銀幕ナビゲーション-喜多匡希

ハンコック

【大衆に嫌われる正義のスーパーヒーロー=
ハンコック登場!】 あとで読む

hancock

 トップスター=ウィル・スミスの最新主演作はスーパーヒーロー物。なるほど、彼の持つイメージにぴったりだ。『インデペンデンス・デイ』『メン・イン・ブラック1&2』といった大ヒット作で地球の危機を救ってきたウィル・スミスにとっては、この手の役柄はお手の物。今回も大活躍を見せてくれるに違いない!

  ……と思いきや、本作は従来のスーパーヒーロー物にはないヒネリが加えられている。ウィル・スミス扮するハンコックは <大衆から嫌われているスーパーヒーロー> なのだ。正義のために、人々のために、超人パワーを駆使して悪人を懲らしめたり、浜辺に打ち上げられたクジラを海に還したりするのだが、ハンコックは街や道路、ビルなどを破壊したり、クジラをヨットにぶつけたりしてしまう。なんとも傍迷惑なハンコックに大衆は大ブーイング。子どもから「ハンコックのクソ野郎!」とまで罵られてしまう始末だ。

ハンコック
ハンコック

 この辺りは、『バットマン』シリーズに通じるものがある。バットマンことブルース・ウェインも、正義のスーパー・ヒーローなのだが、大衆から <ならず者> として誤解される。しかし、バットマンがそのことを抱え込んで苦悩するのに対して、ハンコックはどこかやけっぱちになっている。ある意味直情径行型のヒーローで、良く言えば真っ直ぐ、悪く言えば思慮の足りない困った奴なのだ。「俺が皆を助けているのに、どうして憎まれなくちゃならないんだよーーーっ!!」となり、酒びたりに。おまけにハンコックはヒーローらしいコスチュームを着るでもなく、ストリート・ファッションに身を包んでいるから、パッと見のイメージも良くない。しかし、このハンコック。根がイイ奴なので、観客にとってはどこか憎めないキャラクターなのである。そこをクローズ・アップしてコメディに仕立てたところが本作の面白いところ。

 かつて、『スーパーヒーロー・メテオマン』(1993年 日本劇場未公開&ビデオリリース)というスーパーヒーロー映画があった。監督・脚本・主演をロバート・タウンゼントという黒人スターが担当したSFコメディ作品で、『ハンコック』にはその影響が大きいのではないか、と筆者は睨んでいるのだが、飛躍的な進歩を遂げたCG技術によって驚愕のSFX映像が炸裂するド派手なものとなっているし、なによりウィル・スミスという今最もHOTなトップスターを得たことにより、本作はいかにも新世紀型の超大作映画となっている。

ハンコック

ハンコック

 とはいえ、一口に超大作とは言っても、上映時間は約1時間半。肩の力を抜いて気軽に観られる尺であるところも嬉しい。その <気軽さ> に、世界一のナイスガイと言われるウィル・スミスが <気安さ> を加えて秀逸。彼ならではの明るさ、ハンコックという、どこかいじけたキャラクターを親しみ深いものとしている。更に、本作のウィル・スミスはただただ乱暴なだけではない。「本当は俺だって皆から愛されたいのに……」という悲哀を心に抱いている。強がっている中で、フイに見せる哀しみの表情に、ハンコックのいじらしさがにじみ出ているが、ここで演技派としても定評のあるウィル・スミスの上手さが存分に発揮されている。つい今まで強がっていたのに、ふとした瞬間に、今しも泣き出しそうな表情を見せるのだ。その切り替えのタイミング&スピードが素晴らしく、この卓越した演技力が、ハンコックというキャラクターを更に奥深いものとしている。これこそがウィル・スミスならではの味だ。

ハンコック
ハンコック

 そんなハンコックに命を助けられた男レイ(ジェイソン・ベイトマン)が、せめてもの恩返しにと、ハンコックを <皆に愛されるスーパーヒーロー> に成長させようとする。ここで一つの友情が生まれるのだが、レイの妻メアリー(シャーリーズ・セロン)は、ハンコックを毛嫌いしている。ハンコックは昔の記憶がないが、その秘密をどうやらメアリーは知っているらしい。アカデミー賞主演女優賞受賞の演技派女優シャーリーズ・セロンが、ここで存在感を存分に発揮しており、ドラマに厚みが加わっているのも良い。

 と、その後の展開は少々強引でアラもあるが、大迫力のアクション映像と勢いで見せ切ってしまう。細かいことはひとまず置いておいて、ゲラゲラと笑いながら思い切り楽しんでいただきたい痛快エンターテインメント作品だ。

ハンコック  http://www.sonypictures.jp/movies/hancock/

原題『HANCOCK』

2008年 アメリカ 92分 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:ピーター・バーグ
出演:ウィル・スミス、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ベイトマン、エディ・マーサン、ジェイ・ヘッド、ほか

【上映スケジュール】
8/30(土)〜  
東京:丸の内ピカデリー、渋谷ピカデリー、新宿ピカデリーほか
大阪:梅田ピカデリー、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、TOHOシネマズ梅田、ほか京都:MOVIX京都、TOHOシネマズ二条、ほか
兵庫:神戸国際松竹、109シネマズHAT神戸、OSシネマズミント神戸、ほか
そのほか、全国一斉ロードショー

2008年8月25日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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