「取りあえず、電気ショック十回が待ってる。それだけは確かだ。」
「よく戻ってきたな。」
天井のスピーカーから声がした。
「よろこべ。おまえの肝臓の適合者が見つかった。今週ちゅうにはオペだ。」
「僕はどうなるの?」
「死ぬさ。おまえらみたいなクズを、なんのためにプールしてあるとおもっている。」
「電気ショックは?」
「今からだ。」
電気ショックは見せしめのために、子供たち全員にテレビで公開される。カイエは、泣き叫びながら引きずられていった。
次に気づいたのも、また懲罰室だった。こめかみに火傷の痕が残っているのが、鏡を見なくてもわかった。
「コフィ。僕が裏切ったとおもうかな。」
「さあね。」
「コフィ、」
「めそめそするな。めそめそするのは僕の役目だ。」
ブランカが云った。
「だって、コフィは大事な制作ちゅうなんだ。僕を探しているヒマなんかない。」
「否、コフィを信じるんだ。きてくれる。必ず。」
ブラウンが、云う。
「でも、愛徳園という名前しか教えていないんだよ。何県か、何区かも、僕自身知らないし。」
「それでも信じろ。肝臓を抜かれる瞬間まで信じろ。」
「ブラウンは、強いなあ。」
「きみが弱すぎるだけだ。」
ドアの下部の挿入口から、食餌の乗ったトレイがシュッと入ってきた。これは、十分以内に食べなければ引き戻される。カイエは、動物のように食べた。十分ぴったりで、トレイは引き戻されたが、カイエは残さず食べたあとだった。
カイエはそれから数日に渡り、脳波を採ったり、MRIで躯を覗かれたりと、あらゆる検査を受けた。
「ぜんぶ、正常値だ。安心して使える。よかったな、九五四二〇八八。」
「僕が感謝するとでもおもってるの。」
「この野郎、」
白衣のスタッフは、カイエの頭を殴った。カイエはよろめいた。
「その辺にしとけ。大事なドナーさまだ。」
「けっ、内臓さえ無事なら、もうどう扱ったっていいんだよ。こいつ、きれいなツラしてるじゃん。今夜はケツを借りるぜ。」
「おまえも好きだな。」
「ほかに楽しみもねえしよう。」
ふたりは、懲罰室にカイエを押し込むと、鍵を掛けた。
2009年1月7日号掲載
p r o f i l e | ▲ |
▼ |