本作は日本映画だが、監督を手掛けたのは、韓国人監督のクァク・ジヨン。日本でも大ヒットを記録した『猟奇的な彼女』や『僕の彼女を紹介します』の監督として知られている、韓国映画界有数のヒットメイカーだ。
未来からやって来た美しい女サイボーグと、気弱で真面目な青年が織り成すSF仕立てのラブストーリーという筋立てそのものは、決して目新しいものではない。しかし、実際に鑑賞してみると、これが今までの純正日本映画には見られない語り口を持った作品で、実に新鮮に楽しめるのだ。 <韓国の映画監督が単身来日し、日本映画を撮る> という斬新なアイデアは、固定してしまったスタイルを解きほぐし、新たな血を注ぐことに成功している。
本作には徹頭徹尾のクァク・ジヨンらしさが漲っており、その作家性は他の追随を許さない独自性を誇っているが、その一方で、大規模なオープンセットを組み、大迫力のCG映像による大スペクタクルシーンを盛り込んで見せたり、ノスタルジー溢れる感動の一幕を設けたりと、娯楽作品としてのツボもきっちりと抑えているのが嬉しい。
正直なところ、序盤では綾瀬はるか扮するサイボーグのあまりに非常識な行動に気分を害してしまい、一体、この先どうなることかと不安になったものだが、以降、グングン良くなる。そういえば、『猟奇的な彼女』も、本作と同じ語り方で、まず観客の理解を求めることなく、序盤で徹底してキャラクターを紹介し、観客がゲンナリしきってしまう直前で物語を上昇気流に乗せてしまう。そのタイミングが絶妙で、その後は安心して楽しめる。それがクァク・ジヨン監督の持ち味なのだ。本作もその例に漏れず、中盤以降は、視覚的にも感情的にも息をつかせない。笑いと涙と緊張の一大エンターテインメントが貴方を待っているのだ。
<乱暴なまでに強い女性像と、情けないまでに弱い男性像> が、やがて両者の成長を呼び、次第にお互いがかけがえのない存在になっていく物語。即ち『猟奇的な彼女』SFバージョンと言える作品なのだ。その証拠に、本作の小出恵介は『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョンにそっくりで、そこもまた面白い。
『猟奇的な彼女』にハマった人、ありきたりの映画に飽きてしまったという人に特におすすめしたい。
僕の彼女はサイボーグ http://cyborg.gyao.jp/
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