そういう不思議な現象に出会ったときに、といって特別自分に霊が見えるというわけではないのだけれど、と前置きした上で語ったことによれば、つまり彼女には、
<何をどうすべきか> がわかるのだという。
「私って、ほんとに情けないぐらい、不思議なもの見たり聞いたりしたことないのよ。だけど、なぜか <霊感の強い友達> <見えちゃう> 人と友だちになったり知り合ったりして、霊が見えるとか悪い気配がするなんて話を聞くことになるの」
小学生のころ、俗に言う <霊感の強い友達> がいたのだという。そのころ登下校で通る交差点が <魔の交差点> などと呼ばれて、地元の噂になっていたのだが、見通しのよいわりに事故が絶えず、先立つこと二年前に起きた轢き逃げ事故が原因ではないかとまことしやかにささやかれていた。友達はその場所を通ることを極度に恐れており、ある日、ついに、透明なひとが立ってる!と叫んだまま気を失ってしまった。すずねの眼には
<透明なひと> は見えなかったが、風に吹かれて街路樹が立てる葉音が妙に耳に残った。
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