銀幕ナビゲーション-喜多匡希

デイ・オブ・ザ・デッド

【ゾンビ映画の金字塔『死霊のえじき』を
大胆にリメイク!!】 あとで読む

hancock
©2007 DOD PRODUCTIONS INC.

  1980年代のビデオデッキ普及に伴って、スプラッター・ブームが到来した。70年代や、それ以前にもホラー、スリラー、テラー、サスペンスといったジャンルは存在したし、恐怖映画、怪奇映画、ショック映画という呼称も広く用いられていたが、はらわたと血しぶきを画面一杯にぶちまけるスプラッターというジャンルが確立されたのは、この頃のことだ。同時期に、スラッシャー映画という殺人鬼物もホラー映画内の一ジャンルとして認知された。しかし、ブームは時と共に過激さを増し、その結果、社会問題となって、徐々にその人気も下火となり、現在に至る。

 ブームの渦中では、驚くほど多くのスプラッター映画が輸入・公開・ソフトリリースされたものだ。しかし、雨後のたけのこのように乱発された作品のほとんどは、今やそのほとんどが忘れ去られ、そして本物だけが残った。

 ジョージ・A・ロメロ監督による <ゾンビ・サーガ> は、そんな数少ない本物の代表格として、スプラッター映画マニアだけでなく、現在でも広い支持を集めている他、後世に多大な影響を残した。ゾンビ映画の歴史は古く、1930年代にまで遡ることができるが、現在のゾンビ観を決定づけたエポック的な作品群が、ロメロの <ゾンビ・サーガ> だからだ。(ゾンビ映画の歴史については、昨年、『プラネット・テラー in グラインドハウス』の項で御紹介しているので、そちらを参照されたし。

 ロメロが創造したゾンビがどれほどの影響を与えたかは、最近のヒット作を見ても歴然だ。『バイオハザード』(3部作)、『28日後...』『28週後...』『アイ・アム・レジェンド』『ゾンビーノ』『ショーン・オブ・ザ・デッド』(日本劇場未公開&ソフトリリースあり)。これらの作品は全て 2000年代に入ってから製作・公開されたものばかりだが、いずれもロメロゾンビ映画の影響を色濃く受けている。ロメロという監督の存在がなければ、これらの作品は誕生しなかったと断言して良い。

 その人気を裏付けるように、近年、ロメロの <ゾンビ・サーガ> のリメイクが盛んだ。1作目の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記』(1990)、『超立体映画 ゾンビ3D』(2006)と2度の公式リメイクがなされ、2作目の『ゾンビ』(1978)は『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)としてハリウッド大作としてリメイク、大ヒットを記録した。そして遂に3作目である『死霊のえじき』(1985)もリメイクされたのだ。本作『デイ・オブ・ザ・デッド』である。

 オリジナル版では、地上にゾンビが溢れかえり、数少ない人間が地下基地で暮らしているという、終末的な世界観が背景にあったが、本作は大胆な脚色を施し、コロラド州の田舎町を舞台としたサバイバル・ホラーに様変わりしている。ここでロメロ版の熱狂的なファンならば「えっ!? それじゃ『死霊のえじき』のリメイクにならないじゃん……」とうなだれることだろうが、そこはリメイクと銘打っているだけあって目配せはきっちり利いている。前作とは打って変わった状況・物語になっているが、登場人物の名前などは受け継がれているし、前作で大人気となった心優しいゾンビ=バブを連想させるキャラクターも登場するから、オリジナルのファンならばこそニンマリできるくすぐりにも満ちているというわけ。見方によっては一粒で2度美味しい作品というわけだ。

 監督は『13日の金曜日PART2&3』や『ガバリン』『UMA レイク・プラシッド』などといった作品で、ホラー映画ファンには馴染み深いスティーヴ・マイナー。ツボを押さえた堅実な演出が良くも悪くも80年代的で、チープとも感じるが、そこもファンならば楽しめるポイントと言える。今後、『ゾンビ・ストリッパーズ』(2008年10月 日本公開予定)や、本家ロメロの『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』(2007年11月 日本公開予定)といった新作の公開も控えており、ここからはゾンビ人気の根強さが伺える。ファンならば避けては通れない1本と言えよう。

デイ・オブ・ザ・デッド  http://www.dayofthedead.jp/

原題『DAY OF THE DEAD』

2008年 アメリカ 85分 R-15指定作品配給:ムービーアイ
監督:スティーヴ・マイナー
原案:ジョージ・A・ロメロ作品『死霊のえじき』
出演:ミーナ・スヴァーリ、ニック・キャノン、ヴィング・レイムス、マイケル・ウェルチ、ほか

【上映スケジュール】
8/30(土)〜  
東京:シアターN渋谷、銀座シネパトス、ほか
9/6(土)〜
東京:平和島シネマサンシャイン
9/13(土)〜
大阪:敷島シネポップ
そのほか、全国順次公開予定

2008年8月25日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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