孫を守るため、孫の力を封印し闇の世界の手を退け、緑は持てる力のすべてを使い果たした。今も要の額にうっすらと残る星型の傷跡は、封印された力の証である。
要の世界に愛と温もりが流れ込んできたのはそのときからだった。彼は人の世界を取り戻した。五歳になるころには、まったく普通の子供とは変わらぬ成長を見せていた。何を意味するかもわからない巨大な力は封印され、霊的な気配を見聞きし、感じる力のみがわずかに残った。その力とともに生きていく方法を教えてくれたのは、見るかげもなく病み衰えた緑だ。
驚くほどの若さと美貌は、力を使い果たしたと同時に失われ、そのころには年齢よりはるかに老け込んでいた。 <清いもの>
と <汚れたもの> の見分け方、 <強い力> にとらわれそうになったときの逃れ方、そして何よりも、見たもの聞いたものをおのれの胸の中一つにおさめておくこと。教えられることはすべて教え、要がこの力とともに生きていけると確信したとき、緑は世を去った。要が八歳のときである。しかし、要の記憶の中の緑は、亡くなる直前の老婆ではなく、人としての世界にすくい上げてくれたときの、光背に囲まれて輝く美しい姿だった。
だから自分は祖母に教えてもらったことを守りそのとおりに生きてきた――要は生まれて初めて祖母の戒めを破り、以上のいきさつをすずねに話した。
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