P．S．アイラヴユー

実力派女優陣が浮き上がらせる
“再生”のラブ・ストーリー　

©2008 DreamWorks LLC and Paramount Pictures. All rights reserved

【幸せな夫婦を突然襲った夫・ジェリーの死。残された妻・ホリーは悲しみに打ちひしがれる。そんなホリーの元に、ジェリーの声が録音されたカセットテープが届き、その後、相次いで消印のない10通の手紙が届く。手紙の最後には、常に“P．S．アイラヴユー”という文字が。死んだはずの夫から届く手紙と周囲の励ましが、やがてホリーに生きる活力を与えていく……】
というストーリー。

　2004年、弱冠21歳のアイルランド人女性セシリア・アハーンが発表した同名ベストセラー小説の映画化。“死者からの手紙”と聞けば、ついついファンタジー作品と思い込みがちだがそうではない。現実から目を背けることなく、真摯に生と死を見詰めながら、やがて哀しみを乗り越えていくという豊かな人間ドラマに仕上がっている。

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　監督・脚本を担当するのはリチャード・ラグラヴェネーズ。アカデミー賞脚本賞にノミネートされた『フィッシャー・キング』(1991）で注目され、世界的に大ヒットした『マディソン郡の橋』(1995）で脚本家としての名声を不動のものとした人物だ。『マンハッタンで抱きしめて』(1998　日本劇場未公開）で監督デビューして以降、コンスタントに作品を発表している。温かさと優しさを持ち味としながら、甘ったるくない人間模様を描く手腕に定評がある実力派の監督として、目下注目の逸材である。

　ヒロインのホリーを演じるのはヒラリー・スワンク。リチャード・ラグラヴェネーズとは、『フリーダム・ライターズ』(2007）に続く連続タッグとなる。当初、恋愛ドラマの主演にヒラリー・スワンクはイメージに合わないように思えてならなかった。『ベスト・キッド４』(1994)、『ボーイズ・ドント・クライ』(1999)、『ザ・コア』(2003)、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004）など、これまでの代表作には男勝りな役柄が目立ち、『マリー・アントワネットの首飾り』(2001）や『ブラック・ダリア』(2006）など、いかにもヒロイン然とした役柄を演じた作品では精彩を欠くことが多かったからだ。そのため、本作には、当初、どうしても違和感を禁じえなかったのだが、見ている内に気にならなくなった。抱いていた不安が徐々に霧消していくにつれ、逆にその上手さが際立ってくるのだ。気付けば、彼女の演技が心を締め付けて止まない。二度のアカデミー主演女優賞受賞は伊達ではないのだ。

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　ジェリーには、『オペラ座の怪人』(2004）で大ブレイクし、以後、続々と大作・話題作への出演が相次いでいる実力派のジェラルド・バトラーが扮し、静かに存在感を発揮。しかし、それ以上に注目して欲しいのは、脇を固める助演女優陣のアンサンブル演技だ。40代に突入し、益々上手さに磨きがかかってきたリサ・クドロー、ジーナ・ガーションが目立ちすぎず、引きすぎずといった絶妙のサポート振りで、ドラマに奥行きを与えている。そして、名女優キャシー・ベイツが、大きな母性で作品全体を柔らかく包み込んで締めくくる！

　女優陣の奥深い演技が光る佳篇。

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