銀幕ナビゲーション-喜多匡希

インクレディブル・ハルク

【スタッフ・キャスト一新が効を奏した
アクション巨編!】 あとで読む

インクレディブル・ハルク
© 2008 MVLFFLLC. TM & c 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

 前作『ハルク』(2003)は、初登場全米1位のオープニング成績を記録したが、2週目以降、急速に失速し、批評家や観客の多くからも失敗作の烙印を押された。『スパイダーマン』『アイアンマン』『X−MEN』『ファンタスティック・フォー』『キャプテン・アメリカ』など、多くのヒット作を擁するマーベル・コミックの中でも、1962年の初登場以来、根強い人気を誇る『インクレディブル・ハルク』(『超人ハルク』)の映画化ということで、瞬発的な集客力はさすがのものがあったが、作品の出来栄えは歓迎されるものではなかったということだろう。その反省から、今回公開される第2弾ではスタッフ・キャストを一新して仕切り直しを図っている。結果、本作は全米で前作を上回る興行成績を記録。原作ファン・映画ファンの信用を回復し、更なる続編の製作にもほぼGOサインが出そうというのだから見事な復活振りだ。実際に鑑賞してみたところ、確かに本作は面白い。スタッフ・キャストの一新はかなり大胆なもので、発表時はかなり驚いたものだが、この対策が見事に活きた。本作成功の鍵は、この人選にこそある。

インクレディブル・ハルク
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インクレディブル・ハルク

 主演を務めるのがエドワード・ノートンというのが、そもそも思い切っている。前作では、いかにもヒーロー然とした若手のエリック・バナが演じていた役である。どちらかと言えばヒョロリとした印象のノートンにはおよそ似つかわしくない。ここで不安を抱いたものだが、そこはアカデミー賞2度ノミネートという輝かしい経歴を持つ演技派の面目躍如。冒頭こそ多少の違和感を禁じえなかったが、やがて気にならなくなるのだから凄い。自身の意思とは関係なく、緑色の肌を持つ怪力のハルクに変身してしまう青年科学者ブルース・バナーというキャラクターは、元々『フランケンシュタイン』と『ジキル博士とハイド氏』を下敷きにして生みだされたものだという。つまり、ハルクは決してスーパー・ヒーローではなく、制御できない能力に苦悩する悲哀のモンスター・ヒーローなのだ。その悩みや苦しみを、当代随一の演技派が見事に演じ切ってみせた。

インクレディブル・ハルク
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 ハルクとの対決に執着し、やがて同様のモンスター:アボミネーションと成り果てるイギリス軍人ブロンスキーにティム・ロス、ブルースを追うロス将軍(ブルースの恋人ベティの父親でもある)にウイリアム・ハートというキャスティングも重厚な印象で、やはり演技派揃い。そして両者ともに的確な演技でドラマに深みを与えてこれまたお見事。

インクレディブル・ハルク
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インクレディブル・ハルク

 監督はリュック・ベッソン・プロデュースの『トランスポーター』シリーズで知られるフランス出身のルイ・レテリエ。キャリアは浅いが、アクション演出が職人的に上手い注目の俊英だ。本作でもその上手さは健在で、サスペンスを積み重ねて観客の興味を引っ張っておき、ここぞという時に惜しみなく大アクションを繰り広げてみせる。斬新なアイデアとサービス精神に満ちた大迫力のアクションがスクリーンで炸裂する快感に酔いしれた。

 ツボを心得た監督とスタッフがアクション描写を、演技派俳優共演でドラマ作りをという役割分担が効を奏した1作。

 多彩なカメオ出演にもニンマリ。特にラストに用意された1シーンはお見逃し無く!!

 

インクレディブル・ハルク  http://www.sonypictures.jp/movies/theincrediblehulk/

原題『THE INCREDIBLE HULK』
2008年 アメリカ 112分 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督: ルイ・レテリエ
出演: エドワード・ノートン、リヴ・タイラー、ティム・ロス、ティム・ブレイク・ネルソン、タイ・バーレル、ルー・フェリグノ、ヒクソン・グレイシー、スタン・リー、ウイリアム・ハート、ほか

【上映スケジュール】
8/1(金)〜(毎月1日は映画の日。当日鑑賞料金1,000円!!)
東京:有楽町スバル座、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、お台場シネマメディアージュ、渋東シネタワーほか
大阪:TOHOシネマズ梅田、敷島シネポップ、TOHOシネマズ鳳、ユナイテッドシネマ岸和田ほか
京都:TOHOシネマズ二条
兵庫:三宮シネフェニックス
そのほか、全国一斉ロードショー
※字幕版・日本語吹替版あり。詳細は公式HPで御確認下さい

2008年7月28日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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