銀幕ナビゲーション-喜多匡希

弾突 DANTOTSU

【スティーヴン・セガール芸能生活20周年記念作品!】 あとで読む

弾突 DANTOTSU
©2007 Worldwide SPE Aquisitions Inc.All Rights Reserved. Reserved.

 スティーヴン・セガールの芸能生活20周年記念作品という触れ込みである。『刑事ニコ/法の死角』(1988)で、いきなりの主演デビューを果たして以来、『死の標的』『ハード・トゥ・キル』(共に1990)、『アウト・フォー・ジャスティス』(1991)と着実にキャリアを積み、そして『沈黙の戦艦』(1992)でトップ・アクション・ヒーローとしての地位を確立した。1970・80年代にシルベスタ・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウイリスが花開いたように、1990年代にスティーヴン・セガールもスターダムに上り詰めたわけだが、先に挙げた3人が、アクション映画だけではなく、コメディやドラマ作品などにも進出し、成功と失敗の試行錯誤を経たのとは対照的に、セガールは一貫してアクション作品にこだわり続けている。特別出演的な『マイ・ジャイアント』(1998)を唯一の例外として、セガールが出演した劇映画は全てアクション作品なのである。この一貫性こそがセガールの信念であり、同時に持ち味でもあるのだ。

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 その一貫性は2007年の <沈黙シリーズ> 15作記念で1つの節目を迎えたが、続いて放った本作もやはりアクション映画であった。決してブレることのないアクションへのこだわりも、ここまで来ると <芸>、それも立派な <マンネリ芸> である。セガール作品を「新味がない」と否定する向きもあるが、マンネリと言うのは大変難しい芸だ。マンネリ芸というものは、確固たる需要が存在し、更に安定感という信用がなければ成立しないものであるからだ。その点、セガール作品は、欲を出すことなく、ただただ一徹に我が道を追求している感がある。そこには、古武道に通じるストイックさ・生真面目さが存在する。セガールのトレードマークであるポニーテールは日本の武士=侍を意識したもので、これは日本で10年以上暮らした中で培った武士道精神=侍・スピリッツの表れだ。その、ともすれば時代錯誤とも思えるストイックで生真面目な姿勢が、持ち前の親しみやすさと相まって <ハリウッドの寅さん> 的なユーモアまでも持ち得ることとなった。このアクション俳優としての顔と、素顔から立ち上る笑いの要素が渾然一体となった結果、今やオンリー・ワンと言える独占市場を築いている。まさしく <継続は力なり> と言えよう。

 本作でも、やはりセガール独特のマンネリ振りが炸裂している。

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【ギャンブルの借金で首が回らなり、刑事の職や家庭まで失った男が、マフィアに雇われる。彼に与えられた仕事は人殺しであった……】というストーリーは、「いや、それ、アンタが悪いんやん……」というモラルのかけらもないものだが、その主人公を演じるのがセガールであるからこそ受け入れられるのである。許してしまえるのである。そして笑えるのである。この導入部を受け入れることが出来れば、後は安心・安定のセガール世界を満喫するのみ! 決して斬新ではないが、適度にハラハラさせてくれるカー・チェイスやクライマックスの大銃撃戦など、それぞれの見せ場はそれなりにツボを押さえていてやはり安定感がある。無理矢理挿入される大阪弁会話や、銃撃戦で頭を隠していながら実は尻が隠れていない様など、セガールならではの爆笑ポイントもあり、筋金入りのセガール・ファンが望んでいる天然ボケ的な笑いもしっかり炸裂しているのが嬉しい。一方でクセモノ俳優の重鎮ランス・ヘンリクセンの出演といった、映画ファンにはたまらないサービスもあり。

 出色の出来というわけではもちろんなく、そもそもそのような欲目を見せてもいない。その一種の潔さが <いつものセガール作品> を作り上げた。これは褒め言葉である。セガール・ファンなら絶対に外せない1本である。

 20周年おめでとう!&これからもこの路線を突き進んで下さい!

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原題『PISTOL WHIPPED』
2008年 アメリカ 96分 配給:ソニー・ピクチャーズ
監督:ロエル・レーヌ
出演:スティーヴン・セガール、ランス・ヘンリクセン、ブランチャード・ライアン、ポール・カルデロンほか

【上映スケジュール】
9/13(土)〜 東京:銀座シネパトス
9/20(土)〜 大阪:天六ユウラク座
にてロードショー

2008年9月8日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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