栄冠は誰の手に!?
1月22日、第81回アカデミー賞のノミネーションが発表された。年に一度しかない映画界最大の祭典とあって、映画ファンならば興味津々のはず。そこで今回は、全部門のノミネート状況と主要部門の傾向・ポイントを御紹介する。
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Nominated
Persons/Titles |
『愛を読むひと』
『スラムドッグ$ミリオネア』
『フロスト×ニクソン』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
『ミルク』 |
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ベンジャミン・バトン 数奇な人生 |
作品賞&監督賞へのノミネートが確実視されていた『ダークナイト』がまさかの落選。全米では大ブーイングが巻き起こっているとか。どれほど完成度が高くてもアメコミ原作の娯楽大作&シリーズ作品にアカデミー賞は冷たかった。現状では最多13部門のノミネートを勝ち取った『ベンジャミン・バトン
数奇な人生』と、前哨戦を制した『スラムドッグ$ミリオネア』の一騎打ちという見方が強い。ハリウッド大作VS英国の小品の様相だ。これまでの実績では『スラムドッグ$ミリオネア』が一歩リードしているが、ここに来てハリウッドの威信を背負った『ベンジャミン・バトン
数奇な人生』が俄然勢いを増してきた。ダークホースは『ミルク』と『愛を読むひと』。『フロスト×ニクソン』も力作だが受賞は難しいところ。
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Nominated
Persons/Titles |
ガス・ヴァン・サント(『ミルク』)
スティーヴン・ダルドリー(『愛を読むひと』)
ダニー・ボイル(『スラムドッグ$ミリオネア』)
デヴィッド・フィンチャー(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)
ロン・ハワード(『フロスト×ニクソン』) |
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デヴィッド・フィンチャー
(ベンジャミン・バトン 数奇な人生) |
ここも『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のデヴィッド・フィンチャーと、『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイルの対決となりそう。ダークホースは『ミルク』で気を吐くガス・ヴァン・サントだが、今回ベテラン勢は後塵を拝しそう。
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Nominated
Persons/Titles |
ショーン・ペン(『ミルク』)
ブラッド・ピット(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)
フランク・ランジェラ(『フロスト×ニクソン』)
ミッキー・ローク(『The Wrestler』)
リチャード・ジェンキンス(『The Visitor』) |
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ミッキー・ローク
(The Wrestler) |
『The Wrestler』のミッキー・ローク、『ミルク』のショーン・ペン、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のブラッド・ピットが壮絶な巴戦を繰り広げそう。下馬評では、スランプから不死鳥の如く蘇ったミッキー・ロークと、既に同部門受賞経験のあるショーン・ペンが一歩リードしている感あり。その中でも、落ち目のプロレスラーを演じたミッキー・ロークは、その役柄と実際の姿がダブって味わい深いものがあるともっぱらの評判だ。
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Nominated
Persons/Titles |
アン・ハサウェイ(『レイチェルの結婚』)
アンジェリーナ・ジョリー(『チェンジリング』)
ケイト・ウィンスレット(『愛を読むひと』)
メリッサ・レオ(『Frozen River』)
メリル・ストリープ(『ダウト あるカトリック学校で』) |
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メリル・ストリープ
(ダウト あるカトリック学校で) |
台風の目は『愛を読むひと』のケイト・ウィンスレット。『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』での主演女優賞、『愛を読むひと』で助演女優賞にWノミネートという見方が強かったが、『愛を読むひと』がまさかの大躍進。その分『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』が沈んでしまった恰好だが、それだけに2作品分の票が集まりそう。下馬評では『レイチェルの結婚』のアン・ハサウェイが本命と言われているが、作品が少し弱いか。対抗は『ダウト
あるカトリック学校で』で3度目のアカデミー賞を狙う大女優メリル・ストリープ。『マンマ・ミーア!』の票も集まりそうだ。実に15回目のアカデミー賞ノミネートは至上最高記録。さすがはハリウッドきっての演技派。貫禄ではダントツでトップに立っている。実質的にケイト・ウィンスレットとメリル・ストリープの対決となるだろう。
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Nominated
Persons/Titles |
ジョシュ・ブローリン(『ミルク』)
ヒース・レジャー(『ダークナイト』)
フィリップ・シーモア・ホフマン(『ダウト あるカトリック学校で』)
マイケル・シャノン(『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』)
ロバート・ダウニー・Jr(『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』) |
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ヒース・レジャー
(ダークナイト) |
ノミネーション発表日はヒース・レジャーの命日だった。複雑な思いである。ほぼ間違いなく受賞は鉄板といえるが、物議を醸している『ダークナイト』冷遇が響けば混沌としてくる。個人的には、『トロピック・サンダー
史上最低の作戦』のロバート・ダウニー・Jrを推したいところでもある。とは言え、ヒース・レジャーの優位は動かない。少々気の早い話だが、ヒース・レジャーが受賞となれば、故人のアカデミー賞演技部門受賞は、『ネットワーク』で主演男優賞を受賞したピーター・フィンチ以来32年振りの出来事となる(ノミネートは『イル・ポスティーノ』のマッシモ・トロイージ以来13年振り)
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Nominated
Persons/Titles |
ヴィオラ・デイヴィス(『ダウト あるカトリック学校で』)
エイミー・アダムス(『ダウト あるカトリック学校で』)
タラジ・P・ヘンソン(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)
ペネロペ・クルス(『それでも恋するバルセロナ』)
マリサ・トメイ(『The Wrestler』) |
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ペネロペ・クルス
(それでも恋するバルセロナ) |
