銀幕ナビゲーション-喜多匡希

Happyダーツ

【“インディーズ映画の女王”松梨智子、
遂に商業映画監督デビュー!】 あとで読む

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 と来て、今度はダーツである。次から次へと手を変え品を変え、同工異曲な映画たちが続々と製作公開されるものだ。次は百人一首か、はたまたケン玉か、あるいはヨーヨーか。いくら実際に観てみないとわからないとは言え、ここまで同種の作品が連打されるとさすがに食傷気味である。

 と、このように、本作に対して筆者が些か消極的であったことは否めない。では、なぜ筆者が試写室に足を運んだのかというと、決して惰性・習慣からではなく、監督欄に松梨智子の名を見止めたためである。しかし、どれほどの人がその名を知っているというのだろう? どれほどの人が彼女の監督作品に触れたことがあるというのだろう? といったところで、まずは松梨智子についてサラリと御紹介したい。

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 松梨智子。早稲田大学在学中の1990年代中盤、劇団高円寺爆弾クラブに入団し、女優として活動を開始。ほどなく、自主映画監督として作品制作を開始する。監督・脚本・主演を手がけた短編『惜しみなく愛は奪ふ』(1995)が高く評価され、以後、『毒婦マチルダ』(1998)、『サノバビッチ☆サブ〜青春グッバイ〜』(2000)、『近未来蟹工船 レプリカント・ジョー』(2002)、『映画監督になる方法』(2005)と精力的に長編作品を発表。“インディーズ映画の女王”なる異名をとるまでとなり、強烈かつ個性的な作家性が一部で熱狂的な支持者を生んでいる。何を隠そう、筆者もその熱烈な支持者の一人で、先述した作品群は全て公開時にスクリーンで鑑賞している。

 そんな松梨智子の商業映画第一作となれば、見逃す手はない。そう考え、いそいそと出掛けていったわけだが、その判断は間違っていなかった。何らの躊躇なく万人におすすめしたい快作に仕上がっていたからだ。

 現在、賑わいを見せているダーツ(とダーツ・バー)を題材に採り入れた着眼点に新味はない。しかし、起承転結を重視し、過不足無くと物語を組み立てているため、かっちりとまとまった作品に仕上がっている。この手堅さは買いだ。加えて、ヒロインを30代女性に設定し、観客の共感を呼ぶリアルな現代女性として描いているのが面白い。ここに、常に脚本も兼ねる松梨智子のこだわりを見た。そのため、昨今、流行りの“アラサー(アラウンド・サーティー)”物として見ることもできる。

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 演出が、初の商業映画である本作でも、随所で炸裂しているのが従来のファンにとってたまらなく嬉しいところ。マンガの吹き出しの手法を導入したり、高めた緊張感を絶妙のタイミングでハズしてみせたりするあたり、大いにニンマリさせられた。かといって、お遊びに偏ることなく、芯となるストーリーでもきっちり盛り上げてくれるのが嬉しい。

 主演の辺見えみりが、期待に応えて好演。助演の新田恵利と村杉蝉之介もイイ。

Happyダーツ  http://www.happy-darts.jp/

2008年 日本 86分 配給:クロックワークス

監督・脚本:松梨智子
出演:辺見えみり、佐藤仁美、加藤和樹、新田恵利、村杉蝉之介、DAIZO、森次晃嗣、森泉、ほか

【上映スケジュール】
11/8(土)〜  東京:渋谷アミューズCQN
11/15(土)〜 大阪:シネマート心斎橋
そのほか、全国順次公開

2008年11月10日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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