©2008「アキレスと亀」製作委員会 |
本作の下敷きには“アキレス(アキレウス)と亀によるパラドックスの定理”が存在する。
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これが“アキレス(アキレウス)と亀によるパラドックスの定理”のごくごく簡単な説明だ。
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独特のユーモア感覚に満ちた全体の構造は、これまでの作品で言えば、ビートたけし名義で監督した『みんな〜やってるか!』(1994)に近いが、あの作品で見られた独創という名の独走は抑えられ、かなり判りやすいつくりになっているので、安心していただきたい。その幾分か判りやすい構造の中で、これまでにその他の作品で繰り返し描かれてきた“死生観”や“虚構と現実(≒理論と現実)のパラドックス”“母性への愛着と憧憬”といった北野武ならでは&おなじみのエッセンスが見事にブレンドされている。となれば、映画作家・北野武のファンならば当然必見の1作ということになる。事実、彼のフィルモグラフィーにおいて重要な一作として位置づけられることだろう。
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では、ガチガチの北野武映画ファンでなければ楽しめないのかというと、決してそうではないだろう。本作のテーマは <芸術の探求> だが、そのテーマの字面から立ち昇る「難しそう……」という先入観とは裏腹に、語り口は非常に判りやすい。
倉持真知寿という架空の画家を主人公とした半生記である本作は、大きく【少年期】【青年期】【中年期・壮年期】に分けることが出来る。序盤である【少年期】はオーソドックスな語り口で、誰でもすんなりと入り込むことができるだろう。それがやがて、中盤に入ると風変わりなテイストが色濃くなり、終盤でナンセンスな疾走(あるいは暴走)を見せる。このように加速していく迷走こそ、特に最近の北野武作品の特徴だが、本作では、途中でめげて欲しくない。従来ならば“死”、あるいはしっちゃかめっちゃかな“映画破壊”で幕を閉じることが多かったが、本作はラストで“夫婦愛”を機軸として“生”に希望を託したハッピーエンドを迎える。この新たな着地点は、映画作家・北野武の新たな新境地である。是非、その目で見届けていただきたい。
アキレスと亀 http://www.office-kitano.co.jp/akiresu/
2008年 日本 119分 配給:東京テアトル+オフィス北野
監督・脚本・編集・挿入画:北野武
出演:ビートたけし、樋口可南子、柳憂怜、麻生久美子、中尾彬、伊武雅刀、大杉漣、筒井真理子、吉岡澪皇、円城寺あや、徳永えり、大森南朋、ほか
【上映スケジュール】
9/20(土)〜
東京:テアトル新宿、銀座テアトルシネマ、ほか
大阪:テアトル梅田、敷島シネポップ、ほか
京都:TOHOシネマズ二条
兵庫:109シネマズHAT神戸
奈良:TOHOシネマズ橿原
ほか、全国順次公開中