前哨戦でこの部門にノミネートされていた『愛を読むひと』のケイト・ウィンスレットが、主演女優賞にノミネートされたことでペネロペ・クルスはニンマリの状況。ノミネート対象作品『それでも恋するバルセロナ』は、名匠ウディ・アレン監督の最新作だが、彼の作品はこれまでにアカデミー演技賞受賞者(特に助演部門が多い!)を多く輩出している。対抗は『ダウト
あるカトリック学校で』のヴィオラ・デイヴィスだが、同作品からもう一人、エイミー・アダムスがノミネートされているため、票割れの可能性が大きい。そこで『ベンジャミン・バトン
数奇な人生』のタラジ・P・ヘンソンが浮上してくる可能性もあり、また既に同部門受賞経験のあるマリサ・トメイの安定力も侮れないが、本命・ペネロペ・クルスの線は動かない。
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Nominated
Persons/Titles |
『おくりびと』(日本)
『バシールとワルツを』(イスラエル)
『The Baader Meinhof Complex』(ドイツ)
『The Class』(フランス)
『Revanche』(オーストリア) |
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バシールとワルツを
(イスラエル) |
当初本命と言われたイタリア代表作品『Gomorra』が第一次選考で落選するというハプニング。そこで浮上したのが、我らが『おくりびと』である。日本からの同部門ノミネートは『たそがれ清兵衛』以来5年振りの快挙となる。しかし、正直なところ受賞は難しい。本命はイスラエル産アニメーション作品『バシールとワルツを』だ。対抗は昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドール大賞を受賞した『The
Class』か。同部門で強さを見せるドイツ代表の『The Baader Meinhof Complex』も評判が高い。その中で、やはり強いのは『バシールとワルツを』だろう。イスラエル作品ということもあり、会員にユダヤ人が多いアカデミー協会では特に票を集めそうだ。
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Nominated
Persons/Titles |
『WALL・E/ウォーリー』
『カンフーパンダ』
『ボルト』 |
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WALL・E/ウォーリー |
噂された『バシールとワルツを』の長編アニメーション部門&外国語映画賞Wノミネートが実現せず。外国語映画賞部門のみのノミネートとなったため、この部門は『WALL・E/ウォーリー』で決まり。まず間違いない。鉄板である。
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Nominated
Persons/Titles |
『つみきのいえ』
『マジシャン・プレスト』
『Lavatory - Lovestory』
『Oktapodi』
『This Way Up』 |
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マジシャン・プレスト |
日本から加藤久仁監督の『つみきのいえ』がノミネート! 今回、長編部門でノミネートを勝ち取れなかったジャパニメーションだが、短編部門で気を吐き、その水準の高さを改めて世界に知らしめてみせた。とはいえ、受賞までの道は険しい。最有力は『WALL・E/ウォーリー』の併映作として日本でも現在公開中の『マジシャン・プレスト』か。
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授賞式は2月22日。それまであれこれと予想するのがこの時期の大いなる楽しみだ。
Other
Nominated Persons/Titles |
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★脚本賞
『ミルク』
『Frozen River』
『Happy-Go-Lucky』
『In Bruges』
『WALL・E/ウォーリー』
★脚色賞
『愛を読むひと』
『スラムドッグ$ミリオネア』
『ダウト あるカトリック学校で』
『フロスト×ニクソン』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
★撮影賞
アンソニー・ドッド・マントル(『スラムドッグ$ミリオネア』)
ウォリー・フィスター(『ダークナイト』)
クラウディオ・ミランダ(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)
トム・スターン(『チェンジリング』)
ロジャー・ディーキンス&クリス・メンデス(『愛を読むひと』)
★編集賞
『スラムドッグ$ミリオネア』
『ダークナイト』
『フロスト×ニクソン』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
『ミルク』
★美術賞
『ある公爵夫人の生涯』
『ダークナイト』
『チェンジリング』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』
★衣装デザイン賞
『ある公爵夫人の生涯』
『オーストラリア』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
『ミルク』
『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』
★メイクアップ賞
『ダークナイト』
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
★録音賞
『WALL・E/ウォーリー』
『ウォンテッド』
『スラムドッグ$ミリオネア』
『ダークナイト』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 |
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★音響編集賞
『アイアンマン』
『WALL・E/ウォーリー』
『ウォンテッド』
『スラムドッグ$ミリオネア』
『ダークナイト』
★視覚効果賞
『アイアンマン』
『ダークナイト』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
★作曲賞
『WALL・E/ウォーリー』
『スラムドッグ$ミリオネア』
『ディファイアンス』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
『ミルク』
★歌曲賞
"Down to Earth"(『WALL・E/ウォーリー』)
"Jai Ho"(『スラムドッグ$ミリオネア』)
"O Saya"(『スラムドッグ$ミリオネア』)
★長編ドキュメンタリー映画賞
『世界の果ての出会い』
『The Betrayal (Nerakhoon)』
『The Garden』
『Man on Wire』
『Trouble the Water』
★短編ドキュメンタリー賞
『The Conscience of Nhem En』
『The Final Inch』
『Smile Pinki』
『The Witness - From the Balcony of Room 306』
★実写短編賞
『Auf der Strecke (On the Line)』
『Manon on the Asphalt』
『New Boy』
『The Pig』
『Spielzeugland (Toyland)』
★ジーン・ハーショルト友愛賞
ジェリー・ルイス
★ゴードン・E・ソーヤー賞(アカデミー科学技術賞)
エド・キャットムル |
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2009年1月26日号掲載
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