「魔女のくせに、魔眼はないのかい?僕たちが宿っているから、マスコットはくたびれないんだよ。」
「魔眼と引き換えに、取り引きをしようとしたのよ。カフィを生き返らせようとしたの。でも、失敗して、魔眼だけ失ったわ。」
「マヌケなんだね。」
「なんですってえ、」
スーが手を伸ばしたので、カイエは慌ててブラウンを握った手を引っ込めた。
「マヌケ、マヌケ、」
「黙れよ、ブラウン。スーは僕たちのために呪いをかけてくれるんだよ。」
「ココアをもう一杯。」
スーが云った。カイエは、胸ポケットに二体を押し込んで、ココアを作りはじめた。
「あんたが、三枚もいっぺんに出すなんて、珍しいわねえ。」
「それだけカイエが大切なんだ。」
「カフィぢゃなくて?」
「カフィぢゃない。カイエだ。」
「ふうん。でも、きみは変わったつもりでも、本質のところは変わっていないのよ。きみに必要なのは、カフィだけなのよ。」
「余計なお世話だ。おまえ、カイエを追い出したいのか?」
「僕、出ていかないよ。コフィのこと好きだもん。火星探検だってする仲なんだもん。火星には、まだ誰も招待したことがなかったのに。」
「火星?」
「そうだよ。火の星だよ。僕のポケットには惑星が入っているんだ。」
「やっぱり、きみ、くるくるね。」
「メェ。カイエは純真なだけなんだ。子供のころに皆が棄てた宝物を、棄て損ねただけなんだ。」
ココアを飲んで、荷物を受け取ると、スーは戻っていった。
「彼女、ほんとうに魔女なの。」
「二週間後には、わかるさ。」
「先生たち、歩けなくなるの?」
「当然の罰だ。」
ブラウンが、
「異存はない。」
と、云った。
2009年2月16日号掲載
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