「まだ、捕ってるのか。お前、もう二年生だろう。」
二年生だからどうだというのだと、ちょっとむくれて睨み返した。
「捕まえて、どうしてるんだ。」
僕は、言えなかった。自慰の前戯に使っているなどとは、言えなかった。
「今日も捕まえに来てたのか。」
僕はまた、頷いた。しかし、そうする間も股間の痒みが治まらず、我慢が出来なくなり、スカートの下から手を差し込んで、パンツの上からそっと掻いた。タカオが僕の手の動きを、じっと見つめていた。少しだけ恥ずかしいと思ったが、手は止まらなかった。
「捕まえた尺取虫は、どうしたんだよ。」
言おうか言うまいか暫く悩んだが、黙ったままで居るとまた聞かれるだろうと、ぽつりと答えた。
「あっちに、居るよ。」
「何処だよ。」
「砂のとこ。」
タカオは、ついて来いと言わんばかりに顎をしゃくって、先を歩き出した。僕は仕方なく従った。
掻けば掻くほど痒さが増して、どうにもこうにも堪えられなくなってしまい、もうお構いなしに、ぼりぼりと掻き毟っていた。気持ちよさと、痒さと、掻きすぎた為のひりひりとした痛みとが綯い交ぜになり、恍惚とさえしてきて頭がぼうっとしてしまい、タカオの後ろをフラフラとついて行った。
タカオが砂山で立ち止まってしゃがむと、僕が開けた穴を覗き込んだ。
昨日開けた穴だった。タカオは、死んでしまった尺取虫を、どう思っているのだろう。
「これか。」
「うん。」
硝子の蓋に気づいたようで、それを摘み上げて、また中を覗いた。
「これもか。」
「うん。それは、今日捕まえたやつ。」
「じゃあ、こっちのは。」
「昨日、捕まえたやつ。」
「なんで、死んじゃってるんだよ。」
答えられなかった。
タカオは、振り返ると僕の顔を見てから、視線がスカートに移動した。
見られているというのに、僕は止められず、音まで聞こえそうなほど掻き毟(むし)った。
「痒いのかよ。」
「うん。」
タカオは僕の手の動きをじっと見つめながら、ちょっと押し黙った後、こう言った。
「小便したら、治るぜ。」
2009年10月27日号掲載