p r o f i l e

 

2006年5月の連休中、4日の夜にアストロが、土浦のクラブr-fox のイベントを企画した。2回のダンスフロアと1回のラウンジで回すことになったが、私は1回のラウンジでやることを頼まれた。

 アストロラウンジではわたし以外にも店で回しているDJがいて、わたしのように毎週やっている人もいるし、たまに来る人もいるらしいが、それらのDJたちを全員集合させたイベント。わたしは、他のDJをあまり知らないので初対面のDJたちと挨拶する。もっとも皆20代で、わたしのようなおじさんDJはいないので、変な感じ。

 ラウンジと言っても皆結構大きな音量でかけたがる。クラブ側としては、メインフロアは防音してあるからいいが、ラウンジには防音をあまりしていないので、近所へはばかって、あまり大きな音を出したがらないので、DJたちと駆け引きになる。結局スピーカーの台数を制限された。

 DJたちの傾向は様々。わたしのようなエレクトロニカ寄りの人ばかりではない。

 わたしはその時のプレイリストをアストロラウンジで5月9日に再演した。以下がそのリスト。


01
Prince Rock / Ultramarine
何度もかけている Ultramarine 。これは United Kingdom(1993)というアルバムから。

他のアルバムとしては、Every Man and Woman Is A Star(1992)、Folk(1994)、User's Guide (1998) がある。他にもあるはずだが、いまわたしの手元にあるのはこれだけ。アマゾンで調べると結構なプレミアがついているものもある。わたしの感じでは、初期のものの方が良い。

02
Back to Brazilia / Cabaret Voltaire
イギリス・シェフィールド発のノイズ/インダストリアルのバンドとして出発したキャバレー・ボルテールは、中期にはエレクトロニカの方に進む。これは中期の Placticity (1992年)から。Plastex というレーベルからでている。アマゾンのカスタマレビューによると、このレーベルからこの時期4枚出しているらしい。

03
Thin Air / Magazine
マガジンは1970年代後半から1980年代前半まで活躍したバンド。ボーカルはHoward Devoto。彼はその後ソロになる。

この曲は、彼らのセカンドアルバム Secondhand Daylight(1979年)から。
このアルバムは評価が極端に分かれている。ハワード・デボート自身も「凝りすぎた」と言っているというのをどこかで読んだことがある。だが当時阿木譲は「ロックマガジン」誌上でこのアルバムを高く評価していたはず。わたしも同意見。ジョイ・ディヴィジョンなどに通じる雰囲気を持っている。

04
Two Soldiers / David Byrne
The Talking HeadsのメインマンDavid Byrneのソロアルバム The Catherine Wheel (1981年)から。バーンとしては初のソロアルバム。モダンバレエのダンサー、トワイラ・サープのトワイラ・サープ・ダンス・ファンデーションのバレエ公演 The Catherine Wheelのために書いた曲から選んで作ったのがこのレコード。したがって抜粋的な構成になっている。(ちなみにCDは完全盤。)

実はわたしはトーキング・ヘッズも、デビッド・バーンも全てが好きというわけではない。だが、この時期のトーキング・ヘッズ、デビッド・バーンはすごかった。1980年のRemain in light(The Talking Heads)、1981年の My Life in the Bush of Ghosts (Brian Eno - David Byrne 共同名義)、そしてこのソロアルバムをわたしはセットで考えるべきだと思っている。

05
Als War's Das Letzte Mai / DAF
DAF ( Deutsch Amerikanische Freundschaft) の Alles Ist Gut (1981年)というアルバムから。重低音のハンマービート。DAF のことはあまり詳しくないので、説明は省略しておこう。詳しいことはそのうちに書きます。少しだけ書くと、日本にこの手のジャーマンニューウェーヴを紹介したのはやはり阿木譲氏だったと思う。ファクトリーレコーズも元気がなくなり、ファクトリーのベルギー支店だったファクトリーベネルクスが、レ・ディスク・ドゥ・クレプスキュールになり、いわゆるネオアコといわれる潮流が現れてくる中で、次に元気なのはドイツだ、ということでドイツに注目していた時期だったと思う。

