初めて会ったとき、むこうから歩いてくる彼を見つけて、おたがいにすごく幸せな笑顔が、自然に出た。
あれから6年。
いつもおたがいの存在を心に残したまま、いろんな人と出会っていろんなことがあった。
そうして離れていても、私たちは、お互いを必要とする気持ちが、きっといつか、ふたりを巡りあわせて、再び結び付けてくれ、ずっと死ぬまで一緒にいられると、そう思っていた。
だけど、気付けば、わたしはいつも同じ理由で、彼から逃げ出した。
なんども再会して、わたしはいつも逃げ出した。
そして今回も。
これで終わりにしようと思った。
彼から永遠に逃げ出すことを決めた。
中途半端に想っていなかったからこそ、決断の意味は大きくて、彼の幸せを願う気持ちも大きくて。
彼を解放したい。
わたしがこれから出会う罰や不幸せは、反対に彼を幸せにすると信じたい。
わたしは、彼の、静かに流れる愛情を、刺激とは縁のない穏やかな生活を、自分の望むものと 思えなかった。
わたしは、今にも切れそうな細い線や、激しくてすぐに燃え尽きてしまいそうな短い恋や、震えの止まらないセックスや、神経をすり減らすような疲労や、そういうことを繰り返して生きていく。
彼に恋をして、ほんとの自分をみつけてしまった。
ひとつ恋を終わらせる、静かに少しづつ、わたしを落としていく。
2004.9.14(火)
2007年2月26日号掲載
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