香港映画界から世界に羽ばたいたジョン・ウーが、久方振りにハリウッドからアジアに凱旋し、長らく夢見ていた『三国志』映画を撮り上げた!! もう、これだけで全世界のアクション映画ファンの舌なめずりが聞こえてきそうだ。
事実、本作は製作発表段階から大きな注目を集め、そのキャスティングを巡って様々な情報が飛び交い、世界中のジョン・ウー信者をやきもきさせたものである。個人的にも、これだけ事前に胸ときめかせ、日本公開を待ち望んだ作品もそうそうない。そのため、これ以上ないほど大きな期待を胸にスクリーンと対峙したわけだが、首を長くして待った甲斐の充分にある堂々たるスペクタクル・アクションに仕上がっており、大いに楽しんだ次第。
一口に『三国志』と言っても、その長大な物語を劇場用に映画化するのは不可能であるから、本作では全体のハイライトとも言える歴史的大合戦“赤壁の戦い”に焦点を絞っている。この時、曹操率いる魏と、孫権率いる呉は存在していたが、劉備率いる蜀はまだ建国前である。
国を持たない劉備は、天才軍師の諸葛亮孔明や猛将の関羽・張飛・趙雲を従えて親戚筋であった劉表の下に身を寄せていたが、劉表の死後、跡目争いに巻き込まれる。そのゴタゴタに乗じて、魏が攻め入って来る。劉備にはハナから勝算がなく、敗走を余儀なくされる。しかし、心優しい劉備は彼を慕ってついてくる民衆を見殺しにできず、守りを固めながらの逃避行を決意。そういった状況の中、刻々と迫る魏の大軍に、孔明が奇想天外な知略を、関羽・張飛・趙雲が類まれざる豪腕をもって立ち向かう! これが有名な“長坂の戦い”であり、本作はこの歴史に残る合戦から幕を開ける。のっけから危機的状況が展開され、おのずとハラハラドキドキさせられる中、大迫力のスペクタクル・シーンが惜しげもなく繰り広げられる様は必見! いきなりクライマックスであるかのようなアクションが大盤振る舞いされ、ジョン・ウーおなじみのスローモーションもバンバン炸裂する。3人の猛将それぞれの活躍を順繰りに見せる語りの手腕も素晴らしく、撮影・編集も冴えに冴えており、大画面のありがたみを存分に味わわせてくれる怒涛のオープニングに大興奮させられること間違いなしだ。
この後、兵力に乏しい劉備を救うため、孔明が妙案を張り巡らせる。呉を味方につけ、魏と対決しようというのだ。しかし、孫権は判断に迷う。そのため、孔明は呉の名軍師・周瑜を説得することにする。孔明の真意をほぼ見抜いている周瑜だったが、次第に孔明との間に友情に近しい感情も生まれ、力を合わせることを決意。しかし、その頃、魏は80万の大軍を率いて決戦の地となる赤壁へと押し寄せていた。対する劉備・呉の連合軍は5万。数の上で圧倒的に不利な戦いになるのは目に見えているが……、というストーリー。
二部作の前編である本作では、赤壁の前哨戦である“鳥林の戦い”がクライマックスとなっている。ここでは孔明が亀の甲羅をモチーフに編み出した“九官八卦の陣”が実写映像で再現されるのが、三国志ファンとしてはたまらなく嬉しいところ。やはりここでもアイデアてんこ盛りのアクションが叩きつけるように展開され、片時も飽きることがない。黒澤明映画を研究したというジョン・ウーが、最先端のSFX技術とワイヤー・アクションを織り交ぜて作り出した怒涛の映像に釘付けにさせられるはずだ。あ、もちろん、ジョン・ウー作品のトレンド・マークである白い鳩も健在なので、かねてよりのジョン・ウー信者はここで感涙することであろう。
来年4月公開予定のPartIIではいよいよ赤壁本戦が展開されることとなる。待ちきれないぞ!!
レッド・クリフ Part I http://redcliff.jp/
2008年 アメリカ/中国/日本/台湾/韓国 145分 配給:東宝東和+エイベックス・エンタテインメント
・第21回東京国際映画祭オープニング作品
監督・製作・脚本:ジョン・ウー
出演:トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ、フー・ジュン、中村獅童、リン・チーリン、ユウ・ヨン、ホウ・ヨン、トン・ダーウェイ、ソン・ジア、バーサンジャプ、ザン・ジンシェン、チャン・サン、ほか
【上映スケジュール】
11/1(土)〜
東京:日劇1、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、お台場シネマメディアージュ、渋東シネタワー、ほか
大阪:TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、アポロシネマ8、ほか
京都:TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、イオンシネマ久御山、ほか
兵庫:OSシネマズミント神戸、MOVIX六甲、109シネマズHAT神戸、シネマモザイク、TOHOシネマズ伊丹、ほか
そのほか、全国一斉公開