プロデュースは才人コニー・プランク。今は亡い。

06
Riot in Logos / Ryuichi Sakamoto
坂本龍一の初期の傑作。B2-Unit(1980年)から。YMOと平行していたソロワーク。

07
Fractal Zoom / Brian Eno
1992年のアルバム Nerve Net から。クレジットを見ると、ロバート・フリップ(!)も参加しているらしい。

08
Just Once / Anna Domino
イザベル・アンテナと並ぶクレプスキュールの歌姫。わたしはアンテナよりもアンナ・ドミノの方が好きだ。1987年の This Time から。

09
Mum Remixed / Mum(Bix Remix)
何とムームのリミックスアルバム Mum Remixed(2001年)から。CDではなくヴァイナルである。レーベルはTMT Entertainment とあり、TMT03 というナンバリングがある。AB面に2曲ずつ収録されている。u-Ziq が2曲担当し、他は Bix と Traktor とある。ずっごくかっこいいぞ。

10
the sentinel / Akufen
これもCDではなくヴァイナルから。

ジャケットは真っ白。片面にレーベルのロゴ、片面はレコードの中心部分が見えるように穴が空いている。レコードの中心には、

 horror inc.
 horrorama ep
 a:the sentinel
 b:siamese twins

とあり、反対側には、

 0010
 revolver canada
 revolver@techno.ca
 www.techno-ca/revolver
 rev0010-w/p marc leclaire
 made in EU
 all rights reserved.
 distributed by NEUTON
 +49 69 8297 44 - fax - 50

とある。本当にこれだけ。

このレコード、柏のディスクユニオンで買った。店がラベルにAkufen と書いてくれていたから買ったのだが、後で見てどこにも Akufen という名前がないので、「あれ、オレ、このレコード、何で買ったんだっけ?」と思ったものだ。仕方なく、書いてあるホームページに行って確認したら、アクフェンのレコードだということを思い出した。

かっこいい。

11
The Box (radio edit) / Orbital
これもCDでなくヴァイナルでかけている。CDシングルも出ているようだが。

オービタルの傑作ではないかと思える。アルバムとしては、2枚組のCD、In Sides(1996年)に収録されている。アルバムにはディスク1に同名の曲が2バージョン、ディスク2に何と28分ものロングバージョンが入っている。

12
Interzone / Psychic TV
Throbbing Gristle 解散後のGenesis P-Orridgeが結成したバンド、Psychic TV。 これは1986年の12インチシングル(ヴァイナル)からかけている。ジャケットには、The Magical Mystery D Tour E.P. Roman P. (Fireball Mix) Interzone Psychic TV とある。

さらには、Roman P. Produced by Ken Thomas & Genesis P-Orridge / Mixed by Mark Freegard / Interzone Produced by Genesis P-Orridge / Photography by Andy Earl. Designed T + CP / Roman P. is a song from the forthcoming feature film 'Godstar' which is about the life and times of Brian Jones and the era of the 1960's which began shooting on February 28th 1986. とも。

収録曲はA面に、 RomanP. (Fireball Mix) と Interzone の2曲。B面に、Good Vibration (Kundalini Mix) と Hex-Sex (Voodoo Mix) の2曲。聞きやすい。

ブライアン・ジョーンズはもちろんローリング・ストーンズの元メンバーで、ドラッグのやりすぎで死んだ人。ゴッドスターというのはブライアン・ジョーンズのことを指している。わたしは Psychic TV の Live at Final Wars という1986年の日本でのライブアルバムも持っているが、そのライナーノーツで「フールスメイト」誌の北村昌士氏がジェネシスと対談している。その中でジェネシスは「最初にスターがいて、次にスーパースターという概念をウォーホールが作って、そしてマスメディアがそれをメガスターへと移行させた。そうなったら最後に来るのはゴッドスターでなくてはならない。ただゴッドスターになる資格は死ぬまではないんだ」と述べている。ちなみにこのライナーには浅田彰と細川周平とジェネシス・P・オリッジの座談会も載っている。

それでは彼らの音楽が全て聴きやすいかと言えば、そうではない。わたしは1980年代の前半のことだと思うが、Psychic TVのForce The Hand of Chance (1982年)というカセットテープの買って車で聞いていたら、ある友人に「トシさんって本当にこういう音楽を車で聴いているんですね」と呆れられたことがある。つまりそれくらい彼らの音楽は聴きにくいということ。

2006年10月9日号掲載

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