盤で、スェーデンでのライブCD、Tシャツ付きBOX仕様。リマスターの程度 はイマイチ。英盤は2枚組LPもあります。 下段中央は98年3月に東芝EMIの「ザ・グレイテスト...」シリーズででたもの (VJCP51042)。日本オンリーだが内容的に特筆すべき所はなし。 下段右端は、94年4月にテイチクから出た「レア・ベスト」(TECX20699)。内容はレア でもベストでもないおそろしい代物で、既発の「俺達に明日はない(NO FUTURE UK?)」から 2曲ぬいて、「オリジナル・ピストルズ・ライブ」から3曲加えただけ(2枚とも原盤は英 RECEIVER)。しかも解説は間違いだらけ。さらにいわせてもらえば、「俺達に明日はない」 はブートLPからの盤起こし(!)です。 ということで編集盤、ベスト盤のたぐいで価値があるのは日本コロムビア盤くらいでしょうか 後海外では、オーストラリアTELMARK盤などが面白いです(このへんは後ほど)。
とりあえずまとめ ま、やっぱり英シングルが一番いいんですが、聴くのがメンドーなので、ピストルズを聴くな らUK盤NMTBか、日本コロムビア盤NMTBっていう普通の結果になりました。 しかし、NMTBは77年にしては多種多様で面白いです。原盤配給をレコード会社ではなくマル コムのグリッター・ベストが行っており、しかも極力VIRGINに任せないようにして、国によっ てレコード会社を変えていたという珍しい理由からだと思います。 そして、このグリッター・ベスト。最初の「アナーキー..」のシングルで味をしめたのか、リ リース時の混乱を意図的に演出していきます。 次のスパンク系、GRRSはさらに混乱が増していくのです(ほとんどワルふざけ)。 このへんはまだ未完成ですが、また後ほど(スイマセン)。
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