銀幕ナビゲーション-喜多匡希

ウォンテッド

【姉御肌のジョリーと
なで肩のマカヴォイが繰り広げる
驚愕のガン・アクション】 あとで読む

ウォンテッド
©2008 Universal Studios. All Rights Reserved.

 アンジェリーナ・ジョリーは銃が最高に似合う!

 あの挑戦的な目つき、挑発的な唇。銃が男性器の暗喩メタファーとしてしばしば映画に登場することはよく知られているが、そういった視点で本作を鑑賞すれば、怒涛のアクション描写に手に汗を握ると同時に、そこから立ち上る野性味溢れる色香にもクラクラさせられてしまう。そんな彼女のワイルドな持ち味が最大限に活かされたのが、この『ウォンテッド』だ。

 原作はマーク・ミラー&J・G・ジョーンズによる同名グラフィック・ノベル。グラフィック・ノベルとは、アメリカン・コミック中の1つの潮流で、特に大人向けの作品を指す。

【職場ではバカにされ、同棲している彼女は同僚と浮気三昧というやりきれない状況の中で何も言えずにいる意気地なし青年ウェスリーの人生が、謎めいた女フォックスとの出会いによって激変する。フォックスはギリシア神話の時代から、神に代わって“運命の意志”を実践してきた秘密の暗殺組織“フラタニティ”のメンバーで、超人的な能力の持ち主だ。“フラタニティ”本部に連れて行かれたウェスリーは、トップであるスローンから驚愕の事実を告げられる。ウェスリーの父はこの組織所属の凄腕暗殺者であったのだが、裏切り者のクロスによって殺されてしまったこと、ウェスリーにも秘められた能力が隠されていること、そして、彼は組織の王位継承者であるということ…… 父の仇に復讐を誓ったウェスリーは、秘められた能力を引き出す訓練を受けることになるのだが、そこには意外な真実が隠されていた……】
というストーリー。

ウォンテッド
©2008 Universal Studios. All Rights Reserved.
ウォンテッド

 主人公のウェスリーに目下大注目の若手演技派ジェームズ・マカヴォイ、組織の紅一点であるフォックスにアンジェリーナ・ジョリー、謎めいた存在のスローンにモーガン・フリーマンという配役。その他、トーマス・クレッチマンやテレンス・スタンプといった実力派俳優が共演している。

 内向的でひ弱な青年が突如ヒーローになるという展開は『スパイダーマン』でもお馴染みのもの。昨今のアメコミ・ヒーローの映画化では、『スパイダーマン』のトビー・マクガイアや、『インクレディブル・ハルク』のエドワード・ノートンといった、一見強そうでない“なで肩俳優”が相次いで起用され、それぞれ好演を見せているが、本作のジェームズ・マカヴォイもその流れに合流した。彼も立派な(?)“なで肩俳優”である。そんないかにも弱々しいルックスの持ち主であるマカヴォイが、ウェスリーの <鬱屈した日常の中→秘められた能力を突如覚醒させた時の驚きと戸惑い→その先にある絶大な自信> という3段変化を絶妙に演じ分けている。それぞれの段階で異なる目の演技に、マカヴォイの大いなる実力が輝いており、出色だ。

 そんな意気地なし青年であるウェスリーの秘められた能力を引き出すのがフォックスというわけだが、演じるアンジェリーナ・ジョリーの姉御肌な存在感が抜群で、ウェスリーとの対比も見事だ。フォックスが冷静沈着に暗殺を行う傍らで、ウェスリーが弱々しさを捨てきれず「アイム・ソォリィ〜〜〜〜!!」と叫ぶシーンなど、爆笑物である。

 そんな2人を不敵に見詰めるモーガン・フリーマンの存在感もサスガの貫禄だ。

 監督は『ナイト・ウォッチ』『デイ・ウォッチ』で注目を集めたティムール・ベクマンベトフ。アンジェリーナ・ジョリー作品中歴代No.1という堂々たる成績でハリウッド・デビューを見事に飾ってみせた。独特かつスタイリッシュなアクション描写は必見と言える。

 暗殺者を描いた作品のため、人がバタバタと死ぬ。モラルの見地から考えるととんでもない話だが、そこはフィクションとして割り切って鑑賞していただきたい。アイデア満載のガン・アクションと、驚愕の真実を存分にご堪能あれ!

ウォンテッド  http://www.choose-your-destiny.jp/

R-15指定作品

原題『WANTED』
2008年 アメリカ 110分 配給:東宝東和
監督:ティムール・ベクマンベトフ
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジェームズ・マカヴォイ、モーガン・フリーマン、テレンス・スタンプほか

【上映スケジュール】
9/20(土)〜
東京:日劇1、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、シネマメディアージュ、渋東シネタワーほか
大阪:TOHOシネマズ梅田、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、アポロシネマ8ほか
京都:TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、イオンシネマ久御山ほか
兵庫:OSシネマズミント神戸、神戸シネモザイク、MOVIX六甲、109シネマズHAT神戸、TOHOシネマズ伊丹ほか
そのほか、全国一斉ロードショー
※9/13(土)&14(日)&15(月・祝)、 <3連休> 先行上映!

2008年9月8日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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