【大学内で一番のイケメンとして注目されているアトン。同じ大学に通うエンジャもそんな彼に秘かな恋心を抱いていた。アトンにはミス・キャンパスの恋人がいたが、いつしかアトンとエンジャは惹かれ合うように。しかし、ある日、些細な口喧嘩が悲劇を生んでしまう。車に乗ったエンジャを追いかけたアトンが、事故に遭い帰らぬ人となってしまったのだ…… それから3年後、法律事務所でアシスタントとして働くエンジャは、精神安定剤に頼る日々を送っていた。「このままではいけない!」と感じたエンジャは、医師の指示に従って恐る恐る薬の服用を止めてみるが、すると目の前にアトンの姿が……】
上記したストーリーから、デミ・ムーア&パトリック・スウェイジ共演の大ヒット・ラブ・ファンタジー『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)を思い浮かべる人は多いだろう。しかし、実際に鑑賞してみると、かなり趣が異なる。
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しかし、本作には正直なところ、戸惑いを禁じ得なかった。面食らった。
エンジャの前に姿を現すアトンの亡霊(幻影?)が、解剖後の縫い痕も生々しいむごたらしい姿であり、死して尚も「俺の事が本当に好きなのか?」と問う。その姿にヒいてしまったのだ。ラブ・ファンタジーという言葉から思い描いていたものとは異なる展開に、思考が追いつかず、困った。ほら、あるでしょ? お茶だと思って飲んだら違う飲み物だった時の居心地の悪い感覚。あの違和感と同じものを感じた。加えて、アトンとエンジャが結ばれるまでの流れが冒頭で示されないことと、なにやら三角関係めいた男女関係のだらしなさが垣間見えるため、二人に感情移入することも出来ず。しばし、主人公たちに嫌悪感を抱いたままでスクリーンを見続けることとなってしまったのも痛い。
ところが、エンジャを慕う問題児のシューやアトンの父親が絡んで来るようになって、ようやく物語がすんなりと流れ出し、腑に落ちるようになって来た。
本作は、エンジャを見守るアトンなど初めから存在しなかったのだ。アトンが蝶となって成仏するために見届けるのは、エンジャの幸せだけではないのだ。
そこが本作の肝である。
一風変わったゴースト・ファンタジー。怪作・珍作にも受け止められる独創的な作品だ。
僕は君のために蝶になる http://boku-chou.com/
原題:『蝴蝶飛』
2007年 香港 88分 配給:クロックワークス+ツイン
監督:ジョニー・トー
出演:ヴィック・チョウ、リー・ビンビン、ヨウ・ヨン、マギー・シュー、ロイ・チョン、ウォン・ヤウナン、ほか
【上映スケジュール】
10/25(土)〜 東京:渋谷シアターTSUTAYA
11/8 (土)〜 大阪:シネマート心斎橋、テアトル梅田
11/18(火)〜 京都:京都みなみ会館
11/22(土)〜 兵庫:三宮シネフェニックス
そのほか、全国順次公開