銀幕ナビゲーション-喜多匡希

岡太地監督特集
@神戸アートビレッジセンタ

岡太地監督特集@神戸アートビレッジセンター京都&大阪芸術大学発の才能・
岡太地監督、関西凱旋!岡太地監督特集@神戸アートビレッジセンター あとで読む

岡太地監督特集@神戸アートビレッジセンター
屋根の上の赤い女

 昨年9月。東京の池袋シネマ・ロサで岡太地監督特集がレイトショー上映された。現代日本映画界で大きな潮流を生み出している大阪芸術大学映画学科卒業組の1人だ。バリバリの関西人であるにも関わらず、その企画は関西上陸を果たさぬまま年を越し、今年も既に半年が過ぎてしまった。関西出身監督の作品が関西で見られない!? おかしくないか!? 首を長くして関西上映を待ち望んではいたものの、一向に上映される気配がないため、「嗚呼、岡監督は故郷を捨ててしまったのかぁノノチェッノノ」なんて思っていた(笑)。

岡太地監督特集@神戸アートビレッジセンター
屋根の上の赤い女
岡太地監督特集@神戸アートビレッジセンター

 ところが先日、「関西上映が決まりましたぁ!」という連絡が岡監督本人から寄せられたのである。しかも、東京と全く同じプログラムでの特集上映だというから嬉しい。おまけに、初日は岡監督も舞台挨拶のため会場入りするという。「関西での上映? そりゃ、やりたかったですよ。今回、神戸。これを成功させて、大阪・京都でも是非!」とのこと。岡監督は関西を忘れていなかった!! 一瞬でも疑ったお詫びと、心からのお祝いとして、この新進気鋭かつ目下大注目されている映画作家・岡太地の特集上映企画を御紹介する次第。

岡太地監督特集
放流人間

 今回の特集上映でメイン作品となるのは、岡太地の最新作にして、初の35mm作品『屋根の上の赤い女』だ。 <赤い女> とは、これまた映画的な装置である。しかし、これは「ふと、青い屋根と赤い服を着た女性というイメージが浮かんだ。それだけなんです、実は(笑)」とのこと。本作は、その言葉に漂う軽やかさと微笑ましさを、そのまま映画化したような愛すべき30分の短編映画だ。このこじんまりとしたかわいらしさがたまらなく愛おしい。文房具卸会社のアルバイト青年と事務員の女性が織り成すラブ・ストーリーの快作である。主演に、『松ヶ根乱射事件』『チーム・バチスタの栄光』、そして大傑作『ぐるりのこと。』などの助演でキラリ光っていた山中崇と、『パーク・アンド・ラブホテル』で話題をさらった神農幸という注目の若手俳優を起用。その配役センスも素晴らしい。

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トロイの欲情
岡太地監督特集@神戸アートビレッジセンター

 また、セット上映となる旧作2本も見逃せない。先述の『屋根の上の赤い女』も含め、岡太地の作品は全て <ボーイ・ミーツ・ガール> の形式を有している。そのため、『汚れた血』『ポンヌフの恋人』などで知られるフランスの映画作家レオス・カラックスを連想したりもするのだが、それでいて、彼の作品には、ならではのオリジナリティが迸っているから見逃せない。また、常に恋愛を描いているといっても、岡太地が描く恋愛は決してスイートなものではない。精子バンクを軸に男女の姿を描いた『放流人間』は特にそれが顕著と言える。時に凶器のような感情の発露を見せ、その純粋さゆえの感情の走りっぷりが驚くほどスリリングであったりするのだ。その結果、岡太地の刻印と言える各作品のキス・シーンで、その作家性が爆発するのである。

岡太地監督特集
トロイの欲情

 2005年のPFFで4冠を達成した『トロイの欲情』は、大阪芸術大学の卒業制作作品だが、本作を初めて目にした時の驚きは筆舌に尽くし難い。「アップが好きなんです」と語る岡太地だが、幾ら好きだからといって、ほぼ接写と俯瞰だけで決して短くない尺数の劇映画が成立するとは思えなかった。しかし、これを実現してしまったのである。それも大傑作として!! PFFでの絶賛も当然である。この処女作で、岡太地は疾走を始め、現在に至っている。その疾走は、岡流のペースと方向性を維持しているのだが、それ自体が千変万化のため、毎回舌を巻いてしまうのだ。

 この稀有な才能を、是非、多くの方々に体感していただきたい。

岡太地監督特集@神戸アートビレッジセンター http://kavc.or.jp

<上映作品詳細:3作品共、監督は岡太地、配給はヨモスガラブフィルムス>
A:『屋根の上の赤い女』(2007年/日本/35mm/カラー/30分)
  出演:山中崇、神農幸、高城ツヨシ、梶本潔、板倉善之、ほか
B:『放流人間』(2006年/日本/DV/カラー/60分)
  出演:川口渉、三嶋幸恵、青野まいあ、高城ツヨシ、ほか
C:『トロイの欲情』(2004/日本/16mm/カラー/84分)※デジタル上映
  出演:中村真利亜、松井宏樹、高城ツヨシ、ほか
※第27回ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2005 準グランプリ&技術賞&音楽賞&北九州賞(観客賞)受賞

【上映スケジュール】
7/12(土)?14(月)17:10→A:『屋根の上の赤い女』+B:『放流人間』
7/16(水)?18(金)17:10→A:『屋根の上の赤い女』+C:『トロイの欲情』
※7/12(土)初日は岡太地監督が来場。舞台挨拶あり!

【上映会場】
神戸アートビレッジセンター KAVCシアター 60席
神戸市兵庫区新開地5-3-14 電話078-512-5500
HP→http://kavc.or.jp

【料金】
前売なし 当日一般1400円・学生1,200円、シニア1,000円
木曜サービスデイ一律1000円

【公式HP】
『屋根の上の赤い女』
http://yomosuga-love.com/yane.html
http://www.yomosuga-love.com/troyTOP.html


2008年7月7日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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