「スーはな、ハンバーグとゼリーしか作れないんだ。ありがたくいただいておけ。」
「スーもくるくるなの?」
ブランカが尋ねた。
「くるくるは、カイエだけで充分だ。」
「施設には、くるくるがいっぱいいたよ。カイエはそのなかぢゃ、マシなほうだったな。」
カイエはハンバーグを囓った。テーブルマナーもなにも、あったものではない。コフィはビールとカプセルを飲んだ。
「コフィはスーが好きなの?」
ブランカが尋ねた。
「ただの友だちだよ。ときどき、占いをしてもらう。スーは占い師なんだ。」
「ぢゃあ、僕も占う。あんたは近いうちに死ぬよ。」
カイエはブランカを指で弾いた。
「なんてこと云うんだ。失礼だぞ。」
「ふん、オレがもうじき死ぬ、か。」
コフィは缶ビールをぐっと呷った。
「死ぬのは歓迎だな。カフィのところへいける。」
「僕はコフィが死ぬの、ヤダからね。」
「オレはいつかは死ぬよ。でも、今ぢゃない。心配するな。」
カイエは三種類目のゼリーに取りかかっていた。
「ここは天国みたいだ。検査も、暴力もないんだもん。」
「なんのために検査する?」
ブランカが顔を出した。
「こいつは、くるくるだからわからないとおもうけど、臓器ブローカーが若くてイキのいい臓器をプールしているんだよ。くるくるなんてそれくらいしか使い道がないだろ。」
「冗談だろ。」
「羊は冗談を云わない種族だ。」
コフィは缶ビールを口から離して、考え込んだ。その間にも、カイエはゼリーを頬ばっている。メロンゼリーだ。
「決めた。おまえをオレの養子にする。」
「なんで?」
「そうしなきゃ、おまえを守ってやれない。」
メロンゼリーをつるっと飲み込んで、カイエは笑った。コフィの云うことはよく理解できなかった。ただ、コフィが自分を愛してくれているのはわかった。
2008年12月15日号掲載
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