銀幕ナビゲーション-喜多匡希

画家と庭師とカンパーニュ

【2人の中年男が
かけがえのない友情を育む】 あとで読む

画家と庭師とカンパーニュ
画家と庭師とカンパーニュ

 1人の画家と、彼に雇われた1人の庭師が、フランス・カンパーニュで織り成す友情を描くという、まさにタイトル通りの作品。

画家と庭師とカンパーニュ

画家と庭師とカンパーニュ
 中年男性同士の友情を描いたフランス映画と言えば、パトリス・ルコント監督の秀作『ぼくの大切なともだち』(2006)が記憶に新しいが、本作は更にその上を行く逸品である。

『勝負(かた)をつけろ』『エリザ』『クリクリのいた夏』『ピエロの赤い鼻』などで知られるジャン・ベッケル監督最新作。ジャン・ベッケル監督と言えば、『赤い手のグッピー』『幸福の設計』『エドワールとキャロリーヌ』『肉体の冠』『モンパルナスの灯』『穴』などを遺した名匠ジャック・ベッケル監督の実子である。いわばフランス映画界のサラブレッドと言える二世監督なのだ。

【妻との不仲から生活に疲れ、花の都パリから生まれ故郷であるカンパーニュに一人舞い戻ってきた中年男性画家。生家は空き家になって久しく、画家はリフォームのために庭師を募集する。仕事を求めてやってきたのは、昔懐かしい幼馴染だった。久方ぶりの再会は、二人にとってかけがえのない友情を育むきっかけとなっていく。しかし……】
というストーリー。

画家と庭師とカンパーニュ
画家と庭師とカンパーニュ
 緑豊かな田園地帯であるカンパーニュ地方の気候・風土がスクリーンに広がる時、そこは映画館という名のオアシスとなる。陽光の中で飲む赤ワインの美味しそうなこと! 家庭菜園に実る野菜の美味しそうなこと! 雨という天の恵み! 湖にボートを浮かべ釣りに興じるのどかさ! カメラが的確に光景を切り取り、編集が物語を紡ぐ。

 もう大絶賛してしまおう!

 画家を演じるのは先に挙げた『ぼくの大切なともだち』でも主演していたダニエル・オートゥイユ。庭師を演じるのはいぶし銀の上手さが光るジャン=ピエール・ダルッサン(本作で2007年度セザール賞助演男優賞ノミネート) フランス映画界が誇る実力派2人の共演は気負わず、さりげなく、そして上手い!!

 終始、クスクスとした笑いを散りばめながら、2人の中年男がかけがえのない友情を育くんでいく様が気持ちよい。決して押し付けがましくなく、観客の心を芯からほっこりさせてくれるのだ。だからこそ、その後に控える痛みが胸を締め付けて止まないのだが、不思議なことに、鑑賞後は実に豊かな心持ちにさせられる。語りの妙である。

 忘れられない1本になりそうだ。自信を持っておすすめする。

画家と庭師とカンパーニュ  http://www.wisepolicy.com/dialogue_avec_mon_jardinier/

原題『DIALOGUE AVEC MON JARDINIER』
2007年 フランス 105分 配給:ワイズポリシー
監督:ジャン・ベッケル
出演:ダニエル・オートゥイユ、ジャン=ピエール・ダルッサン、ファニー・コタンソン、エロディー・ナヴァール、ほか

【上映スケジュール】
10/18(土)〜 大阪:梅田ガーデンシネマ
10/25(土)〜 兵庫:シネ・リーブル神戸
11月下旬予定 京都:京都シネマ
そのほか、全国順次公開(東京公開終了)

2008年10月13日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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