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『バットマン』『バットマン リターンズ』で、ティム・バートン監督は原作の雰囲気を重視し、ゴシック調のPOPエンターテインメント世界を志向した。続いてバトンを受け取ったジョエル・シューマカー監督は『バットマン フォーエヴァー』『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲!』で、バートン版の世界を踏襲しつつ、より派手なカラフル路線を追求した。1989年から1997年にかけて発表された上記4作品は、どこかオモチャ箱をひっくり返したようなダーク・ファンタジーの趣があったものだ。
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ところが、『バットマン ビギンズ』で新たに登板したクリストファー・ノーラン監督は、独自のアプローチによって、リアリズム溢れる全く新しい2000年代のバットマン・ワールドを生み出した。監督続投となる本作では、なんと「バットマン」という看板をタイトルから外すという大胆さを見せている。その裏にある覚悟と自信は相当なものがあったろう。ノーランは、全ての撮影で現場から離れることなく、ディレクターズ・チェアに座ることすらほとんどなかったという。本作は、その熱意が見事に結実したシリーズ最高傑作だ。
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既に、全米ではオープニング3日間の興行記録を塗り替えた他、2億ドル・3億ドル突破の最短記録を打ち立てるなど、記録尽くめの猛ヒット振りを示しているが、実際に本作を鑑賞してみればそれも当然と思える素晴らしい作品に仕上がっている。事実、批評家だけでなく観客からの評価もすこぶる高い。
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濃密なドラマ、怒涛のアクション、手に汗握るスリル&サスペンス、豪華な実力派俳優陣の共演、どれをとっても超一級の面白さ。総合芸術と言われる映画の中でも、エンターテインメント映画という分野において、本作はそのマスターピースと呼ばれる1本となろう。そして、本作にあるルサンチマンとカタルシスの混交は、そのエンターテインメントとしての完成された面白さを通したものであり、決して頭でっかちなものではない。正義と悪という言葉が、鑑賞後にズシンとした重みと相当な充実感を伴って胸に残る。そこにある苦さこそ、本作に込められた魂といえるものだが、ここでもやはり全体を覆うエンターテインメントとしての突出した完成度が、その苦さを包んで秀逸。そのため、本作の評価は「面白い!」という賛辞に集約されるのだ。
本年1月に、あまりにも早すぎる死を遂げたヒース・レジャー最期の大怪演は、早くもアカデミー賞助演男優賞候補確実と噂されているが、なるほど、確かに素晴らしい。ピエロを思わせるメイクに潜む圧倒的な心の闇は、まるで底なし沼のような奥深さと得体の知れなさを感じさせる凄まじさだ。正に一世一代の名演と言える。
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しかし、ヒース・レジャーの渾身の演技は、あくまで本作の見どころの一つであって、そこだけが浮き上がっているわけではない。全編が見せ場のオンパレードであり、そこにあるサービス精神の旺盛さがほぼ完璧にまとまっている点を最も評価したい。
演出・脚本・演技のアンサンブルが、映画の醍醐味を存分に味わわせてくれる。この夏必見の超大作だ。
ダークナイト http://wwws.warnerbros.co.jp/thedarkknight/
原題『THE DARK KNIGHT』
2008年 アメリカ 152分 配給:ワーナー・ブラザーズ映画
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベール、ヒース・レジャー、アーロン・エッカート、マギー・ギレンホール、ゲイリー・オールドマン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ほか
【上映スケジュール】
8/9(土)〜
東京:丸の内プラゼールほか
大阪:梅田ピカデリー、なんばパークスシネマほか
そのほか、全国一斉ロードショー
【ワーナー・ブラザース映画オフィシャルサイト】
http://www.warnerbros.jp