「赤くなって腫れてオデキみたいになってますね。これじゃあ汁が出るでしょ。夜寝るときも痛むでしょ。」
「ええ」
「綿棒でぐりぐりやりすぎてませんか?」
「はぁ、多少……」
「水は勝手に蒸発するから、気にしてほじくりすぎないように」
と、薬を塗られ、綿を詰め込まれた。
「片側だけにしときますね。両方だと何も聞こえなくなっちゃうから」
頭がぼうっとする。
「まあよくはないんだけど……」
とは言われたけれども、海もプールもとりあえず許可が出て、5日分の飲み薬をもらった。それからバイト先のプールに行く。
脈拍に合わせていやな痛みがする。待合室の張り紙やポスターを眺めて気を紛らわせながら、背もたれの直角な堅い椅子に座っていると、診察室のドアがあいて、
「『たしぎ』ちゃーん、どぉーぞ」
自分が呼ばれたのだとは、思わなかったが、再び呼ばれて顔を上げる。看護師と目が合って、向こうはちょっとだけばつの悪そうな顔をする。
「あ、お名前がかわいいから小さいお子さんなのかと思いました」
「はぁ……すいません」
なぜかわたしは謝ってしまう。
そして診察。医者が言う。
終わるころには、綿が濡れてふくれて、痛みもうっとうしさも最高潮に達する。仕事を終えて、スポンと綿を抜くと、うっとうしさは取れたけれども、かゆみがどっと起こる。
いたた! いたがゆい! かゆい! でも綿棒禁止!
むずむず。むずむず。むずむず。
こんなことを繰り返しているうちに、サーファーズイヤーというものになるのだろうか。
2007年7月2日号掲載