『ボーダータウン 報道されない殺人者』というタイトルは、些かインパクトに欠ける。『ボーダータウン』では何のことか良くわからないから副題を付けたのであろうが、『報道されない殺人者』というのも、別段、心に残らない。「これじゃあまるで、90年代に乱発された日本劇場未公開ビデオスルー作品みたいじゃないの……」と、さして期待をせずに鑑賞したのだが、これが思いがけずきっちりまとまった社会派サスペンスの秀作で嬉しい誤算。勇気ある告発の1本として是非御紹介したいと感じた次第。
© 2006 BORDERTOWN PRODUCTIONS,LLC All Rights Reserved |
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とは言え、本作はドキュメンタリー映画ではない。事実を基にした劇映画である。しかも、主演がジェニファー・ロペス。共演にアントニオ・バンデラス、マーティン・シーンというのだから、スター映画と言っても良い。事実、本作は娯楽作品としても一級品の面白さだ。「面白い」などと表現すると不謹慎かも知れないが、そこに意味がある。
2003年、ブラジル・リオデジャネイロの貧民街を舞台としたバイオレンス映画『シティ・オブ・ゴッド』(2002)が日本公開され、単館大ヒットを記録したが、あの作品も“知られざる真実”を描いて滅法「面白い」劇映画だった。
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出演陣の熱演が本作の面白さと告発の両極を支えている。特に、真実を報道することに粉骨砕身するジェニファー・ロペスの瞳の力強さに唸った。サスペンスの盛り上げも巧みで、ラストに漂う余韻も実に後を引く。娯楽と告発が両立した本作は、『ネットワーク』(1976)や『大統領の陰謀』(1976)に連なるべき、報道を巡る問題作と言えよう。
ボーダータウン 報道されない殺人者 http://www.bordertown.jp/
原題:『BORDERTOWN』
・第57回ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品作品
2006年 アメリカ 112分 配給:ザナドゥー
監督・製作・脚本:グレゴリー・ナヴァ
出演:ジェニファー・ロペス、アントニオ・バンデラス、マヤ・ザパタ、マーティン・シーン、ソニア・ブラガ、ほか
特別出演:フアネス(本人役)
【上映スケジュール】
10/18(土)〜 東京:シャンテシネ
11/15(土)〜 大阪:敷島シネポップ
11/29(土)〜 京都:京都シネマ
11月下旬予定 大阪:第七藝術劇場
近日公開予定 兵庫:シネカノン神戸
そのほか、全国順次公開