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堀江貴文容疑者が逮捕され、ライブドアが上場廃止になる公算が高まっている。ライブドア社の株価は大幅に下がって時価総額は8分の1近くになり、市況全体にも影響を与えた。しかしながら、ホリエモンがテレビに登場することはなくなり、容疑が確定するなり、ライブドア社が解体するなりして、事件にまつわる進展がマスコミを賑わすことがあっても、次第に人々は堀江貴文のことを忘れていくだろう。 堀江貴文の身辺に起きたことによって、あるいは彼が起こしたとされることが発覚したことによって、マーケティング論批判序説の進め方にも迷いが出てきた。選択肢のひとつは、当初の予定通りに「勝ち組・負け組」の考え方に話を進めることであり、もうひとつの選択肢は、株式というものの考え方に話を進めることである。堀江貴文の経営は時価総額経営と呼ばれ、会社の資産である発行株式に株価を掛け合わせた会社の評価総額を元に他社の買収(M&A)を重ねて膨れ上がってきたものだ。今回、堀江が容疑をかけられているのは、この株価を吊り上げるために虚偽の情報を流したというものであるが、実際の会社の業績とは離れたところで、投資家の期待を煽って株価を吊り上げるその経営のやり方を虚業と呼ぶ者もいる。しかし、虚偽の情報を流したのでなければ、投資家に期待を持たせること自体は犯罪ではない。それどころか、この素人には不可思議な株式の世界は、資本主義の精神そのものである。 しかし、株式の話は後段にゆずって、当初の予定通り、「勝ち組・負け組」 の話にコマを進めよう。勝ち組・負け組みとは、元来は第2次世界大戦における日本の敗戦後、ブラジルへ移民した一部の日本人の間で日本の敗戦を信じず、日本の勝利を主張して敗戦を認めた人たちと争ったことから由来している。もちろん、今日この言葉が使われている意味は、自由経済が進捗することによって、経済活動を行っている人々の間に経済格差が生じることを指している。例えば商売に成功し利益を得たものは、その利益を店の拡大や出店に投じてさらに利益を拡大していく。逆に、商売に失敗したものは、その商売を縮小するか、商売自体を続けられなくなって、他の店の軍門に降るかもしれない。こうしたプラスのフィードバックが、経済格差を拡大していくだろう。従来、この経済格差の拡大はさまざまな規制によってその進行を抑えられていたが、マーケット・メカニズムを完全に機能させるためにはこの規制を緩和し、あるいは撤廃しなければならない。そう主張する中谷巌や竹中平蔵や、そして小泉首相の構造改革によっていまや格差は拡大し、そのことが逆の弊害を起こし始めていると語られ始めている。 この連載を始めたころには、小泉の勢いが格差社会の拡大を懸念する声を圧倒していた。小泉の退陣が近づく中、堀江逮捕という逆風が吹いて、大きな流れの中に逆流が生じている。では、小泉が棹差した流れは止まることを知るだろうか? 事態の推移を、もう少し丁寧に見てみることにしよう。 |